• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
ORICON NEWS

「大阪で生まれた女」のBORO、67年間の病との闘い「地獄を受け入れたら希望の扉は開ける」

BORO

 1979年に発表した「大阪で生まれた女」をヒットさせ、関西を中心にブルースシンガーとして、また音楽プロデューサーとして活動してきたBORO。しかし、実は幼少期からの体の弱さに加え、C型肝炎や上顎洞手術、硬膜下血腫など相次ぐ病気やケガと、人生をかけて闘ってきた人でもある。長年患ってきたC型肝炎は2014年に完治したものの、そこからも左腎臓の腫瘍摘出や白内障などを経験。そんな長年の闘病やコロナを経たBOROならではの、今もっとも強く胸にある想いについて聞いた。

C型肝炎に5回の手術、頭部出血、腫瘍摘出…「やっと健康な体を手に入れた」

──BOROさんは幼少の頃からいろんな病と闘ってこられたそうですね。

BORO 怒涛のように次から次へと病気が出てくるんですよね。子どもの頃から患っていたC型肝炎で、体は常にしんどい。そこへきて2006年から5年間くらい上顎洞、いわゆる副鼻腔の手術を繰り返し行って。歯の治療から菌が入って上顎洞に膿がたまり、骨が溶け出したんです。人工の骨を継ぎ足していく手術を5回、全部で144針縫いました。顔の腫れが引いたらライブをやり、また手術というのを繰り返して。

――大変な手術でしたね。

BORO はい。でもそれがやっと終わったと思ったら、今度はリハーサルスタジオでシンバルに頭をぶつけ、硬膜下血腫で頭に血が溜まってしまった。ぶつけたときは痛いなぁくらいだったんだけど、だんだんろれつが回らなくなったんですよね。病院行ったらすぐ入院して手術となりました。その頃、映画音楽を担当することが決まっていて。退院した2日後にレコーディングしたんですけど、手を抜いて歌うことなんてできないでしょう? 思い切り歌ったら眩暈がひどくなり、翌日病院に行ったら「また頭の中に血が噴き出してます!」ということで即入院になったんですよね。

──まさに命がけのレコーディングですね。そして怪我が治った頃、C型肝炎の治療も終えたそうですね。

BORO すごくいい薬に出会えて、やっと健康な体を手に入れました。でも、人は健康になると今度はオーバーヒートするんですよね。それまでしんどかったのが元気になったもんだから限度がわからず、とことんまでやってしまう。バランスが取れなくて、1年くらいは体調崩したりしてました。でもね、ずっと闘病してたから、お医者さんや研究者にたくさんの知り合いができて、ずっと監視してもらえるんです (笑)。普通ならわからない腎臓の腫瘍を早期に見つけてもらい、今年の1月に摘出手術をしました。

ショーケンさん、内田裕也さん…先立った盟友たち、「天国で『おまえも来いよ!』って言ってる気がする」

BORO

  • アルバム『OVERCOME』

    アルバム『OVERCOME』

──今が一番体に不安もなく、健康な状態という。最新アルバム『OVERCOME』は、まさにその健康体を手にする最中に仕上がった作品ということでしょうか。

BORO とにかく病室にいたから、そこで作った歌もすごく多いですね。「道化師たちの住み家」という曲があるんですが、この数年でショーケン(萩原健一さん)が亡くなったり、(内田)裕也さんが亡くなったり、僕の周りでたくさんの人が亡くなって。病室にいると、その人たちが天国で道化師みたいな恰好しながら「おまえも来いよ!」って言ってる気がするんですよ。「いやだよ。もう少しこっちでやりたい」っていう想いを、歌にしました。そして「ガラス細工の飾り物」という曲は、ガラス細工の飾り物(新型コロナウィルス)を家の中に置くとみんなが無口になるよ、という歌。自分の病気やコロナ、友人との別れなどすべての出来事がエキスとなったのが、今回のアルバムなんです。

──制作にかけた1年は、生と死の両面を実感された1年だったんでしょうね。

BORO 正直、入院しているときの自分の居場所は“地獄”なんです。でもね、ちょっとしたことで幸せな気持ちになれるというか…。僕が入院していた病院では、外の景色を見に行くと太陽の塔の後ろ姿が見えるんです。その向こうには大阪平野があるんだなと気づいたり、そういう小さなことが幸せに感じるんですよね。不幸には幸せの扉はいくつもあって、そこを開けるか開けないかで自分の心は変わる。結局、地獄というのは希望への入り口だったんだなということに気づきました。

──闘病生活で、何もかも放り出したくなるときもあると思うんです。そこで音楽に対する情熱が冷めてしまうことがなかったのはなぜだと思いますか?

BORO 僕ね、病室に音の出ないギターを持って行ってたんです。でも、手術直後なんて痛くて弾くどころではない。だからこそ早く家に帰ってギターを弾きたい、ロックしたい!とずっと思っていました。ツイッターで「早く家に帰ってロックしたい!」って言ってたら、ラジオで浜村淳さんが読んでくれたりして(笑)。だから僕にとっては、音楽は諦める対象というより、早く帰るための理由になってたんですよね。

――なるほど。

BORO ただただ、ロックしたい、少年のように暴れたい、叫びたい。僕にとって、病気も音楽も苦しみも悲しみも幸せも、全部が一緒になってロックになってるので、人生の中でそれが外れるということはあり得ない。自分の病気や世の中のコロナとか、いろんなことを経て、すべてを克服して生まれたロックという意味で、今回のアルバムは『OVERCOME』(=克服)というタイトルにしました。

あなたにおすすめの記事

 を検索