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ガンプラ│トップモデラーインタビュー(ガンダムプラモデル)

既存の価値観から“あえて外した”『ガンプラW杯』王者の覚悟【連載20回】

作品名:永遠の絆 〜義経・弁慶 新しき国へ〜(2016ガンプラW杯優勝作品)

作品名:永遠の絆 〜義経・弁慶 新しき国へ〜(2016ガンプラW杯優勝作品)

 来年40周年を迎える「ガンプラ」は、1980年7月の発売以降、累計4億5千万個以上を出荷。その人気は世界的にも絶大で、今では年間約1千万個の出荷数のうち、その3割が海外に出荷されているという。そこで、バンダイ公式のガンプラ世界大会『2016 GBWC(ガンプラW杯)』で優勝した横田ユースケさんにインタビューを実施。“戦いの場”であるコンテストに挑む理由、そしてモデラーとしての矜持を聞いた。

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模型には「上も下もない」が、コンテストに挑むなら“結果を求める”

――作品を作る上で大切にしていることは何でしょうか。

横田ユースケガンプラは卓上サイズで楽しむ模型であり、「リアルを縮小したものがガンプラだ」、ということを考えすぎてしまうと、どれも似通ったディテールになったり、自分の個性を出しにくくなります。ジオラマの際はそうはいかないでしょうが、単体作品を作るときはそう割り切ることが多いです

――横田さんのガンプラにおける“個性”とは?

横田ユースケシンメトリ(左右対称)を追求することも大切ですが、最近はあえて左右同じパーツなのに、一部デザインを変えてみたりして遊ぶことも増えてきました。シンメトリを追求する美しさもありますが、その中でほんの一部ディテールを変えてみることで、作品に「心地よい違和感」が生まれ、退屈な視線の流れに歯止めをかけることができます。

――横田さんは2016年度『ガンプラW杯』で優勝しています(作品:永遠の絆 〜義経・弁慶 新しき国へ〜』)。モデラーとしてコンテストに挑戦することの意義は?

横田ユースケ本来模型には「上も下もない」というのが自分の考えです。なので、自分のイメージを具現化するということを目いっぱい楽しめればいいと思います。でも、あえて勝負の世界に自ら身を投じるのならば、“貪欲に結果を求めて”戦うべきでしょう。

――横田さんの“勝つため”の方策を教えてください。

横田ユースケ『ガンプラW杯』では、「勝つためにどうすればいいか」を徹底的に追及して製作しました。その時重要だと思っていたのが、「自分の作品を客観的に自分で審査する」ということ。そして「ガンダムに詳しくない人たちをも虜に出来るもの」という2点です。まず前者ですが、自分の作品というのはやはり愛おしいもので、どうしたって色眼鏡で見てしまうものです。なのでそれをまずは外して、客観的に自分の作品を分析し、審査基準をどうクリアするかということを考えました。ですので、頭の中にある作品を完璧に具現化できればきっと優勝できる!というプランを立てることからはじめました。

――では、「ガンプラを知らない人を虜にする」方法とは?

横田ユースケ当時、『ガンプラW杯』の日本代表になるためには一般のお客様の得票数というものが審査に関係していました。ここで重要なのが、会場に足を運んでくださる方々は、決してガンダムマニアだけではないということです。なので、マニアが喜ぶマニアックな作品が必ずしも一番評価されるわけではない、というのが当時の私の分析でした。それは歴代のチャンプ作品を見ても明らかでした。それにバンダイの審査員の方々も、もっとたくさんの方々にガンプラの魅力を知ってほしいと思っているはずだ、という自己分析もあり、「単純にアート作品として見た人を虜にできるもの」というものを作るべきだ、という結論にいたりました。

理解されづらかった『ガンプラW杯』優勝作品は、既存から“あえて外した”

横田ユースケ2016年に『ガンプラW杯』で優勝した際、「あれはガンダムではない」などとよく言われました。それは当然です。あえて「外した」わけですから。しかし、あくまで勝負の世界に身を投じるからには、自分の出した分析結果を信じて全力で結果を追求する事はごく自然な流れでした。

――ガンプラに“独創性”を持ち込んだ結果、理解されづらい部分もあったわけですね。

横田ユースケそうですね。日本ではガンダムの世界観を尊重した作品が好まれがちです。一般的な価値観と相反する作品で勝負した結果、理解されづらかったのかもしれません。そして、新しい自分のスタイルを手に入れた結果生まれたのが、現在『ガンダムベース東京』に展示されている「ガンダムシュピーゲル」(※アニメ『機動武闘伝Gガンダム』に登場する忍者ガンダム)です。

――アニメの“忍者ガンダム”という設定を拡大解釈し、より忍者らしいディテールを追求した魅力的な作品ですね。

横田ユースケガンダムの世界に実在している機体を、全く違うアプローチからアタックして完成させることを実現しました。なので、ある意味私の代表作なのかもしれません。

――コンテストでは、勝つことに徹底的にこだわることで、新しい“ガンプラ観”に目覚めることができたのでしょうか。

横田ユースケ『義経と弁慶』では、今までの作風とは違う作品を作ることで、それまでの自分とは異なるまったく新しいスタイルを手に入れることができました。また、「勝負する」ということで得られるのは結果だけではなく、審査基準という明確なルールの中で客観的に自身の作品を見つめる眼力が得られます。なにより、“自分らしさ”という新たな価値観に出会えたことが大きいです。

――ガンプラを製作するうえで、これからも大切にしていきたいことは?

横田ユースケコンテストや模型誌の作例など、ガンプラを作る際は毎回テーマが異なります。作品へのアプローチの仕方を変えていったとしても、自分の個性のようなものは勝手ににじみ出てくるものだと思っています。作品に私の名前が出ていなくても、「これって横田ユースケの作品だよね」と分かってもらえるように腕を磨き、“自分の色”をより追求していきたいですね。

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(C)創通・サンライズ

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