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「聖地巡礼」に変化? 推し活人口が増えても消費速度は爆上がり…ライト層取り込む新たな動き
「やはり聖地巡礼はメディア化がきっかけとなることが多いと思います。なかでも、7月にアニメ化され、SNSの踊ってみた動画でも話題の『しかのこのこのここしたんたん』(外部サイト)は人気。都立日野南高校を舞台にした作品で、公式情報では確認できてはいないのですが、東京都・日野市で実在するスポットが舞台となっているという情報もあり、話題となっています。ほかにも、あらかじめ聖地巡礼を構成に組み込むような作品も増えたように思いますし、さまざまな楽しみ方ができるのではないでしょうか」(コミックシーモア・松原さん)
こうして、新作とともに新たな聖地巡礼先も注目を集めているわけだが、もう一つ、面白い動きもある。誤解を恐れずに言えば、「聖地を創り出す」動きだ。
「人気の『薬屋のひとりごと』の推し旅プランの旅先は奈良です。作品自体はファンタジーで奈良が舞台なわけではないのですが、主人公が奈良にやってきたという設定で楽しめるようにしていて。これによって、利用者が奈良の歴史ある薬屋さんやお酒を知るきっかけを作ることができた。無理に聖地を創り出すのではなく、地域とエンタメをマッチングしたいという試みです」(JR東海・伊藤さん)
地域・ファン双方にメリットある聖地巡礼の拡大解釈、観光公害解消の一助にも
日の目を見なかったスポットを拾い上げることで地元に貢献できるほか、聖地のなかった地域にまでそれを広げることができる。また、自然発生的な聖地巡礼では地域が準備をすることは難しいが、事前に協力体制を敷くことで受け入れ態勢を作ることも可能。利用者も、単に決まった聖地に行くだけではなく、地域の新たな魅力を知りながらコンテンツをより深く楽しむことができる。聖地巡礼の拡大解釈ともいえるこの動きだが、多角的に見てもメリットは大きいのではないだろうか。
「また、昨今は観光の一極集中や観光公害も懸念されていますが、『推し旅』なら分散化も可能だと考えています。たとえば京都では、一般の旅行プランでは桜や紅葉、祭りの時期が最盛期で、時期をずらすことは難しい。でも聖地巡礼が目的であれば、混雑する時期や場所を避けることができます。混雑した時期に混雑した場所へ訪れるプランを設定すると、結局は利用者の方々が大変になるだけですし、楽しんでいただくことが一番の目的ですから」(JR東海・伊藤さん)
日本が誇る、アニメやマンガ、ゲームなどの膨大なコンテンツ。盛んになった聖地巡礼もさらに洗練かつ多様化し、コアファンもライト層も楽しめるものへと成熟している。『推し旅』はインバウンドへの対応はこれからだというが、「ニーズは大きい」とにらんで前向きに進めているよう。この夏は『きかんしゃトーマス』とリニアをコラボさせたプランや、先日アニメ最終回が話題になった『響け!ユーフォニアム3』のプランも展開中だ。また、コミックシーモアでも、9月には聖地巡礼にちなんだキャンペーンを予定。「140万冊と膨大な作品があるので、ぜひそこから巡礼先を探してみてください。感想はシーモア島に書き込んで盛り上がっていただけたら嬉しいです」と勧める。リアルでもコンテンツ上でも、今後さらなる多角化が生まれそうだ。
■JR東海『推し旅』(外部サイト)
■コミックシーモア(外部サイト)