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冷凍食品の概念を覆す「“レンチン”冷やし中華」の可能性、開発者に聞く“未来の食品”への責務
冷凍食品に100年の歴史、“手作り至上主義”に阻まれマイナスイメージも
だが普及の一方で、その手軽さ、便利さゆえに、冷凍食品=手抜きのイメージが付きまとった。旬の食材を自ら調理して食す“手作り至上主義”が強かった日本では、「冷凍食品は愛情が足りない」「手作りに比べて味が落ちる」「冷凍食品ばかりのお弁当は手抜き」「弁当ならまだしも夕食にはやめてほしい」など、どうしても“手作りより下”と見なされてきた。しかし、先述した社会構造の変化に加え、味や品質の向上により、冷凍食品は忙しい家族を救う役割を果たす存在として、家庭になくてはならないものとなった。
「『本格炒め炒飯』を代表とする、ある意味“手作りを超えた”味の商品が生まれてきたことも大きい」と、蟹沢氏は明かす。同商品は「売上世界No.1」としてギネス世界記録に認定され、発売から20年が経つ現在も広く愛され続けている。このような冷凍食品のイメージを覆す商品が生まれたことは非常にセンセーショナルに受け止められたが、それを一発屋で終わらせず、業界を上げて切磋琢磨してきた。若年層にはそもそも冷凍食品へのマイナスイメージはないし、年配層からも「最近の冷食は美味しい」の声が多く寄せられるそうだ。
「『冷食“だから”美味しい』と言ってもらえる未来を目指したい」
「今の食卓は多様性、嗜好性のフェーズに入ったと考えています。例えば、以前はファミリーレストランで家族全員が違う料理を楽しむのがステータスだったように、今では家庭でもそれぞれ違うものを食べるケースが増えた。冷凍食品はこれを補完できるし、一人だけ別に食事を取らなければいけない場合も、役割を果たせる。逆に、外食は専門店が増え、そこでしか食べられないものを皆で食べることが増えたように感じます。家庭と外食で逆転現象が起こっており、冷凍食品がこの変化の波にも乗れたことも大きいと思います」(城戸氏)
現在の生活スタイルに適した冷凍食品だが、これからどこまで進化するのか。そう問うと、両名とも口を揃えて「『冷凍食品“だけど”美味しい』ではなく、『冷凍食品“だから”美味しい』と言ってもらえる未来を目指したい」と答える。冷凍食品にしか出せない美味さ、特別感、その価値が根付いた先に、冷凍食品の未来、その先がある。
現在は調理器具も多様化しており、その機能を活用する施策も試みている。また、冷凍ゆえに保存料が必要ないという利点を生かし、昨今の健康ブームにも乗っていけるだろう。「食生活がより豊かになるよう、美味しさと便利さで支え続けることが我々ニチレイフーズの、そして冷凍食品の役目」と城戸氏。いつかこのメイド・イン・ジャパンの技術が、世界の“食”を下支えすることになるはずだ。
(文:衣輪晋一)
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