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昭和平成をギリギリ生き抜いたタキシードサム、“名無しのペンギン”時代から「もったいない」精神で何度も復活
若者世代が「レトロ可愛い」と再注目、グッズ第1号は昭和感ただよう風鈴
そんなタキシードサムのグッズ第一号は、まさに昭和感ただよう風鈴(1975年5月発売)。平面イラストではなく立体の商品から展開が始まったキャラクターは、サンリオでも珍しいケースだったという。
「この風鈴がとてもよく売れたことから、その後もマグカップやエッグスタンドなど数々の商品が開発されました。釣り鐘型にデフォルメされたペンギンというデザインが、立体商品にしやすかったのもあったと思います」(担当デザイナー・武井千亜希さん)
とはいえ、当時はまだ名前はついておらず、商品カタログにも「風鈴 ペンギン」としか書かれていなかった。
「1982年から、ポーチやトートバッグといった平面グッズの展開が始まりました。それに伴い、キャラクターとして、タキシードサムと命名されました」
バブル目前の日本経済の影響も? タキシードサムをかたどった電化製品が話題に
それまで一般家庭では電電公社(現・NTT)からレンタルされる電話機(黒電話など)しか使用が許可されていなかったが、1985年の通信民営化によって消費者が自由に電話機を選べるようになった。多彩なデザインの電話機が普及していくのもこの頃のことだ。
「当時はハローキティの電話などもありましたね。キャラクターグッズとしてはやや高額ながら、話題になりました」
ファミリー層に需要があったという、こうした電化製品。まさに、バブルを目前に控えていた当時、日本経済の勢いがタキシードサムのグッズからも垣間見えるようだ。
長い不遇の時代を経て再び脚光、80年代ブームの波に乗る
「ところがその翌年の1987年には、ランキング圏外に…。理由ははっきりとはわからないのですが、1980年代は多くのキャラクターが生まれていますので、新人の勢いに押されたところもあったのかなと思います。どんなに人気があっても、ずっと売れ続けるのは難しいものです」
その後も長らく不遇の時代が続くが、2010年頃よりレコードや純喫茶、フィルムカメラなどのレトロブームが到来。この波に乗るようにタキシードサムも徐々に息を吹き返す。
「80年代がブームになったこともあり、実験的に当時のキャラクターを掘り起こそうという動きがありました。2014年にはタキシードサムのほか、ポチャッコ、あひるのペックルによる『ぽちゃキャラデザインシリーズ』という商品展開を行っています。勢いのあるキャラクターに押されてしまうと商品も少なくなってしまう宿命ですが、そこで終わらせてしまうのはもったいないし、何かきっかけがあれば再び脚光を浴びることもある。発売当時子どもだったユーザーが現在いくつで、どんなことをしているか…。そんなことを想像しつつ、時代に合わせたデザインは常に試行錯誤しています」