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東京五輪、話題の“フランク解説”から見えた、多様化するスポーツ解説の在り方

“激情型応援解説”の第一人者・松岡修造 (C)ORICON NewS inc.

“激情型応援解説”の第一人者・松岡修造 (C)ORICON NewS inc.

 7月23日から約2週間にわたって開催され、本日8月8日に閉幕を迎える東京五輪。アスリートたちが繰り広げた熱い戦いの数々は多くの感動を呼んだが、同時にそれらを伝える実況や解説も大会を大いに盛り上げた。実際今大会では、さまざまな形の“解説”がクローズアップされ、SNSの相乗効果もあり従来大会以上に、そのスタイルが話題になるケースが多かった。ここでは、従来から今大会までを振り返りながら、多様化するスポーツ解説を考える。

解説を“応援”としてエンターテインメントに昇華した民放各局

 そもそもスポーツ中継における実況は、競技中に起きた事象を細かく視聴者に伝え、解説は専門的知識や経験から1つ1つのプレイについて素人にも分かりやすく解説するという役割がある。この前提のなか、これまで民放とNHKではそれぞれの特色があった。

 民放でのスポーツ中継では、あくまでその競技がメインではあるが、番組を盛り上げるべくエンターテインメント性を取り入れる傾向がある。特に国際大会になると、応援色を強く押し出すことで国をあげての一体感が生まれ、番組視聴の追い風になる。この民放での“応援色”の強い解説といえば、松岡修造、松木安太郎といった“激情型”の解説者が第一人者と言えるだろう。

 松木は、当初は「素人でも言える解説」などと批判を浴びていたものの、「おい!! PKだ! PKだ!! PKか!? ゴール!? よしよし!」といった様子で視聴者以上に感情移入。国民感情を代弁、いや誘導(!?)するかのような、日本びいきの目線で、擬音や絶叫を交えていくスタイルに、視聴者も徐々に慣れ、むしろその発言を楽しむように。

 松岡も、スポーツキャスターとしてさまざまなジャンルの競技を取材。その“熱いキャラクター”が選手や視聴者に浸透し、それが受け入れられていく。日本選手だけでなく、時には海外の選手も称えるその“熱さ”は、海外からも注目を集め、今大会でも他国メディアに取り上げられるほど、熱い取材を繰り広げている。

 この2人に代表されるように、“激情型応援解説”はエンターテインメントとして昇華され、昨今の“解説シーン”において、民放各局の一つのスタイルとして確立されたと言っていいだろう。

冷静に状況を伝えながらも…“漏れ伝わる感情”が魂を揺さぶる「NHK」

 応援解説をエンターテインメントに昇華する民放の一方で、これと対照的といえるのが従来のNHKのスポーツ中継。あくまで競技そのものがメインであり、実況や解説はそれに付随するものという考え方からか、民放ではあまりない“間”も厭わず、落ち着いたトーンで状況や1つ1つのプレイを冷静に伝える。だが、そんな実況・解説陣が平静を装いながらもあふれ漏れる感情を抑えられないとき、感動はより大きなものになる。

 2004年、アテネ五輪体操男子団体決勝において、鉄棒の最終演技者・冨田洋之選手の着地シーンで当時NHKアナウンサー・刈屋富士雄氏が発した「伸身の新月面が描く放物線は栄光への架け橋だ」はあまりにも有名だが、後日、同氏がさまざまなメディアで語ったところによると、これは用意していたフレーズではなく、取材を重ねて見てきた選手の印象や様子、演技の状況などから瞬間的に生まれたものだという。全国民が願った希望を、「金メダル」といった直接的な言葉を使わずに、感情が漏れ伝わるかのような精いっぱい表現したからこそ、名シーン、名実況として今も語り継がれているといえるだろう。

 今大会でそんなシーンが見られたのが、開会式翌日に行われたテコンドーの試合での一幕。女子49キロ級に出場した山田美諭選手の試合の解説を務めた、兄で元テコンドー日本代表の山田勇磨氏は、放送開始当初こそ、妹のことを「山田選手」と呼ぶなどと冷静に試合を分析。だが、試合が終盤に差し掛かるにつれて徐々に変化し、「よっしゃ」「焦るな、焦るな、大丈夫、大丈夫!」「美諭いけるよ」とつぶやくなど、何とか妹にメダルを取らせてあげたいという兄としての感情がこぼれた。解説者としての冷静な分析と、兄として妹を応援したい気持ちの感情に揺れながらも、後半は応援がメインになっていったこの様子に、SNSも「兄のエールが漏れ出てるのも良かったんだよな」など、好意的な反応だった。

