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堀江貴文が提示する“地方創生”としてのコンビニ 「個人経営店の“失われつつある技術”担うのがコンビニの新たな役割」
文字情報主体のパッケージはトゥーマッチ 引き算的なデザインで勝負(堀江)
足立光 堀江さんがYouTubeで「ポテトチップスとか作ってみたいね」と話していたのを僕の友人が見て連絡をくれたんです。堀江さんとはカラオケ店などでご一緒していた仲だったので、それでお話を持っていったのが始まりです。
堀江貴文 僕も相方の浜田もポテトチップスが子どもの頃から大好きで。前からお菓子系をやってみたいと話はしていたんです。お土産売り場にある地域名物のものとか。ですが、なかなかうまくいかず。足立さんにお話をいただいて、よしやろうと。
堀江貴文 ラーメン店ではお決まりの“ニンニクマシマシ”的な文脈です。和牛エキスを使うことは決まっていたんですが、それだとインパクトが弱い。そこで『ハッピーターン』のハッピーパウダーのように和牛+ニンニクマシマシの粉をたくさん入れようと。袋を開けた瞬間、ニンニクが香ってきますよ、想像以上に(笑)。「WAGYUMAFIA」のオリジナル商品でハイボールを出しているのですが、1本税込み1,100円で、うちで一番出ている商品なんです。そのハイボールに1番合うポテチというコンセプトでもあります。
足立光 パッケージも堀江さんが販売されているハイボールとシナジーがあります。
堀江貴文 うちのハイボールも白をベースに黒の文字でシンプルに「HIGHBALL」、それだけ。ラグジュアリーなホテルにも置いてもらえるような商品として、引き算的なデザインでやれたらいいよね、と。例えばポカリスエットとかコカコーラって超一流のデザイナーが何十年も違和感がないデザインを作ってらっしゃるじゃないですか。ですが日本のお菓子のパッケージって情報量トゥーマッチで、シンプルなものが少なくて。
――日本の映画やドラマのポスターなんかもそうですね。
足立光 カップラーメンもそうなんですけど、コンビニのお客様は多くの方が店頭で購入するブランドを選ぶんですよ。店頭ではポップ等の商品広告はほとんどやらない。そうなると少しでも商品情報や特徴が伝わるようにパッケージで…と、パッケージに情報を全部入れちゃうというわけです。売る努力ですね。しかし今回は堀江さんのハイボールと同じようにシンプルに『ULTRA GARLIC』だけ。これは広告のあり方が変わってきたからこそ出来ることかもしれません。
メールからスマホ、SNSに行動様式が変化 「時代の変わり目こそ定番が入れ替わるチャンス」(堀江)
足立光 例えば、世の中に堀江さんの情報はいっぱいありますが、広告は見たことないじゃないですか? それはネット上にあるからなんですね。ソーシャルで認知が取れている。当社もようやく始めたところで、これからより注視して取り組むべき部分だと考えています。
堀江貴文 今、スマホで皆、SNSをやってるじゃないですか。僕はパン店もやっているんですけど、それもSNSからお客さんが来るんです。Twitterでフォローしてもらうとか、若年層はTikTokだとか。そこで何か言うとある程度反映される。簡単だし広告費もかからない。
――経営視点だけではないソーシャル・マーケティング/アクションだからこそ話題にもなりますし、拡散もされる。今回TVCMは打たないのですか?
