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『あつ森』に一級建築士がツッコむ動画に反響 理想の一戸建て願望は不動産業界にも飛火?

  • 「あつまれどうぶつの森」にベテラン一級建築士・大川氏が物申す!(画像提供:ファーストロジック)

    「あつまれどうぶつの森」にベテラン一級建築士・大川氏が物申す!(画像提供:ファーストロジック)

 人気ゲーム『あつまれどうぶつの森』で作り込んだ家を、一級建築士の大川照夫氏が解説する動画が話題だ。窓の大きさから、薪ストーブの配置まで、細部に渡りプロのツッコミが炸裂。「解説めっちゃわかりやすい」「あつ森見てるだけなのに勉強になる」とSNSで反響を呼び、建築学科の学生からも称賛の声が。動画を企画したのは、不動産投資サイト「楽待」を運営する株式会社ファーストロジック。YouTubeチャンネル「不動産投資の楽待」(登録者数16.7万人)では、家賃滞納男と大家さんのバトルを追ったり、孤独死の現場に密着したりと、攻めた動画を発信している同社。ユニークな企画を続ける意図と、コロナ禍で変化する不動産業界について聞いた。

鳴かず飛ばずの動画が突如大バズり、Twitterをきっかけに幅広い世代が視聴

 「楽待」の動画サイトにアップされた“「あつまれどうぶつの森」に一級建築士・大川氏が物申す!”は、現在視聴回数68万回越え(12月18日現在)。「ネタかと思ったらすごく勉強になった」、「パワポで教授が教える3倍頭に入ってくる」と、大きな反響を呼んでいる。動画を企画したきっかけは、ゲーム実況者ファンの社員が、不動産に関わるゲーム実況ができないか考えたことだという。

「一級建築士の大川さんに出ていただいた動画は人気が高く、柔らかな物腰と専門家としての的確な指摘にファンも多かったんです。そこで、ゲームを使って大川さんに実況していただけないかと考えたことが、制作のきっかけです」(マーケティング部・辻氏)

 社内で会議を重ねる中、幅広い世代に人気の「あつ森」で制作することに。しかし、大川氏に提案したものの、そもそも大川氏自身がゲームに馴染みがなかったこともあり交渉は難航したという。

「最初打診したときは、『なんだかよくわからない』と言われてしまいました。まずゲームのことをご存知ないですし、物件を検証するにしても建築図面がないと正確なコメントはできないと。でもあつ森の物件に図面なんて存在しないので…実際にゲームの画面をお見せして、リハーサルや打ち合わせを重ね、なんとか出演を了承いただきました」(辻氏)

 制作にあたっては、元々「あつ森」をプレイしていた社員で、同じくマーケティング部の坪居氏が島のクリエイトを担当することに。元々同ソフトをやりこんでいたものの、動画で使用されるとなり、更に島の整備に力をいれた。

「『あつ森』を使った解説はすごくいいアイデアだと思ったのですが、人気のゲームなので、やりこんでいる視聴者も多いと思いました。そういう視聴者が見ても満足されるように、かなり島の整備には時間をかけましたね。内装では、ハッピーホームアカデミーで高得点をとるために飾っていた家具を整理し、“こんな部屋に住みたいな”と思えるシンプルな部屋を目指しました」

 出来上がった動画は、社内での評価は上々。しかし、動画をアップした11月10日から、再生回数は思うように伸びなかった。同社のYouTubeチャンネルでは、1日で1万再生あればそれなりのヒットが見込めるが、「あつ森」動画の再生数は3600回。1万を超えたのは10日以上経ってからで、しばらくは低空飛行状態だった。

「通常1日〜2日で伸びないと、その後も伸びないことが多いので、私の動画クリエイター生命もこれまでかと意気消沈でした(笑)。でも、きっかけはわからないのですが、YouTubeのオススメに表示され始めて、そこから徐々に再生回数が伸び始めたんです」(辻氏)

 さらに、一番大きかったのはTwitterで「なんだこれ…あつ森見てるだけなのにスゴく勉強になるぞ」と、ある視聴者に呟かれたこと。リツイートが瞬間トレンド国内No.1になり、投稿がバズると、一気に拡散され、現在までに12万以上のいいねが。投稿されたのは11月28日、動画をアップしてから18日後のことだった。

 Twitterで拡散されたことで、幅広い世代が視聴。通常、同チャンネルの視聴層は30〜40代が最も多く、8割以上が男性だというが、「あつ森」動画に関しては視聴者の6割が女性。さらに10代後半から20代前半の視聴者層が一番多く、今までにない現象が巻き起こることとなった。

「ゴキブリは1匹いたらもっとたくさんいるんだよ」本筋以外の小ネタもバズる要因に

あつ森の「まきストーブ」が”断熱二重煙突”になっていることを説明する大川氏

あつ森の「まきストーブ」が”断熱二重煙突”になっていることを説明する大川氏

 動画がバズった理由の一つに、大川氏の的確かつ冷静なツッコミがある。例えば、部屋の中に置いてあった薪ストーブについて、「壁から60cm以上離さないといけない」といった指摘から、煙突の作りや位置まで細かく解説。

