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ソース焼きそばの発祥=関西はウソ? 実は知られていない定番ストリートフードの成り立ちと危機
数少ない焼きそば専門店 立ちはだかる“後継者問題”「高齢化による製麺所の廃業も各地で相次いでいる」
「これも本書で触れた『関税自主権からの回復』と『小麦粉の安定供給』の歴史に関係していると思われます。この一帯の専門店はとにかく単価が安くて、300円くらいで焼きそばが食べられる。ようは駄菓子屋の延長のようなお店が多いんです。特徴は肉がほぼ入ってなくて、主な具はキャベツと揚げ玉。プリミティブな焼きそばを味わうなら、ぜひ訪れてほしいエリアです」
とは言え、こうした店の多くは遠からず姿を消していくであろうと塩崎氏は言う。
「やはり後継者問題ですね。このあたりはおばちゃんが1人で何十年も切り盛りしているお店が多いんですが、自分の子どもに継がせるかと言うと、言葉を濁される方が多いんです。専門店もさることながら、高齢化による製麺所の廃業も各地で相次いでいます。深蒸し麺のソース焼きそばにこだわっておられるデンキヤホールさんでも『今の仕入先が廃業したら……』と危機感を抱いていらっしゃいました」
ソース焼きそばという日本の食文化を守るためには、食べる人のパイを広げなければいけないと塩崎氏は主張する。
「ポテンシャルは十分にあると思うんです。特に可能性を感じるのがインバウンドですね。浅草にはコロナが明けて外国人観光客がたくさん戻ってきていますし、『浅草で焼きそばを食べよう』という動きが盛り上がれば、お店はもちろん製麺所さんにも経済効果が大きいはず。さらに浅草から東武鉄道に乗って、北関東焼きそば文化圏まで足を伸ばす人が増えたら。そのためのお手伝いは僕もぜひしたいと思っています」
ちなみに日系人の多いブラジルでは焼きそばは「Yakissoba」として定着しており、屋台のほか「Yakissobateria」という専門店も多いという。ソースの焦げる香ばしい匂いや甘くスパイシーな味わいは、国境を超えて愛される魅力に満ちている。世界に誇るジャパニーズフード・ソース焼きそばの奥深さを本書で改めて確かめてほしい。
(取材・文/児玉澄子)