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“冷やし麺市場”に地殻変動? 「冷やしラーメン」で“定番”に挑むコンビニ各社の勝算は
「冷たいラーメン」続々…進化する冷やし麺、レンチンで“冷たさ”表現する新商品も
今年は早くも3月に、日本各地で夏日を記録。折しもその3月1日にニチレイフーズから新発売されたのが、「レンジでチンしても冷たいまま」という画期的な冷凍食品の『冷やし中華』だった。
そもそも鍋1つで完結する温かい麺に比べて、自宅で冷たい麺を作るのは「茹でる→湯切り→冷やして〆る」など工程が多く、洗い物も増えるため、昨今ますます高まる“時短志向”にフィットしなくなってきた。とは言え、コロナ禍でおうちごはんの需要は高まっており、何より暑い日にはさっぱり冷たい麺が食べたくなるものだ。
手間をかけず美味しく味わえるメニューといえば、やはりコンビニ商品だろう。夏に向けて各社から続々と冷やし麺の新商品が発売されている。
ファミリーマートでは、『極うま中華』シリーズから『チャーシュー3枚!大盛冷し醤油ラーメン』、セブンイレブンでは『焼きあごだし香る冷し塩ラーメン』など、ローソンでは博多一双監修『冷し豚骨つけ麺』が3〜4月にかけて新登場した。
いずれも趣向を凝らしたメニューだが、気になるのは“冷やしラーメン”であって、“冷やし中華”ではないこと。もちろん各社ともに、この夏も冷し中華は定番商品として店頭に並ぶ。とくにファミリーマートでは、この5月に冷やし中華を含む『冷し麺メニュー9商品』のリニューアルを謳っている。
奇をてらったことが許されない「冷やし中華」、「改善点をすくい上げるのもひと苦労…」
違いは麺もさることながら、「冷やし中華」とはまったく別物と言えるのがラーメン的なアプローチ(旨味、コク)で創出されたスープだ。
一方で「冷やし中華」は、スープというよりも、酢醤油ベースあるいは芝麻醤ベースのタレで食べるのが基本だろう。さっぱりした味わいや具材の彩り、ツルツルとした喉越しが、食欲が減退しがちな酷暑に歓迎されてきた。
「爽やかさ」が求められるが故に、ラーメンのようにパワフルでインパクトのあるスープが追求されることなく、大きな進化のないまま夏になるたびに粛々と登場してきた。スープへの熱意とともにラーメンが極度に高度化した昨今、それが「冷やし中華」が微妙な立ち位置にある理由なのかもしれない。
長年、鈍化していた“冷やし麺市場”だからこそ、ファミリーマートはこの5月に『冷し中華』3品目のリニューアルを発表したという。同社担当者は、「冷し麺の開発は、ほかのお弁当商品に比べてもハードルが高い」と語るが、トレンドが「冷やしラーメン」にある今だからこそ、開発に勝機を賭けた。これが成功すれば、コンビニ商戦が激化する昨今、同社への来店動機に繋がるからだ。
「リニューアルにあたっては、誰もが認知している“ザ・冷し中華”の味をブラすことなく、去年の冷し中華よりもおいしいことを目指しました。しかしこれだけ定番の味が定着しているだけに、改善点をすくい上げるだけでもなかなか大変なことでした」(ファミリーマート/商品本部、西村裕美子氏)
冷やし中華は「こういうのでいいんだよ、こういうので」という立ち位置のメニューであり、過度な期待をする人は少ないという。それでも夏になると、ふと食べたくなる。手軽さで言えばコンビニがもっとも手に取りやすいが、食の選択肢が広がった昨今は、一度食べてガッカリしたら二度と手に取ってもらえない。
手軽さだけでなく、味もシビアに試されるようになったコンビニの開発担当者の苦労が集約されたメニュー。それが現在の冷やし中華の姿だと言えるだろう。
シビアに味を品評されるようになったコンビニ麺、最大の発明は「時間が経ってもおいしい」
さらにコンビニの冷し麺は、「流水」や「レンチン」といったプロセスもなく、パッケージを開ければすぐに食べられる圧倒的な手軽さが魅力だ。通常、茹でてから時間が経った麺は、伸びたりボソボソしたりと食感が劣化するものだが、この課題をクリアしたのがコンビニの冷やし麺の最大の“発明”と言えるだろう。
今年のファミリーマートの冷やし中華は、「もちもち感を向上させた生地を、つるみを出した生地で挟んだ3層構造」にすることによって、全体の食感を向上。北海道産小麦を中心とした配合にこだわり、コシのある弾力とつるみを兼ね備えた中華麺に仕上げている。
スープには香り豊かな醤油で先味を、米酢やレモン果汁で爽やかな酸味を、そして肉付きのいい鶏ガラから抽出したチキンエキスで後味の旨味を強化。定番中の定番の味の「おいしい」の追求が、今年の冷やし中華には凝縮されているようだ。
気象庁発表の3ヵ月予報によると、今年の6〜8月は平年より気温が高くなるという。ラーメンマニアの中には「冷やし中華は邪道」と言ってはばからない向きもあるが、かつて以上にレベルアップした冷やし中華の存在感に、目が離せない。