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捨てられたマスクが妖怪化 コロナ禍の必需品から生まれた「口覆ひ」への想い
【口覆ひ(くちおおい)】
? さきゅう@創作妖怪描いてます (@shamo0301) November 17, 2020
道端で放置されたマスクの付喪神(昔は落ちてなかったのに。時代だね。)
人間を空気中の汚れから守る存在だったにも関わらず、道に落ちたことで穢らわしいゴミとされてしまった。落とした人間を恨んでおり、見つけ次第汚い面で口を覆ったりぱっちんしてやろうと目論んでいる pic.twitter.com/CNgsReY1pg
コロナ禍で見かけるようになった光景から妖怪化した「口覆ひ」
【さきゅう】普段SNSにアップしているイラストは大体趣味で描いているものですが、ありがたいことに時々絵の仕事を頂けるようになってきています。
――雰囲気のある妖怪の投稿が話題になっていますが、いつ頃からイラストを描いていますか?
【さきゅう】高校、大学と美術系のところに進学して、最初は全く違う雰囲気の作品を制作していたのですが、大学を卒業後和風妖怪イラストに方向転換をして現在に至ります。
――話題となった「口覆ひ」の投稿は、1万を超えるいいねが付きましたね。思いついたきっかけを教えてください。
【さきゅう】家の近くを歩いていて「最近マスクがよく落ちているなぁ」、「ほかの地域でもやっぱり落ちているんだろうか?」と思ったことがきっかけです。
【さきゅう】日常生活で使うものは「使っていてこういうことが起こる、よくある現象」みたいなものがあると思っていまして。この先、製品の形や制度や生活様式が変わった時に伝える人がいなければやがて消えていくと思うんです。
――時代とともに使われなくなった物はたくさんありますね。
【さきゅう】例えば、私は平成生まれなんですが、ポケベルの存在は知ってますが現物を見たこともなければ、使った時にどんな「あるある」があったかを知りません。
――なるほど。現在さきゅうさんが妖怪のモチーフにしている物も、いつかは使われなくなると。
【さきゅう】風化してゆくもの終わりがあるものとして仕方のないことですし、無理に「昔ながらの習慣を残して」「消えゆく物たちを保護して」という要求ではないのですが、作品という形で残していった時、この先の人はどう解釈するんだろう。さらにその先の人へどう伝えるんだろう。という思いを、頭の片隅に置きながら作っています。
――さきゅうさんが一番お気に入りの作品を教えてください。
【さきゅう】近作の中でしたら「四火煙連(しけもくれん)」、過去作も含めてでしたら現代之妖怪絵巻第1巻に収録している「銭豚(ぜにぶた)」が気に入ってます。どちらも思い入れが深いです。
文章やネーミングも光る創作妖怪 日常生活の「あるある」にアンテナを
【さきゅう】大学生のころに百鬼夜行絵巻を見て、「これ、現代の物や現状が妖怪になったらどうなるんだろう?」という好奇心から描いてみたのが始まりです。
――モチーフとなる物はどう見つけていますか?
【さきゅう】日常生活の中で、「あるある」や「あったあった」を感じるアンテナを張るように意識しています。実際にそのものを見かけた時やふとした時に思い付きます。「この現象ってみんな実際にあった?」という問いかけをしてみたくなったり…。
【さきゅう】イラストだけでなく文章やネーミングもすべて混みで作品の一部と考えていますので、別の単語と語感が似ている物がある言葉を盛り込んだり、説明文なら急に軽すぎる一文を盛り込んでギャップを生み出したりということを臨機応変に心がけています。それと、今のところは自分の中でセンシティブすぎるものはモチーフにしないという点も気をつけています。
――これまでに投稿されている創作妖怪には、多くのコメントが寄せられています。いいねやリツイートの反響もありますが、感想をお聞かせください。
【さきゅう】嬉しかったですし、海外での妖怪の認知度が思ったよりもずっと高いこととその反響の大きさに驚いています。イラストを見ていただいている皆さんには、本当に感謝しております。初めは大学の製本の授業で提出した課題作品だったので、とても感慨深く思います。
あるある妖怪化も続けて「海外伝承の怪物を描いてみたい」
【さきゅう】小さい頃にはオバケや鬼妖怪に対しては好きでなく、逆に号泣するぐらい嫌ってました。ただ、ゲームなんかに登場する怪物は大好きでした。そこからだんだんオバケや鬼、妖怪への恐怖心が薄れていき大学の頃に妖怪のサークルへ入ったことを機に妖怪への愛おしさが増し、今では好きになりました。
――ズバリ、妖怪の魅力は?
【さきゅう】ただ恐ろしいだけじゃないところと、姿や挙動が自由なところが妖怪の魅力だと思っています。人の命を奪ってしまう恐ろしい妖怪もいますが、尻についてる目玉をみせつけてくるような、不審者のような妖怪もいたり。知れば知るほど面白い存在です。
【さきゅう】けっこう、思いついてはすぐ描くという作業を繰り返しているので、まだ厳密には決まってないんです。漠然としてはいますが、日本に散らばっている「あるある」な物たちをこのまま妖怪化し続けられたらなと思っています。モチーフはまだたくさんあるので。創作妖怪以外でしたら、海外伝承の怪物を描いていきたいです。
――イラストの他に、これからの目標はありますか?
【さきゅう】目標というより、やってみたいことですが今まで作った創作妖怪を立体にしてみたいです。
――Twitterではフォロワーさんから創作妖怪を募集して、さきゅうさんが描く企画をしていましたね。そのイラストが本になる日が楽しみです。
【さきゅう】現在、手作り本を製作中です。おそらく、年明けにはネット通販できるようになると思いますので、ご興味を持たれた方はTwitterをご確認ください。(通販は過去作と新刊の計6巻の予定)