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多発する列車内の事件、元・車掌はどう見る? 危機管理やSNS対策に見る鉄道職員の苦悩「本来の安全確認ができなくなる」

インタビューに答えた関大地さん

インタビューに答えた関大地さん

  • 写真:本人提供

    写真:本人提供

 安全だと思われていた日本の鉄道で、事件が相次いでいる昨今。さらに、乗客による暴力トラブル、理不尽なSNS投稿、“撮り鉄”など鉄道ファンによる迷惑行為…など、問題は枚挙にいとまがない。元JR東日本の職員で、車掌として英語アナウンス導入に尽力した関大地さんは、そんな現在の鉄道をどう見ているのか。安全に利用するために知っておくべきこと、知られざる鉄道職員の苦労などについて聞いた。

脅かされる鉄道の安全、もし事件に遭遇してしまったら?「迷わずSOSボタンを押して」

  • 鉄道にまつわる様々な活動を行う関さん(写真:本人提供)

    鉄道にまつわる様々な活動を行う関さん(写真:本人提供)

 JR高崎線に英語アナウンスを導入し、「英語車掌」として話題になった関大地さん。2019年にはJR東日本を退社し、12年間車掌として経験したことを元に、執筆活動やYouTuber、セミナー講師など、幅広いジャンルで活躍している。

――2002年にJR東日本に入社、当時と現在では鉄道を取り巻く環境も大きく変化していると思います。とくに昨今では、小田急線や京王線の車内で大きな事件が続きました。元車掌という立場からどのように捉えていますか?

関大地 列車という密室の中で、逃げたくても逃げられないという状況は非常に怖いですよね。鉄道職員としても、お客さまの安全を守ることが最優先されるので、もしも危険があるならば、一番前に出て阻止しなければいけないという責任感はあります。鉄道会社としても、事件があるたびにこれまでのルールは見直されているんです。ただ、列車という公共性や密室の特殊性で、なかなか完ぺきな対応は難しい。通勤に使う列車で、毎日持ち物検査をするのも現実的ではない。監視カメラの設置とか、いろいろ考えてはいると思いますが。

――もしもこういう事件に遭遇してしまったら、乗客はどうしたらいいのでしょうか?

関大地 シンプルですが、問題が起きた車両から移動し、距離をとること。いきなり危害を加えられるなどの可能性もありますが、各車両にSOSボタンがついているので、迷わず押して乗務員を呼んでください。

――鉄道会社によって異なりますが、SOSボタンを押すと緊急停車したり、乗務員と通話できたりしますね。ただ、自分が列車を止めてしまうとなると、もし大したことがなかったとき損害賠償を請求されるのでは? と思う人もいると思いますが。

関大地 もちろんいたずらは困りますが、本当に危険に感じることがあれば「空振りでもいいのでボタンを押そう」ということは、JR東日本の社員間での共通認識でした。危険なときは、まず列車を止めるということが大切。そうすれば警察の方も入ってこられるので。

――酔っ払いのいざこざなどで、ボタンを押してもいいのかと躊躇してしまいそうです。

関大地 相手に指一本でも触れたら暴力なんです。たとえ大事にならなくても、自分たちが原因で列車が止まったとわかれば、トラブルの抑止にもなります。正当な理由があるならば、あまり躊躇せずにSOSボタンは押してほしいですね。

――ちなみに、車掌時代にそのような事件に遭遇したことは?

関大地 以前、警察と連携して盗撮犯を捕まえたことがあります。高崎駅の一つ前の駅で、「盗撮している人がいる」という通報を受けたのですが、そのまま高崎駅に到着してドアを開けたら逃げられてしまうと思ったんです。なので、前もって警察を手配してもらい、運転士にも「到着しても、すぐにはドアを開けないから」と伝え、なんとか捕まえることができました。あれは貴重な経験でした。

乗客による不当なSNS投稿に葛藤、「本来の安全確認ができなくなってしまう」

――事件や事故などがあると、SNSで拡散されることもあります。一方で、乗務員のことを撮影して晒しあげるような行為もありますね。

関大地 乗務員や職員にしても、なにかあればすぐにSNSにアップされてしまうという不安はあるでしょう。少し下を向いていただけでも「居眠りしていた」なんて言われることもありますし、そのあたりは窮屈になったなと思います。本来、鉄道職員の役目というのは、お客さまの安全を守ることが最優先。それなのに、クレームを受けて拡散されないように…という気持ちがどこかにあると、本来の安全確認ができなくなってしまう危険性もあります。

――勝手に職員を撮影して、拡散することは問題ではないのでしょうか?

関大地 JRの車掌は芸能人などと同じで、肖像権がないようなんです。勝手に写真を撮られてSNSにアップされても、訴えるようなことは難しいみたいですね。それだけに、お客様への言葉使いなどもかなり注意して対応しています。録音や動画撮影されているのはわかりますし、ちょっとした言葉尻をとられて、クレームやバッシングに繋がるかも…ということは考えてしまいます。

――つくづく、本当に大変なお仕事ですね。乗客のマナーやモラルも問われる時代ですが、鉄道ファンなどの行き過ぎた行為も近年、問題になっています。

関大地 僕自身は鉄道ファンに対しては、完全に“無”でしたね(笑)。好きなものに熱中する気持ちはわかるので、ルールの範囲内で行っていることに対しては、特になにも感じていません。

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