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17億食突破のファミチキ、15年間レシピを “変えなかった”判断が成功のカギ「 “じゃない方”商品の開発を急ぎたい」

 大手コンビニチェーン「ファミリーマート」の人気商品『ファミチキ』が今年9月8日、ついに累計17億食を達成した。今年で発売開始15周年を迎える『ファミチキ』といえば、いわずと知れたコンビニチキンのパイオニア。独特のスパイシーな味わいと、あたたかい揚げ物がワンハンドで食べられるという手軽さが人気に。主に男性が好む印象があるが、昨今は女性客が購入するケースも増加。またコロナ禍で、おかずとして、おつまみとして、購買する人も増えている。競合他社のコンビニチキンが台頭している現状を同社はどう考えているのか。『ファミチキ』のライバルは? 

ファミチキ開発秘話 秘伝スパイスは社内でも「門外不出」

 『ファミチキ』が誕生したのは2006年の10月。今年で発売15周年を迎える。それ以前のホットスナックは骨付きドラムのチキンや、こぶりなスパイシーチキン、アメリカンドッグ、コロッケなど数種類。基本的にチキンは骨付きが主流である中、同社が打ち出したのが“骨なし”の『ファミチキ』だった。

「骨付きだと、コンビニで買って食べるには食べづらいし手も汚れる。また“骨”というゴミも出てしまう。コンビニにいらっしゃるお客様は、もっと手軽に食べられるものを望んでいるはず。そう考え、鶏ももの1枚肉で骨なしのチキンである『ファミチキ』開発がスタートしました」(同社ファストフーズ部・河口美砂さん/以下同)

 スパイスの配合、やみつき感など研究を重ね、開発には半年以上を費やした。そして2006年10月に新商品として店頭に。これが飛ぶように売れた。じわじわと人気が出ていった…わけではない。“いきなり最初から”だった。結果、1年平均で約1億食売れる人気商品となり、売上もほぼ右肩上がり。開発部も「間違ってなかった」と歓喜したと言う。

「現在、販売数でいうと、弊社コンビニのすべての商品の中で『ファミチキ』が売上No.1。レシピは15年間、一度も変えていません。ファンが多くいらっしゃる商品ですので、お客様に愛されていることを考えると、味の改良は望まれていないだろうというのが理由です」

 確かにSNSなどでは、人気商品がリニューアルするたびに「改悪」「前の方が好きだった」というネガティブな感想が踊ることがよくある。売上が伸びているということは、変えないという判断は正解なのだろう。ちなみに『ファミチキ』の秘伝のスパイスは門外不出。現在、「カルビー」とのコラボ商品『ポテトチップス ファミチキ味』が販売されているが、その開発を行った社内の加工食品・加工部にもスパイス配合についてはほぼ教えられなかったというのだから、相当に徹底されている。

レシピではなく油を改良 “コンビニの揚げ物油”のイメージを払拭

  • 「ファミチキ揚げ油」と「冷凍ファミチキ」をセットにした 「おうちでファミチキセット」

    「ファミチキ揚げ油」と「冷凍ファミチキ」をセットにした 「おうちでファミチキセット」

 『ファミチキ』のヒットを受け、同業他社のコンビニもそれぞれ、骨なし1枚肉のチキンを販売。またたく間にコンビニチキン界は戦国時代へと突入。だがファミリーマートはこれを肯定的にとらえている。「『ファミチキ』がパイオニアだという自負はありますが、他社さんも同じようなチキンを販売することで、コンビニチキンの認知がさらに上がり、相乗効果でより売れていくであろうと考えています」

 これはチキンだけではなく、コンビニのホットスナック自体の進化も促した。同社でいえば、『ファミチキ』の専属キャラ「ファミチキ先輩」がデビューした2017年頃から、ホットスナックの種類が増え、また焼き鳥やハムカツなど「常温惣菜」も販売するようになった。

 しかし、である。「コンビニの揚げ物って、いったいどんな油を使っているんだろう」という世間の声に対し、前出の河口さんは「実は…」と切り出す。

「『ファミチキ』のレシピは変えていませんが、揚げる油は何度も改良を重ねているんです。『ファミチキ』の肉の旨味とコクを引き出すのはもちろん、植物由来のキャノーラ油とコーン油をベースにしています。コレステロールもゼロで、抗酸化作用が期待されているビタミンEも配合し油から健康面でも気を遣っています。また、油の劣化スピードを抑え専用保温ケースの性能を生かし時間が経っても美味しさが損なわれにくいように改良しています。」

 長い時間美味しさが損なわれないということは食品ロスにも役立つ。揚げ物であるからカロリーも気になるところだが、カロリーは約250キロカロリーであり、これは、おにぎりより少し高い程度の数字だ。

 同社は余程、この油に自信があるのだろう。おうちで揚げて楽しめる「ファミチキ揚げ油」と「冷凍ファミチキ」のセットを28日から楽天市場で数量限定販売。「キャンペーンですので赤字覚悟の値段。コンビニのイメージを払拭しようと試みている。

『ファミチキ』を打ち負かす問題児も登場! 「チキンに対抗できるのはチキン」

  • クリスピーチキン

    クリスピーチキン

  • クリスピーチキン プレーン

    クリスピーチキン プレーン

 キャンペーンに使われるほど人気の『ファミチキ』。『ファミチキ』目当てで来店する人が多いことから他商品の売上にも貢献しており、さらには別会社とコラボする場合も『ファミチキ』だからこそ快諾してもらえるケースも多い。だが、どの業界でもそうだが、“一強”というのはもろい。リスクヘッジのためにも二本柱、三本柱が欲しい。

 同社もこれには苦心した。ホットスナックにおいて『ファミチキ』と並ぶ、または超える商品を作ろうと長年開発してきた。いわば『ファミチキ』はラスボス。このメンタルは、ほかジャンル、ほか商品でも同様で、それぞれのトップの売上を誇る商品と並び立つ商品の研究を続けてきた。

 そしてついに『ファミチキ』のライバルとして並び立つ商品が今年3月に限定販売された『クリスピーチキン』。同商品は販売早々、品切れになってしまう騒ぎに。これまで「ファミリーマート」全体の売上数1位だった『ファミチキ』を、初週のみとはいえ超えてしまったのだ。「これを『ファミチキ』に継ぐ看板商品としていきたい。数量限定ではなく、本格的に発売しようと考えています」

 余談だが、『ファミチキ』は同社40周年キャンペーンで、40%増量を行っていた。これに疑問を持ち、「本当に40%増えているのか」と実際に重さを計ってみたユーザーがいた。結果は、その個体については40%どころか60%の増量。これがSNSで大きくバズり、「さすがファミマ」と絶賛の声が。この顛末をぶつけたところ「40%増量と謳っているからにはそれ以下のものは絶対に店頭に出せない。その心意気で行ったキャンペーンですので、40%を超えるものも出てきてしまう」とのこと。

 「SNSでバズるような反響も込み込みで開発、宣伝を行っている。そうした“なにか面白いことをするのはファミマだよね”というのが弊社の社風にもあり、その社風に惹かれて入社する社員もいます。今後も味はもちろん、“面白いこと”もどんどん発信できれば」

 「ファミリーマート」の一丁目一番地である『ファミチキ』。油の改良、ライバルの登場、“面白さ”の社風を受けて、コンビニチキンの王者は今後どんな別の一面を見せてくれるのか。まずは『クリスピーチキン』とのタイトルマッチの結果を楽しみにしたい。

(取材・文/衣輪晋一)

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