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“日常系BL”はドラマ化が加速、社会の変化で作品性に変化も…男性同士の恋愛でバレンタインはどう描かれた?

BL界でのバレンタインの描かれ方は? いまだ「ためらい」あれど変化も

 日常で繰り広げられる恋愛ストーリーを描く上で、バレンタインは重要なイベントであり、特に少女マンガでは片思いの相手にチョコを渡して告白するシーンは定番の1つ。では少女マンガファンに支持され、裾野を広げつつあるBL作品において、バレンタインはどのように描かれているのか。

 「バレンタインはBLでも登場しますが、恋人同士が思いを深め合うカップルイベントとして描かれることが多いですね。あるいは、男性の魅力を表現するイベントとして描かれることも。弊社BLレーベル<Ficus>作品の『バットエンドじゃ終われない』では、主人公の想い人が女性からたくさん贈り物をもらう描写で、彼のモテ度を表していました。少女マンガのように“チョコを渡して告白”というシーンは、たとえBLがフィクションでもリアリティを表現できないのか、作家さんも描くのをためらうのかもしれません」

 同レーベル作品の『もっと!僕をダメにする38歳。』では、主人公の回想で「男が男にチョコなんてキモい」と拒否されるシーンが描かれており、やはりバレンタイン=女性のイベントを脱しきれていない描写も出てくる。いかに多様性が叫ばれても、男女の恋愛にはない葛藤や切なさが避けられないのはBLの宿命か…。だが、同作の現在のシーンでは、主人公が男性にあげるチョコを手作りするのを寮母が応援し、『時代は変ったわねぇ』と発言する場面も登場。少しずつ、変化は起こっているのだろうか。

 「たしかに、一昔前ほど“葛藤”が重く描かれることは少なくなりました。やはり著名人のカミングアウトや、社会の変化も影響しているのでしょう。昨今は、家族に同性の恋人を紹介するシーンもよく描かれます。また、現代の日本より少しだけ未来を舞台に、男性同士のウェディングや夫夫(ふうふ)の日常を描く作品も増えています」

『きのう何食べた?』で同性同士の“葛藤”知った人も、良質な作品でよりよい社会に…「BL業界すべての願い」

 あえて未来を舞台とするのは、周知のとおり日本ではまだ同性婚が認められていないから。多様性が叫ばれながら、たびたび政治家のLGBTQ+差別発言も問題となる。そうした現実の一歩先を描くエンタメが、社会にインパクトを与えることはあるだろうか。

 「もちろんBLはフィクションであり、リアルな同性同士の恋愛事情とは違うことは理解しています。それでもなお、互いを思い合う同性同士の存在を知ることは受容の大きな一歩だと思います。中でも幅広いファンをつかんでいる『きのう何食べた?』のシロさん・ケンジさんの葛藤に触れて、同性婚の実現を応援するようになった方は多いと聞きます。作品が好きになれば好きになるほど、登場人物たちに幸せになってほしいと思うのがファン心理。良質な作品を届けることでよりよい社会に進んでいってほしいというのは、BL業界すべての願いですね」

 BLファンの多くは女性、つまり主人公たちとは異なる立場だ。少数者が生きづらい社会を変えるのは、そうした非当事者1人1人の小さな願いかもしれない。BL作品は確実に、性的指向に捉われず誰もが幸せを追求できる社会を実現する穏やかなメッセージになっているはず。いずれ、BL作品でのバレンタインデーの描かれ方は変わっていき、世の2月14日を変化させていくかもしれない。

(文:児玉澄子)

■コミックシーモア<BL(ボーイズラブ)>(外部サイト) 
■コミックシーモア オリジナルBLレーベル<Ficus(フィカス)>(外部サイト)
■『バットエンドじゃ終われない』(外部サイト) 
■『もっと!僕をダメにする38歳。』(外部サイト) 

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