「何気なく置いていた薪ストーブについていろいろ解説をしてくださって、大川さんの引き出しの多さを実感しました。解説を通して、いかに普段私たちが当たり前に見ている家や街が、綿密な計画や法律に基づいてできているかに、改めて気づくことができました。揚げ足をとるわけではなく、プロの視点で穏やかに解説してくださったのもよかったのだと思います」(坪居氏)

 その他にも、窓の設置に当たっては、床面積の7分の1以上の採光面積がいることや、博物館内の作りについてなど、プロの視点での解説が光る。企画当初“おもしろおかしいだけのことはやらない。プロとして話して、誰かの役に立つならやる”と語った大川氏の信念が、随所に見え隠れするのである。

「大川さんは、欠陥住宅に悩む人の相談などを受ける建築Gメンの会の理事長も務めている方なんです。だからこそ、博物館のスロープが少し急であるとか、水族館の床の仕切りが出っぱっていて、魚を見ながら歩いている時につまづく危険があるなど、なによりも住む人の安全を第一に考える大川さんの信念に心を打たれました」(辻氏)
  • 大川氏を部屋に案内した途端、ゴキブリが出現

    大川氏を部屋に案内した途端、ゴキブリが出現。慌てて退治しようと追いかけている場面

  • 「一匹出たらもっといるんだよゴキブリって。それで全部退治したなんて認識が甘いんじゃないの」

    「一匹出たらもっといるんだよゴキブリって。それで全部退治したなんて認識が甘いんじゃないの」とツッコミを入れる大川氏

 また、大川氏が穏やかに独特の視点で放つツッコミも、反響を呼んだ理由の一つ。住民の家を案内するなかで、人気キャラ“ジャック”の家にタコの水槽があったことについて、「タコ飼ってるんだね」と2度ツッコんだり、冒頭ゴキブリが出たシーンでは「ゴキブリは1匹いたらもっとたくさんいるんだよ。1匹潰しただけでいなくなったと思うなんて認識が甘いんじゃないの」と冷静に解説したりと、思わずクスっと笑ってしまうツッコミも。本筋だけではなく、前後のおもしろハプニングにも多くのコメントが寄せられた。

「タコは、私がジャックにプレゼントしたものでした。本筋となる建築の話とは異なる指摘だったので、『この部屋は窓がめちゃくちゃ多いんですよ』と話を軌道修正しようとしたら、もう一度『タコ飼ってるんだね』とおっしゃられて(笑)。ゴキブリについても、ちょっと島を放置していたらでてきてしまって。焦って潰したら大川さんが食いついてきてくれました。思わぬハプニングからの会話が視聴者さんにとてもウケていて、個人的にとても印象に残りました」(坪居氏)

 ちなみに大川氏自身は、動画の反響について全く知らなかったとのこと。ユニークな視点の企画と、大川氏の人柄が相まっての反響と言えるだろう。

一戸建て投資の反響数が近年600%増加、コロナ禍の影響は不動産投資には表れず?

 自分の理想を具現化した一軒家を作っていく「あつ森」と同様に、不動産投資においてもここ数年で戸建ての人気が高くなってきているという。ひと昔前はマンションやアパートへの投資が多く、同社サイトに掲載された戸建ての反響数が、この5年で600%増加。その理由について、同社広報担当の尾藤さんはこう語る。

「物件を買う際には金融機関からお金を借りる場合が多いですが、戸建てならマンションを一棟買うより低価格なので、買いやすいし始めやすいですよね。また、 “マンションより戸建ての方が比較的長く住む人が多い”ということもあり、買う方が増えてきたので、戸建ての価格も比例して上がってきている状況です」

 空き家などで放置されている物件の中には5万円程で買える物件もあり、中には突撃アポイントをして売買交渉をする人もいると言う。また、コロナ禍で「都心から郊外に引っ越す」というニュースもよく耳にするが、不動産投資においてはまだその兆候は見られないそう。

「住宅については、とくに郊外の需要が増えているという話は今のところあまり聞きません。本当に郊外で需要が増えているのか、逆にメディアとして取材してみて、真実を知りたいと考えています。コロナ禍で影響を受けているのは、オフィスやテナントでしょうか。民泊は大打撃を受けたところも多く、一気に売り上げがゼロになって撤退せざるを得ない状況になっているようです」(尾藤氏)

 同サイトでは、不動産投資の情報を発信しつつ、孤独死の現場に密着したり、家賃滞納男と人のいい大家さんの長きにわたるバトルを動画にしたりと、攻めた企画も多く手掛けている。時に厳しいコメントがついたり、攻めた企画に対して賛否両論の意見が飛び交うこともあるが、中途半端なことをせず攻め続ける姿勢は、変わらないマインドだ。

「不動産投資チャンネルなので、不動産に関するネタという部分は崩さず企画を立てています。不動産投資にはリスクがありますので、勉強して正しい知識を身に着けていないと、失敗する可能性もあるんですよね。最悪の場合は自己破産になるケースもたくさんありますので、そういう方がひとりでも減るように伝えていくことが、一番の使命だと思っています」(辻氏)

(取材・文/辻内史佳)

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