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“からしマヨ”と“斬新フレーバー”で2強『U.F.O.』『ペヤング』に対抗 誕生から四半世紀『一平ちゃん』のあくなき挑戦
“香ばしさ”と“濃さ”へのこだわりと革新的な『からしマヨ』で大ヒット
「『一平ちゃん』発売当時、即席麺業界では、1.5倍や2.0倍などいわゆる大盛りブームだったんです。そんな流れのなかで、量ではなく質を追求しようと、味と香りの“濃さ”にこだわったカップラーメンの『一平ちゃん』がヒットしたことを受け、カップ焼そばも質の部分でお客さんに満足していただこうと、開発したのが、『明星 一平ちゃん夜店の焼そば』でした」(原さん/以下同)
当時、すでにカップ焼そば業界には『日清焼きそばU.F.O.』(1976年発売)、『ペヤングソースやきそば』(1975年発売)という昭和生まれの2強が君臨。明星食品も趣向を凝らし、さまざまなカップ焼そばを開発していたが、なかなかヒット作を送り出せずにいたなかで誕生した『明星 一平ちゃん夜店の焼そば』は、それらに迫る大ヒットを記録する。
「ネーミングのもとになっている、“夜店”で食べるようなスパイスの利いた香りと、麺にソースを練りこみ“香ばしさ”と“濃い”味わいを表現できたことが大きかったと思います」
他社とは違うおいしさを追求し、差別化をはかる。焼きそば本体の味わいに加え、今では定番化している『からしマヨネーズ』をトッピングとして標準装備したことも大きかった。
「当時の開発スタッフが大阪のお好み焼き屋さんで、若い人たちが当たり前のように焼そばにマヨネーズをかけて食べている光景を見たときには驚愕したと言います。少なくとも平成初期まで、弊社が本社を置く関東圏では、焼きそばにマヨネーズという組み合わせが一般的ではなかったと思いますが、そこで拒否感を覚えるのではなく、むしろ『自分も試してみよう!』と開発者魂を揺さぶられたそうです。『からしマヨネーズ』のアイデアは、開発スタッフが学生時代にアルバイトしていた喫茶店でサンドイッチにからしマヨネーズを使っていたことから着想したものでした」
『明星 一平ちゃん夜店の焼そば』の原点にあった未知の味覚への貪欲な姿勢。そのあくなき探究心は歴代の開発スタッフたちに脈々と受け継がれ、その後の斬新なフレーバーへと繋がっていく。
斬新なフレーバー誕生の裏にSNS時代と食の多様化
「10周年を迎えた2005年、しょうゆベースの『限定新味』という形で初めてソース以外の味を発売しました。10周年記念の第2弾として今につながる『豚しお味』(のちに『塩だれ味』にリニューアル)を発売しましたが、その後も積極的に他の味を展開していたわけではありませんでした」
転機が訪れたのは2013年。「ソース」「塩だれ」という定番商品以外で初めて発売した「わさびマヨ醤油味」のヒットだったという。
「定番以外の商品の市場が見えたのが、『わさびマヨ醤油味』のヒットでした。このころ、即席麺の世界だけなく、食に対してお客さんの嗜好の変化があり、多様性を認める時代になってきた。そんな背景もあって、弊社でもいわゆる“スポット商品”を発売する頻度が増え、即席麺の業界全体でも、いろいなフレーバーを取り入れていこうという流れになっていきました」
また、SNSを中心に個人がさまざまな情報を発信できることになった時代背景も、さまざまな種類のフレーバーを出す後押しになったという。
「この頃にはSNSがだいぶ普及しており、ネットでさまざまな商品が取り上げられて、話題になる時代になりました。即席麺だけでなく、あらゆる企業が、SNSでどう話題を作っていくか考えていたと思います。私たちも、さまざまなフレーバーを施した“スポット商品”を通じて、『明星 一平ちゃん夜店の焼そば』をより知っていただく。そんな狙いもありました」
「新しい味覚を求めてあらゆるフード業界からヒントを集めていた中で、開発スタッフが着目したのがお菓子業界。学生さんもターゲットにしていますので、その人たちが好むものはどういうものなのか。結構お菓子を参考にしていたんですね。当時、人気を博していたチョコがけポテトチップスなどの"甘さとしょっぱさの絶妙なマリアージュ"が、焼そばにも応用できるのでは? と考えて開発されたのが『チョコソース味』でした。この商品は、お客さんに納得していただけるものができるまで相当苦戦し、たくさん試作品を作り、通常のラインアップの商品よりも長い期間をかけて開発しました。発売する限りは、味もきちんと追求するというのはどんな商品でも変わりません」
ロングセラーゆえの苦悩 “鮮度感”をどう保っていけるか
「発売から25年以上も経過するブランドなので、“鮮度感”を保っていかないと時代遅れになってしまう。常に時代の変化を捉えながら、それに適応した商品やプロモーションを継続してやっていかないといけないなと思います」
「ロングセラー商品って難しくて、味をちょっと変えただけでも『前の味に戻して』と言われることもある。そこをどう工夫していくか。新しいことをやっていこうという姿勢は、『一平ちゃん』に限らず、うちの開発スタッフはみんな持っています。特に即席麺業界は、新商品の数が本当に多いので、今までやってきたことにあぐらをかいていたら、すぐにお客さんに支持されなくなってしまう。常に新しいことに挑戦していくということは、これからもやっていかないといけないのかなと思います。今後も麺、ソース、かやくはもちろん、『一平ちゃん』のアイデンティティともいえる『マヨ』のうまみにもとことんこだわり、また新フレーバーの開発にも邁進していきたいと思います」
発売当時に掲げた「平成で一番」の目標だが、「まだ実現していません」と原さん。ちなみに日本トレンドリサーチが調査した2020年度「カップ焼きそば満足度ランキング」では総合1位を獲得している。「令和こそは不動の一番」を目指して、『明星 一平ちゃん夜店の焼そば』の挑戦はまだまだ終わらない。
取材・文/児玉澄子