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東京五輪に向け官民一体で夜間経済の活性化 年間8兆円の外貨を獲得

 2020年東京五輪・パラ五輪を控え、インバウンド消費の拡大を目指すなか、ナイトタイムエコノミー(夜間経済)への関心も高まっている。2017年12月、自民党のナイトタイムエコノミー議員連盟が、「夜」の消費喚起に向けた中間提言を発表。現在、官民一体で取り組みが進むなか、自民党議連の提言にも携わった株式会社アーティマージュ代表取締役社長、日本音楽制作者連盟常務理事及び日本ダンスミュージック連盟理事長の浅川真次氏に、現状の問題点や課題、その解決に向けての施策や新たな動きについて語ってもらった。

チケット販売システムの構築や交通手段の確保が不可欠

――官民一体での取り組みが進むナイトタイムエコノミーですが、どういったことが問題視されていたのでしょうか?
浅川 ナイトタイムエコノミーが注目されたのは、外国人観光客から“日本の夜はつまらない”という声が多く聞かれたのが1つのきっかけでした。夜間のエンタメ、飲食店が少ないことはもちろん、かつては夜中にクラブで踊っていると警官が入ってきて、ドラッグをやっているわけでもないのに検挙されることもあった。その結果、SNSなどで“日本は夜、遊んじゃいけない国”“警察に捕まることもあるなんて、おかしいよね”という情報が広がってしまったわけです。

2016 年に改正風営法が施行され、飲食店、クラブなどの深夜営業もやりやすくなってきましたが、観光客が国内で使う金額は増えていませんし、特に娯楽サービスに使うお金は滞在費のなかで2%以下。その原因はやはり、ナイトタイムのエンタメがきちんと外国人に伝わっていないことだと思います。いま掲げているのは、夜開催のライブ、ミュージカルなどのエンタメを活性化することで、外国人観光客1人あたりの滞在期間中の消費額を20万円にすること。2020年までに観光客を4000万人にする目標が実現すれば、1年あたり8兆円の外貨が獲得できるというわけです。

――ナイトタイムエコノミーを活性化するうえで、現状、どんな課題があるのでしょうか?
浅川 最大の課題は交通手段でしょうね。国内のコンサートの場合、平日は19時開演。土日はもう少し早いのですが、いずれにしても食事の時間と重なっています。欧米のようにゆっくり食事をしてからライブを楽しむ、またはライブの後にお酒を飲むといったスタイルを定着させ、外国人の方にも楽しんでもらうためには、地下鉄の終電延長、深夜バスの運行、相乗りタクシーの解禁など、24時以降の交通を整備する必要があります。そのほか、夜の観光情報を発信するための多言語の情報サイト、わかりやすいチケット販売システムの構築なども不可欠。これらの施策を推し進めるために設立されたのが「24 hour Japan 推進協議会」で、私も音制連の理事の立場からさまざまな提言を行っています。月曜日の午前中を休みにする“ラグジュアリーマンデー”もその1 つですね。月曜日を午後出社にすることで、日曜の夜にもエンタテインメントを楽しんでもらうというアイデアですが、いまは企業にアンケートを取っている段階のようです。もちろんどの施策にも予算が必要で、2019年1月に施行される出国税の一部をナイトタイムエコノミーに当てることも検討されているようです。

――基本的には外国人観光客向けの施策ですが、日本人のライフスタイルにも関わってきそうですね。
浅川 海外からの観光客が、東京のクラブなどで、日本人がぜんぜんいなかったらおもしろくないと思うんです。我々が海外に行ったときもそうですが、その国の人たちが遊んでいる場所に行って、現地の方々と触れ合い、カルチャーを体験したい。それは日本に来る海外旅行客も同じ。昼間は神社、寺などで日本の文化を味わってもらい、夜はさまざまなカルチャー、エンタメを体感したいはずです。

そのためにはまず、日本の方々にももっと遊んでもらわないとダメだと思っています。最近はSNSや通信型ゲームなどにより、家で遊べる環境はありますが、外に出て、その場に足を運ばないと体験できないエンタメをもっと提示していくべきだと痛感しています。いずれにしても、会場の確保、飲食店の営業時間を含めて、官民が一体になって推し進めることが大事だと思いますね。

