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ORICON NEWS
「選手の“ジャンプ”を想定し、実験済みだった」話題の段ボールベッド、メーカーが明かす開発の裏側
“ジャンプ”したくなる心理は想定内 「天井高さを聞き取り、落下衝撃を検証」
これに対して7月18日、アイルランド男子体操のリース・マクレナガン選手がベッドの上で力強くジャンプをする動画を投稿し、「フェイクニュースだ」と断じる。これにて騒動も収束したかと思いきや、今度はイスラエルの野球選手たちが悪ノリ。7月28日、TikTokに「何人まで耐えられるか検証する」としてベッドの上に1人、2人、3人と加わって飛び跳ね、最終的に9人目で壊れる動画を投稿した。
この投稿は広く拡散されたものの、「やりすぎだ」と批判が殺到。一方で「屈強な選手たちが8人乗っても壊れないのはすごい」といった賞賛の声も多く、結果として段ボールベッドの頑丈さの証明にもなった。
選手村に寝具一式を提供したエアウィーヴの事業開発部・執行役員の安藤強史氏は、この動画の感想を「選手の方々にケガがなくて本当によかったです」と安堵の表情。「選手のみなさんがベッドで飛び跳ねることは想定していました。ホテルなどでも、まずベッドに飛び込む方はいらっしゃいますし。ただ、まさか9人乗るとは予想外でした(笑)」(安藤氏)
段ボールベッドは「身長180cm・体重100キロの選手が30cmジャンプ」した場合の150キロの落下衝撃に耐えることを実証した上で製作。選手村の部屋の天井まで高さを聞き取りした上で、ベッドの上でジャンプできる高さを想定した。また200キロの耐荷重テストもクリアしている。「同様のテストでスチールパイプ製ベッドはグニャッと折れ曲がり、木製ベッドは寝床面が割れてしまいました。段ボールはパーツの組み合わせ次第で、縦方向の負荷に極めて強く対応できます」(安藤氏)
組織委員会からは“段ボール”に戸惑いの反応も、五輪史上初のベッドフレーム開発
段ボールを使用した背景には、ベッドのサイズ等の規格が細かく定められている中、同社が選手用に開発したマットレスを使用するのに必要な頑丈さが備わっていたことに加え、環境への配慮もあった。
「組織委員会の方々も、提案した当初は『えっ?』という反応をされましたね。やはり段ボール=脆弱という印象があったようなので、前述の実証実験でご納得いただきました。さらに"持続可能な社会の実現"という観点からも、段ボールという素材は今回の東京大会に最適だったのです」(安藤氏)
段ボールはそのリサイクル率の高さから"環境の優等生"と呼ばれている。オリンピックに1万8000台、パラリンピックに8000台供給された段ボールベッドは、大会終了後にはパーツにバラして資源として回収される。なお52個のパーツで構成されており、組み立てはすべて手作業だが、「慣れれば1台10分足らず完成します」とのことだ。
「またマットレスは独自素材のポリエチレン樹脂でできているため、使用後は融解・ペレット化した後にプラスチック製品にリサイクルができます。こちらは『肩・腰・脚』の各パーツの表裏で硬さが異なる、弊社の3分割マットレスを採用。選手のみなさんの体型や体格に合わせて個別化し最適なパターンにカスタマイズできるのが特徴です」(安藤氏)
大会が進むにつれて選手たちからの寝具についてのSNS投稿はポジティブな反応が多くなっていった。メキシコ女子アーチェリーのアナ・バスケス選手は「以前よりもよく眠れる」とその快適さを笑顔で伝えている。また、選手村には各選手に最適なマットレスを体型の計測によってフィッティングできるブースを設置。五輪期間中には1,000名ほどの選手が訪れ、好評だったという。選手の投稿は、企業側からの発信に制約がある中、こうした試みも発信してもらう機会にもなっていた。
なお段ボールベッドについての問い合わせも殺到しているが、現在のところ販売予定はないとのこと。また選手村で使用されたマットレスの多くは国の教育施設などに寄贈を予定している。