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毒親ブームに警鐘、脳科学から見た親と子の問題点「誰でも“なり得る”ことを知って」

  • 脳科学者・中野信子氏

    脳科学者・中野信子氏

 近年、世に浸透した“毒親”というキーワード。エンタメ界では、『凪のお暇』(TBS系)や『過保護のカホコ』(日テレ系)など、過干渉により子どもの自立を奪う母親が描かれたドラマが増えたり、SNSでも“毒親育ち”という言葉が大きな反響を起こしたりしている。そんななか、『不倫』や『キレる!』などの著書がある脳科学者・中野信子氏が『毒親 毒親育ちのあなたと毒親になりたくないあなたへ』(ポプラ社)と題した新作を発表。中野氏が語る“毒親ブーム”への警鐘とは? 世間に衝撃を与えた心愛さん虐待死事件への考察も明かす。

毒親ブームに警鐘、「親VS子どもという対決の構図を助長するだけ」

  • 著書『毒親 毒親育ちのあなたと毒親になりたくないあなたへ』

    著書『毒親 毒親育ちのあなたと毒親になりたくないあなたへ』

 いまこのタイミングで、毒親をテーマに執筆した理由について中野氏は、「コミュニケーションの基本は親や養育者との関係で作られるので、“毒親”は一つの重要なトピックではあります。でも私自身は、このブームを少し引いた目線で見ている部分があって。それは、『親がこうだから自分はうまくいかないんだ』と親だけを責める形にしてしまうと、親VS子どもという対決の構図を助長するだけで、問題解決には必ずしもつながらない。その構図へのアンチテーゼという意味もあります」と説明する。

 確かにメディアは“毒親”という言葉を用い、センセーショナルに扱う。SNS等でも、その言葉は非常に大きな影響力を及ぼす。問題提起という意味では間違ってはいないが、親子関係が一面的に捉えられてしまう危険性もある。そこで中野氏は、脳科学者の立場からこの問題に向き合おうと、本書を執筆したというのだ。

 「自分の心に痛みがあるとき、人は、犯人探しをするようにその原因を探してしまう」と中野氏は語る。コミュニケーションスタイルの問題では、ともすると、身近な存在である親が「全部悪い」ということになりかねない。そこに親子関係の問題点があるという。

 「子どもの性格を決める要素として、親から受け継いだ遺伝的な部分と、生後の環境と両方の側面があります。つまり、二重に親の影響を受けて今の自分のコミュニケーションスタイルの基礎が出来ているという理解に普通はなるでしょう。確かにそうなのですが、不都合があったとき『親が正しく育ててくれていれば、こんなことにならなかったのに』と、すべての原因を親に求めてしまうパラダイムに自縄自縛状態になって苦しむ人がたくさん生まれてしまっています」。

 多感な時期に残酷な仕打ちを受けた、となれば、親を責めたくなる気持ちが生じるのも不思議ではない。またそれは一朝一夕に消えるものでもないだろう。しかし、親を責めることでこの問題が解決できるのかどうか、といえばむしろ解決から遠ざかってしまうのではないかと中野は危惧する。「人間は必ずしも論理的に考えることに慣れているわけではないんです。冷静に考えれば『そうだ』と納得が出来ても、気持ちはまた別物だという場合がほとんどでしょう。むしろ、論理では説明のつきにくい、伝統的な概念をうまく使って、バランスを取りながら心を癒していくことも必要なのかもしれません。正しさをむやみに追求するより、その方が人間の認知の形に合った方法ではないかと思います」。

いつまでも“独立した個人”にならない子ども、SNSで可視化した“絆”の概念が根底に

 実際、子どもが不祥事などを起こすと、親の責任が問われることが多い。

 「有名な俳優さんの息子や娘が薬物事件などを起こすと、いい大人であっても『親の育て方が悪かった』という論調になりますね。そこには、健康寿命が伸びたことも影響し、子どもが大人になっても“独立した個人”と考えない文化がある」。

 その根底には“絆”という概念があるからだという。

 「私たちは、危機的な状況がやってくると“絆”という言葉を持ち出すのです。すると、集団としての振る舞いも変わってくる。より利他的な行動が増えて、それをしない人を責め始めるんです。これが親子関係に適用されると、『お前は親なんだから、子どもの責任を背負うべきだ』ということになる。親子の絆を放棄して、子どもを勝手にさせているのはどういうことなんだと責められてしまうんです」。

 日本においても近年、大きな災害が立て続けに発生したことにより、より“絆”というキーワードが強く意識されるようになった。しかもSNSの普及により、こうしたことがより可視化され、親子関係にスポットが当たることが多くなったという。絆という概念は決して悪いものではない。だが、使い方や考え方を間違えると、それが硬直した思考に繋がりかねないことを知っておくべきだろう。

心愛さん虐待死事件が示す“快楽”の恐ろしさ、「誰でもこの父親と同じようになり得る」

 本書には、六本木ヒルズ森タワー入口にある巨大な蜘蛛の彫刻『ママン』についての記述がある。作者は、世界的に有名なフランスの彫刻家、ルイーズ・ブルジョワ。『ママン』は、父親から精神的虐待を受けていた彼女を黙って見ていた母親の姿がモチーフになったと言われている。ルイーズさんの生い立ちを読んでいると、先日父親への判決が下った栗原心愛(みあ)さん虐待死事件が思い起こされる。

 中野氏は同事件について「とても痛ましい事件でした」と顔を歪めるが、「報道を見ていて、父親の『しつけのつもりだった』という言葉が引っかかります。たぶん、本人は本気でそう思い込んでいたんじゃないか」と自身の見解を述べる。

 当たり前だが、実の親子であろうとも、ステップファミリーであろうとも、虐待が許されるわけではないのだ。中野氏は、「いいお父さんになろうと必死だった、というのはそうかもしれない」と推測しつつ、そこに潜む危うさを危惧する。

「だからこそ、歯止めがきかず、危険で、恐ろしいんです。それを言い訳にできるから。でも、彼のしたことは残酷で、取り返しのつかないことです。自分が正義の側にまわって誰かを糾弾するとき、人は快楽を得てしまう。そこで『これ以上はダメ』とブレーキをかける仕組みが働かないと、結果的に相手の命を奪ってしまうに至るまで、エスカレートしてしまう」。

 この件で中野氏が力説するのは、「こういう脳の仕組みは程度こそ違うけれど誰でも持っている」ということ。ただ加害者の父親を非難するだけでは、なにも解決しない。「誰でもこの父親と同じようになり得る可能性を持ってしまっていることを知ってもらうことが大切。そのうえで、客観的に自分を見つめられる視点、自分の中にいつでも働かせられるブレーキを育てていかなければいけない。そうしないと、今後も同じことが起こってしまう危険性があります」と警鐘を鳴らす。

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