――国が主導して法整備が進んだとしても、民間が動かないとナイトタイムエコノミーは活性化しない。
浅川 はい。観光庁を中心にさまざまなリサーチが行われていて、民間企業の観光コンテンツに予算をつける「最先端観光コンテンツインキュベーター事業」の募集も行われるなど、少しずつ具体的な動きが出てきている状況です。

夜の経済活動のシンボルであるナイトメイヤーの必要性

――ヨーロッパ各国に存在するナイトメイヤーも、ナイトタイムエコノミーの大きなカギだと思います。昨年12月には、渋谷区観光大使ナイトアンバサダーであるZeebra らが「東京ナイトメイヤー発足準備委員会」を立ち上げました。
浅川 ナイトメイヤーについてはロンドン、アムステルダムなどの例を研究している段階ですね。私個人としては、ナイトメイヤーは夜の経済活動のシンボルであり、その下に飲食、エンタメ、クラブ、文化施設など各ジャンルのエキスパートが組織を作って動くのが理想だと思っています。Zeebra さんには海外のナイトメイヤー・サミットにも参加し、アーティスト自らが働きかけ、行政を動かし、風営法の改正に至った日本の現状も伝えていただいています。渋谷区、千代田区、新宿区、豊島区などもナイトメイヤーの設立に動いているようなので、行政の意見や問題点を共有し、よりよい形で夜の経済活動につなげたいと思っています。DA PUMPのISSAさんが沖縄市のナイトメイヤーに就任したことも、新しい動きの1つですね。

――東京、大阪などの都市以外でもナイトタイムエコノミーの動きが始まっているということでしょうか?
浅川 そうですね。沖縄はもちろん、福岡、京都など、日本には特色のある街が数多くあります。北海道のニセコ町、長崎のハウステンボスなど、独自の魅力で多くのインバウンドを獲得している観光地もありますし、大都市のモデルをそのまま当てはめるのではなく、その土地に合ったスタイルで進めるべきではないでしょうか。ナイトタイムエコノミーは地方創生につながる施策でもあるので、各自治体、飲食店、劇場などの方々と連携を取って進めていきたいと思います。

“プチ・ラスベガス”のような施設を作ることが目標

――日本のクラブ・ダンスシーンをさらに充実させることも、魅力的なナイトライフにつながるのでは?
浅川 そう思います。20 年ほど前は、東京のクラブ・ディスコシーンはアジアのNO.1で、欧米の観光客からも“ファッション、音楽をリードする、エキゾチックで最先端の街”というイメージを持たれていた。ところが風営法の影響などもあって東京のクラブシーンが停滞している間に、韓国、シンガポール、中国などで次々と新しいシーンが生まれ、魅力的なクラブが数多く作られたことで、追い越されてしまった感もあります。

実際、欧米の有名DJ がアジアをツアーする場合、ソウル、シンガポール、上海、北京を回って、日本には来ないケースも多い。クラブシーンだけではなく、アーティストもそう。BTS(防弾少年団)をはじめ、韓国のエンタメは世界中に発信されていますが、残念ながら日本はそこまでいっていないので、我々は韓国などのやり方をもっと学ぶことも必要でしょうね。

――ナイトタイムエコノミーはエンタメにとっても大きな起爆剤になりそうですね。
浅川 我々がさらに注目しているのは2020年の先、2025 年です。IR 法案(特定統合観光施設整備法)ではカジノが注目されていますが、IR は複合観光施設のことで、そこにはクラブ、劇場、飲食店なども含まれます。大規模のコンベンションのさなか、カジノ、コンサート、ミュージカル、演芸などが体験できて、食事やお酒も楽しめる、いわば“プチ・ラスベガス”のような施設を作ることが目標ですね。ライブに関しては、日本のアーティストだけではなく、海外のアーティストを招聘するのもいいと思っています。たとえばK-POP の人気アーティストのライブは、アジア各国や世界中から観客が集まる。それもインバウンドであり、ナイトタイムエコノミーの拡大にもつながりますからね。

――それが実現すれば、日本のアーティストは海外勢と競争することになるのでは?
浅川 インターネットの世界では、すでに海外のアーティストとの競争に晒されています。もちろん我々も魅力的なコンテンツを作るための努力を続けますが、国と協力して日本のアーティストを海外に送り出す仕組みづくりにも取り組んでいきたいと思います。

(文/森朋之 写真/西岡義弘)

提供元: コンフィデンス

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