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「29歳 独身 手足なし」電車事故で左手1本に…障害者YouTuberが絶望超えて見えたもの「五体満足だと、逆にないものが目に付く」

深まる障害者と健常者の分断、「どうしても『上から目線の押し付け』に聞こえがち」

 少し前に「電車に乗るのを拒否された」と訴えた車いすユーザーが、SNSで大きな批判を浴びたことがあった。パラリンピックが注目を集める一方で、健常者と障害者の分断は根深くなっていると思わされた出来事だ。「発信する障害者」の1人である山田さんは、どう感じているのだろうか。

 「先ほども言いましたが、大前提として、障害者にも健常者にも『できること』と『できないこと』があります。だけど、障害者のほうが『できないこと』が多いと世間では思われているし、もしかしたら障害者側にもその意識は強いかもしれない。だから、障害者の発言ってどうしても『上から目線の押し付け』に聞こえがちなんですよね。でも、それだと耳を傾けるのもウンザリされてしまうと思うんです」

 もちろん、言わなければ伝わらないこともある。山田さん自身も、スーツで義肢が隠れた状態で通勤電車の優先席に座っていたところ、「いい若者が!」と面と向かって文句を言われたこともあったという。

 「義肢が見えなかったんだからしょうがないですよね。『こうなんですよ』とお見せしたら、全力で謝られました。そのおばちゃん、めちゃくちゃいい人だと思うんですよ。こういう人がいるおかげで助かる人もいるんですから。ただ僕は、何かを伝えるときには“言い方ひとつ”というか、相手への配慮が大事だと思っています。そして『自分をわかってくれ』と主張する前に、まず相手の立場を想像すること。障害者も健常者もそういう視点を持てば、誰もが暮らしやすい社会に近づいていくんじゃないかな」

「この体で重度障害とは認定されない」、YouTubeで発信する理由

 YouTubeを始めた頃には「気持ち悪い体を見せるな」という罵詈雑言を浴びせられたこともあった。それでも山田さんは発信をやめない。

 「僕は、基本的に受け取り方は自由だと思っているんです。『ポジティブな発言をしてる僕を見て、ネガティブな思いを持つ自分は?』ということでもなく。ただ、『こういう体で生きている人間がいた』ということを、その人の引き出しの中に入れてもらいたい。それこそ、コロナ禍で気持ちが塞いだときに思い出してもらい、ちょっと気持ちが前に向くきっかけになれば、発信した意義は十分あったんじゃないかって思っているんですよね」

 ちなみに山田さんは、制度の隙間にこぼれたことで「重度特別障害者手当」や「障害年金」、「労災保険」といった手当ての受給がない。だからこそ自活せざるを得なかったが、正社員の障害者雇用枠は全求人の5%と狭き門だ。

 「当初は、『この体で重度障害とは認定されないんだ』ってけっこう衝撃でしたね。障害者雇用の壁にもいろいろぶつかったので、未来の子どもたちに同じ思いをさせたくないんです。ただ、僕にはまだ制度などにインパクトを与えるような、大きな影響力はない。だからこそ自分の体でどんどんいろんな場に出て行って、発信することを諦めたくないんです」

(文:児玉澄子)

『線路は続くよどこまでも』

廣済堂出版 刊

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