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アイドルが続々参戦、ロックフェスとの補完関係とは
NGT48が『ROCK IN JAPAN』に出演決定し話題に
同フェスは、サザンオールスターズ、奥田民生、Dragon Ash、松任谷由実ら日本を代表するアーティストの出演はもちろん、今年も多数のアイドルが登場。NGT48、欅坂46、鈴木愛理、BiSH、ももいろクローバーZ、でんぱ組.inc、チームしゃちほこ、あゆみくりかまき、モーニング娘。'18、アンジュルム、私立恵比寿中学と、アイドルだけでも大所帯だ。
音楽性・パフォーマンス性に個性のあるアイドルが重宝? ロックファンも好意的な傾向に
今回出演するのはアイドル界を代表する高い音楽性とパフォーマンス力に定評のあるグループたち。欅坂46はメッセージ性の高い「サイレントマジョリティー」、『NHK紅白歌合戦』の鬼気迫るパフォーマンスも話題を呼んだ「不協和音」などエッジの利いた楽曲と、大人社会への反抗やアンチテーゼといったシリアスな世界観で若者世代に人気を博す。『RIJ』では昨年に引き続いて最大キャパのGRASS STAGEに出演する。また、『ROCKIN’ON JAPAN』本誌2017年12月号でもセンター・平手友梨奈が単独表紙の“別冊”が付属し120分の超ロングインタビューを掲載した。
NGT48は、ラップ調から始まるミディアムテンポの「青春時計」で昨年デビュー。セカンドシングル「世界はどこまで青空なのか?」は荻野由佳が一心不乱にダンスを繰り広げるMVで泥臭く夢や希望を追いかける姿を表現するなど、アイドル然としない音楽性に定評がある。そのほか、“ポスト安室奈美恵”の呼び声もある鈴木愛理、“楽器を持たないパンクバンド”Bishといった音楽性・パフォーマンス性が評価されているアイドルが受け入れられる傾向にあるようだ。
フェス人気の拡大により差別化が困難に、Perfumeの登場以降アイドル出演の潮流
ほか、西川貴教主宰『イナズマロックフェス』にはバンドに混じって、過去AKB48、NMB48、ももいろクローバーZ、アイドリング!!!が出演するなど、ジャンルの垣根を超えた共演が行われてきた。また、5月にさいたまスーパーアリーナにて行われた『VIVA LA ROCK』は、セットをほぼそのまま使ったアイドルフェス『ビバラポップ!』を開催するという試みも行われている。
『RIJ』でもPerfumeの2008年の出演からはじまり、きゃりーぱみゅぱみゅが12年から出演。13年にはBABYMETALが登場。13年はでんぱ組.inc、9nine、アップアップガールズ(仮)、PASSPO☆、BiS、LinQらがステージに立ち、アイドルがロックフェスに出演するという潮流が生まれた。13年の新聞各紙で「例年に比べて目立っていたのがアイドル勢だ(中略)ジャンルを隔てる境界線が薄らぎ、様々な要素が拡散、混交する現在の音楽シーンを表していた」「アイドル夏フェス元年」などと評された。Perfumeのあ〜ちゃんは『RIJ2013』のステージで「ロックっていうものの捉え方が変わっているのかなって。(中略)夢とか、信じるものを、想い続けることなんじゃないかなって」と“ロック”再定義を提案していたのだ。
ロックフェスの認知拡大で現在は、夏だけでなく春から通年で様々なロックフェスが開催されている現状が続き、フェスの“差別化”が図れなくなっていた中で、アイドルの出演は一つのアクセントになったと言えそうだ。
その一方、『FUJI ROCK FESTIVAL』は洋楽志向の強いフェスでもあり、アイドルの出演は皆無というスタンスを貫き続けている。2016年にBABYMETALの出演が話題になったことがあった。しかしながら、もはやアイドルというより世界ではアーティストとして認知されているBEMYMETALは一口に“アイドル”と表現していい存在ではないかもしれない。この心理に、アイドルがロックフェスに出演が相次いでいる、現代のヒントが潜んでいる。
お互いが隠れ蓑&ファン層の補完になる相乗効果
例えば、実はアイドルを見たいが、ライブに「音楽フェスに行く」という大義名分の下に、堂々とアイドルを鑑賞しているケースもあるはず。もちろんアイドルファンがフェスでロックアーティストに魅了されるケースもあるはずで、お互いの存在が隠れ蓑・補完関係となっているのだ。
また、機材の転換とサウンドチェックに時間が掛かるバンド勢に比べて、基本的にアイドルは即、次のグループが出られるというメリットがある。アイドルは人数も多く、ステージの端から端まで走り回ってオーディエンスを煽ったり、盛り上げ方にも多様性が生まれる。「アイドルはロックじゃない」との声もあるが、音楽フェスにはアコースティックギター一本で歌うシンガーも、ヒップホップグループが出るのはもはや常識。アーティスト側はボーダーレスに互いを認め合い、音楽シーンの発展に寄与する風潮が生まれている。そもそも、もはやロックという言葉の定義すら変わってきているのかもしれない。