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“日常系BL”はドラマ化が加速、社会の変化で作品性に変化も…男性同士の恋愛でバレンタインはどう描かれた?
地上波ドラマにBL作品が続々、一つの人気ジャンルに「これほど一般的に支持されるとは」
その一方で、エンタメ界では男性同士の恋愛、いわゆるBLは飛躍的に市民権を得つつある。中でも顕著なのが地上波ドラマで、今期は『おっさんずラブ リターンズ』、『BLドラマの主演になりました』(ともにテレビ朝日系)が放送中。ほかにも、『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』(フジテレビ系)など、BL要素が含まれた作品も。過去には、『きのう何食べた?』、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(ともにテレビ東京)、『体感予報』(MBS)などがヒットしており、もはやBLはマニアだけのものではなくなった。
BLカルチャーを牽引してきたのがマンガで、昨今はBLマンガを原作としたメディアミックスも数多い。早い段階からBL作品に注力してきた『コミックシーモア』のオリジナルコミックを制作しているソルマーレ編集部にて、BLコミックを編集している岩崎良子(※崎はたつざき)さんは、「BLがこれほどまでに一般的に支持されるとは想像もしませんでした」と実感を語る。
「ここ3〜4年は特に20代の新規読者が増え、コロナ禍にはBL作品の広告ヒットも目立ちました。かつては絵柄などに惹かれて広告をクリックしても、男性同士の恋愛だとわかると離脱されることも多かったのですが、今はそのまま購入される傾向にあります。ドラマがBL受容の素地となったところは大きいと思います」
かつての定説覆す“エロなしBL”、“日常系”が読者やドラマ化の垣根を取り払う
「たしかにBLといえば、ハードな性描写や耽美な世界観という先入観もかつては根強くあったかと思います。しかし昨今は、一般ジャンルと同じくヒューマンストーリーやラブコメ、家族愛を描いた作品もきちんと支持されています。いわば、少女マンガの延長でBLを楽しまれる方が増えているのだと思います」
こうした読者層の変化は、BLの作品性にも影響を与えているようだ。
「ひと昔前までのBLはバッドエンド、メリーバッドエンドといった作品が多数あり人気を博したのですが、現在はむしろ溺愛ものや多幸感に溢れたハッピーエンドが好まれる傾向。このトレンドは少女マンガとも共通しています。さらに、BL発祥のオメガバースやDom/Subユニバースといった特殊設定が少女マンガやTL(ティーンズラブ)にも登場するなど、ジャンル同士が影響し合ってマンガ業界を盛り上げてくれているのを感じます」
いわゆる“エロなしBL”が増えているのも、地上波ドラマ原作に重宝される要因と言えるだろう。
「BL作品にはファンタジーも多いですが、ドラマ化されるのは日常系が多いですね。ごく当たり前の日常で繰り広げられる恋愛模様だから、“ザ・BL”という先入観なしに楽しむことができる上に、男性同士という葛藤要素が加わることでより切なさを描けるのがBL原作の魅力だと思います」
昨今は『光が死んだ夏』(このマンガがすごい!2023オトコ編1位)や『消えた初恋』(このマンガがすごい!2021オンナ編9位)など、BLではない一般レーベルでも男性同士の恋愛をテーマにした作品が増えている。
「『BLコーナーに置くと読者層が限られる』といった販売戦略から、一般レーベルで出されるケースもあると思います。ただこうした作品が高く評価されていることからも、良作であれば恋愛のジェンダーにはこだわらない読者は確実に増えています」