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DJイベントが銭湯救う?  “ダンス風呂屋”にかける担い手たちの思い

 銭湯という一見穏やかに見える場所で、まるでクラブに来たかのような音楽体験ができる「ダンス風呂屋」というイベントが話題となっている。現在都内で減少傾向にある銭湯を再び盛り上げる役割も兼ねているという。開催したきっかけや、イベントが銭湯に与えている影響について、主催者であるOzone合同会社の雨宮優氏と浅草「日の出湯」の四代目番頭・田村祐一氏に話を聞いた。

イベントは20〜50代と幅広い客層、銭湯の浴場が刺激的な音楽空間に

 「ダンス風呂屋」は“銭湯の日”である 10月10日に開催された“サイレントフェス(R)”というジャンルの音楽イベントで、専用のワイヤレスヘッドホンを使ってDJやライブの音源をオンタイムで共有することで、騒音を気にすることなく無音の状態で音楽を楽しめる。会場となったのは、浅草にある銭湯・日の出湯だ。イベントの目的について主催者の雨宮氏は「銭湯とダンスフロアがもたらす効果の関連性に気づき『ダンス風呂屋』と名付けました。サイレントフェス(R)は欧米で騒音問題の解決策として広まった“サイレントディスコ”を日本流にプロデュースしたものです。エンターテインメントを入り口にして、都内を中心に廃業が増える銭湯に再び目を向けてもらうきっかけを作れれば」と話す。

 4回目を迎える同イベントには、銭湯に馴染みのない若い世代もいれば、ディスコ世代でもある50代も集まる。音楽を楽しみながら自由に踊る“ダンスタイム”に始まり、皆で銭湯にまつわる話を聞く“トークタイム”があり、その間に浴槽にお湯がはられ、最後には皆で一緒にお風呂を楽しむという流れだ。脱衣所に進むとヘッドホンがかけられたラックがあり、その一つをスタッフから渡されて浴場へと入る。ミラーボール、電球などで飾られた浴場にはそれぞれにDJブースが設置され、客は目当てのDJがプレイしている浴場を行き来して音楽を楽しむ。

 実際のクラブに比べると、流れてくる音楽はとてつもない爆音ではなく、万が一うるさいと感じてもヘッドホンを外すことで回避できる。俯瞰で見れば、無音の状態で皆が踊り狂っている姿はかなりシュールだが、ヘッドホンをつけると気分が高揚し、浴場が刺激的な音楽空間になったようにも思えてくるから不思議だ。

銭湯が2600軒から530軒に減少も「新たなチャレンジで銭湯の固定観念を壊したい」

 減少の一途をたどる銭湯。会場となる日の出湯では同イベントをどのように捉えているのだろうか? 実家である日の出湯の経営再建を成功させ、日本の未来に銭湯を残したいとWEBマガジン『SAVE THE 銭湯!』の発行に尽力する日の出湯の4代目番頭、田村祐一氏に答えてもらった。

──そもそも銭湯が減ってきている理由はどこにあるのでしょうか?
田村氏今ではどの家庭にもお風呂があること、それから設備の老朽化ですね。後継ぎがいるかいないかという問題もある。これから何億円も設備投資して銭湯を続けるのは厳しい、マンションにしたほうがいいと経営判断をされる方も多い。昭和40年代に都内で2600軒あった銭湯が、今では530軒ぐらいです。

──「ダンス風呂屋」にいらっしゃるお客さんの反応は?
田村氏僕はほとんどクラブなんて行ったことなくて。最初、雨宮さんから話をいただいたときも半信半疑でしたし、初めて開催した時はどういう感じになるのか不安でもあったんですけど、とにかくお客さんたちの顔がとても楽しそうで。笑顔で帰っていく姿が非常に印象的でしたね。

──このイベントの効果は?
田村氏銭湯は日頃の疲れを癒し、リラックスし、気分転換できる場所です。皆さんのなかには、“銭湯=体を清潔にする場所”という固定観念があると思うんですね。それを壊すためにこのイベントに取り組み始めました。すぐに収益回復につながらなくても、年々減少している銭湯に目を向けてもらうきっかけになればうれしいです。

銭湯とクラブに意外な共通点、SNSとは異なる”つながり”生まれる

 ではなぜ銭湯でこのようなイベントを開催しようと考えたのか? 主催したOzone合同会社代表・雨宮優氏に話を聞いた。

──開催のきっかけは?
雨宮氏クラブと同じように銭湯もゆるやかなコミュニティができあがる場所だと感じたんです。クラブのフロアが盛り上がればコミュニケーションが活発になるように、銭湯に入って心と体がゆるむと、お風呂上がりに人と自然に会話しやすくなるように見えました。しかも、銭湯はクラブやライブハウスと同じように、エントランスがあって、フロアが複数あって、荷物が預けられる。銭湯とクラブはハード面でもソフト面でも共通点があると気づいたんです。

──ご自身の銭湯に対する意識に変化は?
雨宮氏僕自身、自宅近くの銭湯に時々行くようになりました。銭湯での体験は自分の人生を見つめ直すきっかけになる要素が幾分かあるような気がします。銭湯には衛生管理以外にも様々な価値や役割があります。そんな銭湯を守るためにも、このイベントは継続的に行っていきたいと考えています。

──イベントの構成をダンスタイム、トークタイム、入浴という順番にしている意図は?
雨宮氏お湯に入った後になんとなく人に話しかけてつながっていくという体験を最大化するために、トークと音楽を付け加えています。今年のトークは“せんとーく”として、銭湯に関する知識のある方に集まってもらってお話しいただきました。トーク中は緊張を解きほぐすためのアイスブレイクのようなこともして、お客さんが打ち解けるきっかけを作り、話題を提供し続きはお風呂で…というようにしています。その結果、入浴後はお客さん同士が自然にロビーに集まって、一緒に飲みに行ったりする姿も見られますよ。

──イベントによって新たなつながりが芽生えることもあるんですね。今後はどのような展望を?
雨宮氏実はサイレントフェス(R)というのも、貧困や不平等の解消といった社会的課題をエンターテインメントを入り口にして実感させる“ソーシャルフェス(R)”という取り組みの一つなんです。サイレントフェス(R)では“不平等の緩和”を題材に老若男女や外国人も含めた参加者が同じ条件で音楽を共有し、非言語で伝達し合う様子を表現しています。これまではソーシャルフェス(R)の体験を作るフェーズをやってきましたが、これからはそのオーガナイザーを増やしていくことにも力を入れていきたいですね。

 参加者からは「今日は汗だくになるくらい踊っちゃいました」「風呂から出た後も知らない人同士で盛り上がって大爆笑している。クラブではなかなか築けない雰囲気ですね」という反響も聞こえてきた。銭湯と音楽が持つ力を合わせて人と人とのコミュニケーションを生み出す「ダンス風呂屋」。今後、守るべき伝統文化と身の回りに潜む社会的課題の解決を考えるうえで大きなヒントとなりそうだ。

(文:小酒真由子)

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