足立光 今回は予定していません。ただ堀江さんと我々のソーシャルおよびPRは駆使できればと考えています。
堀江貴文 別のプロジェクトで、ポッキー・プリッツの日(11月11日)のキャンペーンをお手伝いしたとき、「ポッキーロケット」を打ち上げました。11月11日11時11分11秒に高度1111mにロケットを打ち上げる企画で、無事に成功。すごくお金かかりましたけど(笑)。『ULTRA GARLIC』でもそういうことがやりたいんです。どこまでコンビニの商品を全国的に売れるのか。オンラインサロンとソーシャルネットワークを駆使してお祭りをやろうと。
足立光 そういったことが日本の会社ではまだ発展途上なんです。
堀江貴文 時代の変わり目は、そうした定番商品が入れ替わるチャンスなんです。僕はプロ野球独立リーグの球団を起ち上げましたが、2000年代初頭に何が変わったかというとメールの登場。これで待ち合わせなどの段取りがなくなり、気軽に「今夜、暇?」という風になった。行動様式が変わったんです。で、地方は東京のようなエンタメ・レジャーは少ないので、人が集まる野球に目をつけた。その文脈で今はメールからスマホ、SNSに変わったからチャンスなんです。ソーシャルをあまり大手の企業さんはやられていないと言ってたのは、それをやらなくても今まで売れてきたから。ですが、これからは違う。
「広告宣伝費をかけるよりも、ソーシャルで認知を取るマーケティングが主流に」(足立)
堀江貴文 商品を自社のチャネルを通して消費者に直接販売するD2Cブランドはこの流れにある。インフルエンサーが作ったブランドが何十億という売上を出す時代になった。極論をいうと、フォロワーを多く抱えている人の方が従来企業より広告宣伝費がいらない分、有利。迅速に動けてコンセプトをちゃんと決められて、デザインがちゃんとできてコミュニケーションができる小集団のほうが身軽で強くなっている。
足立光 本当は大企業がその能力を作っていかなければいけないんですけど、日本の会社はそこまでたどり着けてないですね。ソーシャルは会社のアカウントで個性が出ていないとまったく面白くない。だが個性を出すのがいいかと問われると、大きな会社ほど、規定とかいろいろなものが出てくる。100%承認されたものしか出てこない。
堀江貴文 いまだ「情報解禁日」という概念がありますもんね。ソーシャル時代だとそれは古くて、まずはプロセス。「ハイボールに合うつまみってなんだろね」みたいな議論から、クエストのように「ファミマの足立さんにお会いしてみた」、次に「コラボ商品作れるかも」と動画にして拡散していく。そのプロセスを見せるプロセスエコノミーは、消費者にどんどん期待をもたせるんです。そこでファンを集めてクラウドファウンディングなどをやる。
様々な役割を包括するコンビニの未来 足立「失われる技術を地方で出せる場所になる」
堀江貴文 地方は高齢化が進んでいますので、例えばパン店、町中華、お蕎麦などなど職人さんも高齢化して跡継ぎがいない状態。そこで、コンビニに目を向けますと、コンビニはお惣菜を作って売れる許可を保健所からすでに得ている。パンも中華もお蕎麦も、作り立てが食べたい時ってありますよね。これからはコンビニが地方にある個人経営店舗の役割を担うかたちになるのではないかと僕は思います。
足立光 実際に、沖縄のファミリーマートは焼き立てのパンを販売している店舗もあり、“地元のパン屋”の役割をすでに担っていますからね。
堀江貴文 これけっこう大事な話で。少子高齢少子化が半端なく進んでいる地方で、パン屋さんはどんどんなくなっているんですよ。技術を持っているパン職人が田舎には行かない。今担っているのは団塊世代。重労働だし、子どもも継がない。そうなったらコンビニの袋パンがパンを食べられる唯一の手段になるかもしれない。“焼き立て”が食べたいというニーズは、今後さらに高まってくるのでは。
足立光 全国にネットワークがあるのはコンビニと郵便局ですが郵便局には調理設備がない。コンビニは、地方で失われつつあるビジネスを担える場所になると思いますし、またお惣菜の工場も全国にある。これにより雇用で地域経済に貢献できると思いますし、その取り組みは今も進めています。
堀江貴文 コンビニとかドラッグストアとかアパレルとか、その垣根もなくなっていくと思います。敷地は狭いですが、展示する代わりにアマゾンのようなカード形式にすれば、商品をバックヤードから持ってくればいい。あと電子マネー決済も進んでいくでしょうね。
――ありがとうございます。最後に今後の展望をお聞かせください。
堀江貴文 この先もコラボ商品が出せたらいいですね。そのためにもまず『ULTRA GARLIC』を自信を持ってお送りします。
足立光 かなりとがった商品。かなり特徴ある味、パッケージになっていると思っていますので注目してください。
(取材・文/衣輪晋一)