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飲食店、ドラッグストア、給食会社…コロナ特需で弁当業界に伸張、弁当・惣菜専門店はどう生き残る?

 「おいしさって、年齢、地域によって違うんだよ、一概においしさって言えねえんだよ。だから生まれてから死するまで、その商品を何回食べてくれるか、その回数、これがおいしさなんだよ」――『オリジン弁当・キッチンオリジン(以下、オリジン弁当)』の創業者である故・安沢会長の言葉だ。コロナ禍、飲食店が店頭で弁当を販売、出前宅配業の台頭と、飲食業界は大きな変化を余儀なくされた。『オリジン弁当』も、競合他社、コンビニ弁当以外に、飲食店の店頭弁当、ドラッグストアの弁当販売とライバルが急増。ビュッフェ式がパック販売になるなどの変転もあった。この苛烈な状況で弁当・総菜専門店はどんな生き残り戦略を立てているのか。また同社が考える「おいしさ」とは?

弁当業界のコロナ禍での実態「実は売上は伸びたんです」

 『オリジン弁当』が誕生したのは1994年。地域に根ざした「家庭の台所代行業」として、顧客の健康に寄与したいという想いでスタートした。現在の店舗数はオリジン弁当・キッチンオリジン・オリジンデリカを合わせて458。急成長を遂げ、今や弁当・総菜業界の“定番”となっている。だがここに来て、ローソンの「ソーセージ弁当」などのコンビニのPB弁当商品のヒットや、飲食店のテイクアウト展開、ドラッグストアでのお弁当販売など、弁当・総菜業界の競争は苛烈してきている。
 完全にレッドオーシャン化している同業界だが、コロナ禍に『オリジン弁当』は売上が伸びたという。「緊急事態宣言が発令されるなどし、外食が時短営業や休業を余儀なくされる中、自炊をされるようになった方も多かったと思います。一方で、たまにはお弁当で手軽に済ましたいという需要もあったのだと考えてます。」(同社担当者/以下同)

 とくに伸びたのは駐車場がある店舗。「人と接したくないコロナ禍において、車での移動で安心して外出して買われる方が多かった印象です。当時、マクドナルドさんのテイクアウトが人気との報道がありましたが、あの時、弊社も外食したいけどできないので、テイクアウトを楽しみたいというお客様にご利用いただきました。同じように拡大し始めた宅配サービスも、宅配料が別途かかるにも関わらずニーズがありました。これも最小限の人との接触で済みますし、Uber Eatsさんなどが好評なのも同じ理由だと思われます」

 逆に低迷したのはオフィス街だ。「リモートワークが増え、オフィス街は以前より人が少なくなりました。逆に住宅街のほうは多少ニーズが上がった印象です。」と同担当者。これに関してはコンビニの売上状態とほぼ同じであるようで、「都心のオフィスにある店は今もコロナ前の売上には戻っていない状況です。」と残念な胸の内を明かす。

余儀なくされた苦肉の策 盲点だった問題点の試作に半年をかけ現在もトライアンドエラー

感染対策のために、総菜のビュッフェ式販売を取り止め、パック詰め商品の販売に切り替えた

感染対策のために、総菜のビュッフェ式販売を取り止め、パック詰め商品の販売に切り替えた

 同社において、コロナ禍で最も変わったことと言えば、感染対策のために、総菜のビュッフェ式販売を取り止め、パック詰め商品の販売に切り替えたことだ。「当初はこの分野での売上が落ちてしまいました。おそらく理由はこれまでと同様の、フードパックで販売していたからだと思います。従来のフードパックはお客さまの必要とする量に合わせて選択できるという利点がある一方、密閉度の低い点がありました。コンビニのお総菜などと比べて見栄えも良くないですし、汁漏れするようなお総菜もあったからだと思います。この容器の選定には半年を費やしました。手に取りたくなるような見た目、しっかり閉じられる容器に変更しました。」

 ビュッフェ式の販売からパック詰め商品の販売にしたことで、どれぐらいの総菜の量が入っていると客が買いたいと思うか、さまざまな試作が行われた。
「しかしながら、弊社の特徴の一つは、お総菜を少量から買えることです。組み合わせも自由で、これが好評でした。パック販売にしたところ、自由度がなくなったことを嘆くお客様もいらっしゃいます。ですがこれはコロナ禍において、お客様の安全と安心を優先させていただいた対応として、ご理解いただくようお願いしているところです。」

 想像してみて欲しい。『オリジン弁当』はバックヤードに厨房があり、そこで調理している商品が多い。出来たてを食べてもらいたいという想いがある。オーダー弁当は注文を受けて一つ一つ作る、量り売りの総菜も別に作っていく。ここで厨房では「パック詰め」の作業が加わった。

 パック詰めになったことで、出来たての総菜を急いでパック詰めするとフタに水滴がついてしまうデメリットも。これに同担当者は、「水蒸気が出ないよう冷ます時間が必要になりました。作業時間が増えたため、今後は時間の効率化が課題です。」

 現在パック詰め総菜も好調。衛生面のほか、トングを使わないため、手に荷物を持ったままお総菜を手に取ることができるのでより手軽に。伴ってそれが買い物の“時短”にもなっており、メリットは大きい。

『オリジン弁当』がコンビニのすぐ側にある理由は?

 また各街にある『オリジン弁当』を見ると、ある特徴に気づく。コンビニ、飲食チェーン店など競合他社のすぐ側に店舗があることだ。「これは、うちは店舗販売ですので、人通りが多い場所に店舗を構えています。そうなると駅前などが多くなり、結果的にそうなります」とのこと。ライバルが近くにいても共存している理由を担当者はこう解説する。

 「弊社は、台所代行業。味が濃すぎるとツマミにはいいですが、毎日食べるには飽きが来てしまいます。余計な添加物は使わない。毎日食べられるご家庭の味を目指しています。これで差別化を図っており、好評のおにぎりにしても厨房でお米を炊くのは当然、秘伝のノウハウでふんわりと一つ一つ握っています。ただ、弊社はあくまでも弁当店。お客様には、お酒はコンビニで、お寿司はチェーン店で、という自由な使い方をして頂きたいと考えています。オーダー弁当は注文を受けてから調理して、出来たてをお出しするので多少お待たせしてしまっています。店内でお待ちになるお客様もいれば、その間に、弊社にないものを他で買われる方もいらっしゃるのです。もちろん、お待たせしない出来たての作り置き弁当も店内に取り揃えていますので、お急ぎの方はこちらも活用していただきたいです。」

 テレビ東京とのデカ盛り弁当共同開発や1790Kcalというパンチのきいたカロリーの肉トリプル丼などの話題作りも欠かさない。「テレビやSNSで話題になるような商品づくりやイベントも行っています」

 「これからも時代とお客様のニーズに合わせた商品と店づくりを続けます」と同担当者。レッドオーシャン化が進む中で競合と張り合うのではなく、共存し、そこからヒントや最適解を探っていくのが同社の流儀なのだ。

(文/衣輪晋一)
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