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日本のソウルフードに起きた“タレ革命” 四半世紀かけ「納豆」に多様性をもたらし続ける理由

 『金のつぶ』をはじめ、『くめ納豆』『なっとういち』といった数多の納豆ブランドを展開している株式会社Mizkan(以下ミツカン)。1997年に納豆市場へ参入し、今年で25周年を迎える。「納豆はたれで選ぶ時代へ」というCMコピーに象徴されるように、たまご醤油たれ、梅風味黒酢たれ、焼肉タレなど、斬新なタレを開発し、納豆に多様性を持たせシリーズ展開している。そんな同社の納豆事業スタートのきっかけから『金のつぶ』シリーズの展開、斬新なタレ開発など、これまでの取り組みについて、食品企画部・食品企画2課の津野友也さんに聞いた。

構想3年で納豆事業参入 「おいしい」は当然、それ以上の価値を求めて誕生した『金のつぶ』

 江戸中期の1804年(文化元年)創業という長い歴史を持つミツカン。1964年には『味ぽん』、1982年に混ぜ込みふりかけの『おむすび山』、1988年に『追いがつおつゆ』などを発売し、調味料の分野において数多くのヒット商品を生み出してきた。同社が納豆事業へと本格参入したのは1997年のことだ。

「平成以降、事業の一層の多角化を推進していく中、その取り組みの一つとして納豆事業へと本格参入しました。納豆や豆腐の原料となる大豆は、米と並ぶ日本の伝統的食文化であり、特に納豆は食酢醸造で培った菌の育種や発酵技術が生かせる分野と考えたためです」(津野さん/以下同)

 最初の構想から商品開発、発売まで約3年の歳月をかけて、1998年、納豆事業の最初のブランド『金のつぶ』が誕生した。
「『金のつぶ』は“納豆に新しい価値を生み出す”ことをコンセプトとし、納豆をたれの味で選ぶ楽しみを提案したり、使いにくい容器を改良したりと、“納豆の当たり前”を打ち破るような開発を行なっております。美味しいのは当然のことながら、お客様の不便・不満の解消や“納豆で食卓が楽しくなる”ような、驚きや楽しさなど新しい価値をもった商品開発を心がけております」

 その言葉通り、食後の口臭を気にせず食べることができる『におわなっとう』や、カルシウムが骨になるのを助ける骨たんぱく質(オステオカルシン)の働きを高める工夫をした『ほね元気』など、従来の納豆に+αの機能性を持たせた画期的な商品を続々と送り出し、納豆事業に新たな旋風を巻き起こしている。

フタやタレ、食感……納豆を選ぶ選択肢の広がりを創造

 『金のつぶ』では、袋を切らずに押すだけでタレ、からしが出せる「押すだけプシュッ!と」や、フタを割ってタレをかけられる「パキッ!とたれ」など、容器の使いやすさや食べやすさにも積極的に取り組み、多くの消費者に受け入れられている。津野さんによると、『押すだけプシュッ!と』は発売から約1年で約1億9000万食、『パキッ!とたれ』は発売から約1年で約2億食を突破し、どちらもタレ袋を開ける煩わしさを解消できると好評を得た。特に『パキッ!とたれ』は、割った時のパキッ音と、その行為が楽しいという声も寄せられている。

 タレの味にアレンジを加えた商品も多数発売されているが、その最初の商品は2006年発売の『金のつぶ たれたっぷり!たまご醤油たれ』だ。『金のつぶ』ブランドがスタートした当初、納豆は醤油やだしをベースとしたタレが主流だった。そんな中、新規納豆の開発に取り組み、社内コンペから出てきたのが「たまご醤油たれ」だったという。
 卵は、納豆のトッピングとして不動の人気を誇る食材であることから、以前から商品化のアイデアはあがっていた。日本人なら誰でもなじみのある食べ方であり、相性を考えたときに、懐かしさ・なじみ・ほっとするぬくもりが感じられる最強の組合せになるという思いのもと、企画開発も進んだ。

 また、同時期、卵かけご飯ブームとなり、専用醤油の発売や専門店の開店、卵を割ってホイップする機械など、全国的にブームも起こっていた。そんな中、この「たまご醤油たれ」は初代発売までに数年、3代目の現在の商品を発売するまでに延べ約10年という長い歳月を要しているそうだ。