あのNHKでも若者言葉がOKに? 新たな潮流“フランク解説”

 そんなスポーツ解説シーンにおいて、この東京五輪はさまざまな新たな潮流が生まれた大会と言えるだろう。なかでも大きな話題になったのは、堀米雄斗選手、西矢椛選手、四十住さくら選手の金メダルをはじめ、日本勢が大活躍したスケートボードでのプロスケートボーダーの瀬尻稜氏の“フランク解説”。

 今大会から採用され、視聴者にとって見慣れない競技であるスケートボードの技のすごさを分かりやすく解説する一方、さらに選手のパフォーマンスを見ながら「すげー」「やべー」「半端ない」「鬼ヤバい」などの”若者言葉”や、障害に自身の技がハマったときには「ビタビタ」、リスクを顧みずに強気に攻めたときに「ゴン攻め」といった言葉を連発。NHKの放送から聞きなれない言葉が流れてきたことに、SNSでも「起用したNHKナイスだった」「NHKオリンピック放送新境地」など大絶賛。さらに、瀬尻氏ではない人の落ち着いたトーンの解説に「前と打って変わって落ち着きすぎて逆に違和感w」といったツイートや「瀬尻ロス」を報告するユーザーが現れるなど大盛り上がりに。

 またこちらも新種目である自転車競技・BMXフリースタイルでも、解説のプロライダーの勅使河原大地氏が、瀬尻氏同様「キャンキャン」(片足を横に出す技)、「ビタ着」(着地が決まること)、「ゲシる」(ジャンプからの着地時に後輪が台の部分にぶつかってしまうこと)といったキラーワードを連発。「イエーイ」「フーー!」と技を決めた選手へ向けて声をかけるなど、自由なハイテンション解説も話題になった。

 解説を務めた瀬尻氏、勅使河原氏がともに20代であるように、スケートボード、BMXともに競技者、視聴者の年齢が若いこと。そして、この2種目がストリートカルチャーと直結する競技ということもあって、その“風”や“空気感”を飾らずにそのまま伝えた結果、これらの解説が生まれた要因となったといえるだろう。

今大会ではロボット実況も実施 近い将来“熱すぎる解説”との対決もありえる?

 これまで紹介してきたもの以外にも今大会では、印象的かつ話題になる解説が非常に多かった。フジテレビ系で競泳の解説を担当した萩原智子氏の松木、松岡のお株を奪う”絶叫応援型解説”。テレビ朝日系でソフトボールを解説した宇津木妙子氏が、まるでわが子を見るような優しい口調で「おーい!よくやった〜!ありがとぉ〜!いいぞぉ!おーい!ありがとう〜!よく頑張った〜!」と声を震わせる様子を、元日本テレビの青木源太アナが“エモすぎる解説”として、ツイッターで紹介した。

 圧倒的な取材力で“細かすぎる解説”として人気の陸上・増田明美氏は、女子5000メートル決勝で解説を担当。廣中璃梨佳選手のランチのメニューや、出身地・長崎の名物であるカステラを食べたことなどの情報を披露するだけでなく、放送中に実況アナウンサーの間違いを訂正するなど、存在感を示した。

 このようにさまざまな角度、手法で多様化するスポーツ解説。伝え方はそれぞれだが、どれもスポーツを盛り上げ、視聴者をその世界へ引き込むための大事な橋渡し役と言えるだろう。現に、瀬尻氏、勅使河原氏の解説が話題になったことによって、新種目にも関わらずスケートボード、BMXの注目度は格段に上がったといえる。

 また今大会では、合成音声による実況(ロボット実況)も実施。試合会場から送られてくる、対戦カードや現在のスコア、誰がシュートをしたか、といったさまざまなデータから、あらかじめ競技ごとに用意しておいたひな型を使って実況テキストを自動的に生成し、ライブストリーミング映像とタイミングを合わせて合成し、インターネット配信で届けられた。こうしたテクノロジーの進化も、スポーツ実況・解説における新たな可能性を示しているといえる。ロボット実況の冷静すぎる実況に、松木・松岡“激情型応援解説”が挑むとどのような化学反応が生まれるのか…そう遠くない未来にこの“対決”も期待したい。

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