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40周年を迎えた『チーズ鱈』 コロナ禍でも成長を続ける“おつまみ”の役割とその変化の変遷

  おつまみや乾燥珍味を主とした食品メーカーで、さきいか、あたりめ、イカフライ、ねり梅など数多くの商品を展開している「なとり」。中でも主力の『チーズ鱈』は、幅広い層から愛され続け、今年発売40周年を迎えた。チーズと鱈のすり身を合わせた定番中の定番だが、開発時には苦労もあったという。いまだ進化をしている『チーズ鱈』のこだわりや誕生秘話、つまみ商品にかける思いなどを、同社マーケティングR&D開発本部・小寺美帆さんに聞いた。

当初は“イカ”で試みるも見事に失敗…チーズを鱈でサンドする大胆な発想は80年代グルメブーム到来が契機に

 同社の前身となる(株)名取商会は、1948年に発足した。当初は佃煮や切りいか、桜でんぶなどの製造・販売を行なっていたが、1955年に“するめいか”をのして甘く味付けした『東京焼いか』がヒット。それを機に“珍味”と呼ばれる水産物の加工製造事業へと参入することに。1961年には、昆布と水あめを煮詰めた『純コンブ飴』の製造・販売を開始した。

「珍味とは、本来は地域古来の珍しい食物を指し、このわた、からすみ、うになどが有名です。それを弊社では『海産物の風味をそのまま生かして長持ちする食品、そのまま食べられる食品』を海産珍味と定義していました。1980年代に始まったグルメブーム以降、珍味が加工食品市場に定着し、“珍味の王様”と言われるイカを加工したさきいか、あたりめをはじめ、いか姿揚げ、つまみ鱈など多種多様な商品が販売されていました」(マーケティングR&D開発本部・小寺美帆さん/以下同)

 珍味の種類が増える中、1981年に「常温で流通でき、いつでもどこでもつまんで食べられるもの」を「おつまみ」として定義した“おつまみコンセプト”の商品第1号として『チーズ鱈』が誕生する。

 同社は1960年代にチーズを使った製品を販売したことがあるが、その頃は「まだ西欧的な味わいを受け入れる土壌が根付いていなかった」という。しかし80年代に入ると、日本人のライフスタイルや食生活が変わり、「『少量でもいいから美味しいものを食べたい』というニーズが一般化して、食の洋風化が進んでいきました」。この絶妙のタイミングで『チーズ鱈』は登場したのだ。

 実はそれ以前に、同社では『チーズいか』の開発を手掛けていた。しかし「イカの水分がチーズに移ってしまったり、常温保存するために使用していた脱酸素剤でイカが赤く変色してしまったり…」とうまくいかず、やむなく『チーズいか』の開発を断念。そこで、イカに変わる素材として鱈に着目する。
「珍味としてなじみのある原材料の一つだった鱈は、水分が少なくクセがないため、チーズとの相性も良かったのです。鱈シートでチーズを挟み、圧着して『チーズ鱈』にしていましたが、どのくらいの温度でどれくらいの時間、どれだけの圧力をかければいいかなど、テストを繰り返しました」

“全く新しいおつまみ”故の不安も…大ヒットに社内は驚愕 40年経過しても常に研鑽忘れず

  • 1982年発売当初の『チーズ鱈』

    1982年発売当初の『チーズ鱈』

 試行錯誤の末に『チーズ鱈』は完成。”それまでにない、全く新しいおつまみ商品”として1982年に発売された。
「2本入りのサンプルをスーパーや小売店に配ったり、流通の担当者を集めて試食会を開いたりして、まずは食べてもらう形で商品を売り込みました。反応はとても良く、相次いで即採用されました。原料がいかではなく鱈であったことから販売量を低く予想していましたが、予想とは裏腹に飛ぶように売れ出しました。三菱総合研究所が発表する『成長消費財トップ20』では、新商品部門のトップになりました」

 発売してすぐヒット商品となったが、その後も長い年月の中で、製法などにいくつかの変遷が見られる。たとえば発売当初は、乳業メーカーのプロセスチーズを使用していたが、「現在は国内外からナチュラルチーズを調達し、弊社でブレンドしてプロセスチーズに加工。それを弊社製造の鱈のシートで挟んでいます」と、味わいの根幹ともいえるチーズへひと手間加えるこだわりが。複数のナチュラルチーズをブレンドすることで、様々な風味の『チーズ鱈』を味わえようになったという。

 また形状もニーズに合わせて変化が見られる。発売当初は細長いタイプの「松葉型」のみだったのが、現在はそれより少し太くて短い「短冊型」、正方形の「ビット型」の3種類を展開。
「短冊形は、松葉型に比べてチーズを厚くしているので、チーズの旨み・風味をより味わってもらう商品に主に使用しています。ビット型は、一口サイズで食べやすく、他のチーズ鱈とのアソートとして味・サイズのバリエーションを楽しむ商品に主に使用しています」

コロナ禍で高まる「充実志向」 おつまみは“楽しみ”と“癒し”を与える存在に

 発売当初は“常温流通”が当たり前だったという『チーズ鱈』。しかし2006年、なとりは消費者の多種多様なニーズへ対応すべく、“チルドおつまみ(要冷蔵のおつまみ)”という新ジャンルの開拓にも注力。常温製品よりもなめらかな食感のチルド『チーズ鱈』を発売するなど、消費者の趣味嗜好や需要の変化などに合わせた商品展開も行なっている。

 現在では『チーズ好きが食べるおいしいチーズ鱈』『一度は食べていただきたい贅沢なチーズ鱈』など、原料・製法にこだわった商品も含め、幅広いラインナップを販売。『チーズ鱈』シリーズを含む酪農加工製品は、順調に売上を伸ばしており、売上全体の約20%を占めている。
  • 『一度は食べていただきたい贅沢なチーズ鱈』

    『一度は食べていただきたい贅沢なチーズ鱈』

  • 『チーズ好きが食べるおいしいチーズ鱈』

    『チーズ好きが食べるおいしいチーズ鱈』

 同社では、「ひとつまみの幸せ。」というコーポレートメッセージを掲げ、日々おつまみ、珍味を開発している。
「弊社は、楽しさの演出に欠かせない“おつまみ”をお客様にお届けすることを使命としています。その背景には、創業時から受け継がれている“あくなき食への探求心”に基づいた『ものづくりへの情熱』があります」

 消費者のニーズにこたえるべく、自社でアンケート調査も定期的に行なっているといい「おつまみはお酒のお供・おやつに欠かせないことはもちろん、楽しみや気分転換、癒しをくれる存在であるとのお声をいただいています。これらのニーズに応えながら、品質にこだわり続け、新たな食シーンに合わせた商品開発を行なっていきたいと思っています」と語っている。

 元々はお酒を飲む人のためのものだった「おつまみ」だが、今やお酒を飲まない人や子供にまで幅広い支持を得ているのは、『チーズ鱈』の功績と言っても過言ではないだろう。コロナ禍が長期化し、ますますおうち時間を積極的に楽しもうとする“充実志向”が高まる昨今。『チーズ鱈』をはじめとする同社の商品群は、楽しみや癒しをくれる存在として、もはや私たちの生活に欠かせないものになっている。

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