 卵は生の状態でタレに使用することができないため普通に加熱殺菌すると卵が固まってしまう。そのため、固まらない絶妙な加熱条件を見出すのに苦労したという。試行錯誤の末、納豆業界でも目新しい商品として初代「たまご醤油たれ」が2006年に登場。当初こそヒットしたものの、後に「たまごの風味がしない」「塩味が強い」といった消費者からの指摘を受けて伸び悩むことに…。

 様々な声を受けて、2011年の二代目『金のつぶ たま〜ごたれ』は、タレを2種類(濃厚なたまごのタレ、だし醤油のタレ)入れ、よりたまごの風味を味わえる納豆へと改良。当時は二人世帯の増加を背景に、3個入から2個入に変更するなどのマイナーチェンジも行なったが、同商品でも売り伸ばしに悩むことになる。

 消費者の声に耳を傾け、初期コンセプトだった『たまごかけご飯の様な風味と食感』に立ち戻ろうと再検討した結果、生まれたのが現在の『たまご醤油たれ』だ。納豆のタレは5〜6gが主流の中、10gのタレが入った商品も作れるよう、生産ラインの調整も苦労したという。

「タレだけで、たまごかけ納豆ご飯を楽しめるように、たまごの風味がすることはもちろん、本来の卵かけご飯に近づけるためにタレをたっぷり10g使用。食べたときにお茶碗からかきこめるような食感にこだわっています」

 この『たまご醤油たれ』を、津野さんは「変革と挑戦を繰り返してきた、mizkanらしい商品」だと表現している。さらに同社では、豆と発酵の組合せで新しい納豆の世界を作ったり、調味料メーカーとして培った技術でタレのおいしさの世界を広げたりと「新しい価値を持った商品開発」を大切にしつつ、ユニークなタレを開発。2020年発売の『ご飯に合う濃厚タレシリーズ』も、今までにない発想による商品として注目された。

「『金のつぶ ご飯に合う 濃厚焼肉タレで食べる旨〜い極小粒納豆』は、今までの納豆にないタレの味わいを組み合わせることで、『納豆なのにまるで焼肉のような味わい』を楽しんでいただける納豆として開発しました。そこには、家庭で召し上がる際に話題にしていただきたい、食卓に驚きや笑顔を提供したいという思いが詰まっています」

健康ニーズで納豆市場は5年間成長 食酢・味ぽんに続き歴史を重ねていきたい

 納豆は日本人のソウルフードであり、日々の食卓には欠かせない存在。近年はコロナ禍による免疫力向上や食生活の見直しなどの要因もあり、人々の納豆需要はますます高まっているという。この5年間(2017〜2021年)でみても、年平均成長率101.5%と、納豆市場の成長は続いている。ミツカン以外のメーカーも、様々な味わいのタレが発売し、納豆を楽しむ選択肢も拡大。

 同社の企業理念として、2つの原点がある。1つは「買う身になって まごころこめて よい品を」、もう1つは「脚下照顧に基づく現状否認の実行」。これらは納豆事業を展開する上でも非常に大切な理念だと津野さんは強調する。

「1つ目は、その言葉通り、ミツカンの『お客さまを第一に考えた品質向上』の精神を表したもの。もう2つ目は、ミツカンの“限りない革新”の精神を表したものです。言い換えると、『自分自身と事実を素直に謙虚に見つめ、その上で自分自身を変えていく』ということ。先を読み『変革と挑戦』を繰り返してきたミツカンの歴史は、この原点から流れています。この2つの原点に基づき、常に生活者の声に耳を傾け、商品開発をしていくことを大事にしています」

 また、これまで納豆事業を継続している理由としては、「食酢醸造で培った菌の育種や発酵技術が活かせる分野であり、調味料メーカーとして培った味づくりの技術を活かせるミツカンらしい商品開発ができる分野だと考えています」と『変革と挑戦』の精神が伺える。

「それらの技術を活かし、『たまご醤油』『とろっ豆』のように今までにないユニークさをもった商品で納豆業界を盛り上げていくとともに、まごころ込めた商品をお届けすることでお客様に喜んでいただきたい。そして、これからも幅広いお客様に愛される納豆として、食酢や味ぽんなどのように歴史を積み重ねていきたいと思います」

 参入から25年、今や「味ぽん」などと並ぶ社のメイン事業へと成長した納豆。これからも同社らしいユニークな商品開発に期待せずにはいられない。

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