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運休理由は鉄橋に巨大猫? 鉄道ジオラマで気ままに遊ぶ猫に反響、窮地の飲食店を救った“猫の恩返し”とは

 大阪府にある「ジオラマ食堂」(@Caferest_bar_Fe)は、精巧にできた鉄道ジオラマ上をわがもの顔で歩きまわり、横たわり、くつろぐ猫の姿をSNSで公開。そのかわいすぎる様子に「ニャジラ襲来!!」「トトロの猫バスみたい。かわえぇ」と大きな反響を呼んだ。もともと、猫がいない“ジオラマ”が売りの食堂だったが、コロナ禍が直撃。経営が苦しくなるなかで、猫に出会い、救われたという。オーナーの寺岡直樹さんが語る“猫の恩返し”とは?

ケージの猫にコロナ禍の自分に投影「ジオラマが壊れたら直せばいい」

――SNSで発表されている、ジオラマを闊歩し、くつろぐ猫たちの様子が大きな話題となっています。そもそも、なぜ「ジオラマ食堂」に猫がいるようになったのですか?
寺岡直樹/以下寺岡ジオラマ食堂の隣に、グループで運営する保育所と託児所があるんですが、昨年の6月にそこに瀕死の状態の赤ちゃん猫が置き去りにされていたんです。その猫を保護して飼うことを決め、しばらくたつと今度は店内を鋭い目つきで見つめるキジトラを見つけました。自分の赤ちゃん猫を探している様子でした。その母猫は、隣のビルで子猫を育てていて、しばらく様子を見ていたのですが、その後保護することにしました。

――保護猫だったんですね。
寺岡はい。ジオラマ食堂の奥の部屋でケージに入れて飼ってたんですが、ある日出社すると、奥の部屋に子猫の姿がなく、ジオラマの線路をまたいでいました(笑)。その姿が元気に公園で遊んでいる子どもたちのようで。柵のあるケージにいる猫たちを自由に遊ばせてあげようと思いました。その後、資格、免許を取得し、今に至ります。
――丁寧に作られた大切なジオラマを壊される可能性もあるわけですが、そこは割り切れたんですか?
寺岡そうですね。正直少々、複雑な気持ちはありました(笑)。ただ、猫を保護した当時、コロナ禍でちょうど仕事や資金繰りに行き詰っており、まさに自分が檻の中に入れられた不自由さを痛感する時期がありました。「もうあかん」と。その時、唯一の心の安らぎが猫家族でした。しかし、その猫たちはケージ(籠=檻)の閉塞された空間に閉じ込められており、自由がなく不憫だと感じました。猫たちのことを思うと、壊れればジオラマは修復すればいいと割り切りました。

――実際、ジオラマと猫の共存は成立するものですか?
寺岡猫たちも自分の安全を第一に行動をとりますので無理な行為や激しい破壊をすることはありません。俊敏に避けたり、近寄ろうとしないので思うほど破損しません。といってもゼロではないので、その都度修理しています。また、猫の安全を考えて、猫にとってより良くなるように修繕しています。

――ジオラマ食堂ならではのルールの“猫ファースト”ですね?
寺岡はい。たとえば、ストラクチャー(ジオラマの建物)の屋根類は固着するのではなく、猫がひっかけても安全なように脱着式非固定にすることで、ケガをしないようにしています。また、歩きにくそうな部分は幅を広げたり、平面に近づけるなど改良しています。これまで多くのジオラマ制作に携わってきましたので、修理、改良することはたやすいことです。

十分すぎる猫の恩返しに「今度は“猫に恩返し”する番」

――猫に注目が集まっていますが、設置されているジオラマのクオリティも非常に高いです。どこか懐かしさを感じさせる風景ですが、どのようなイメージで制作されたのですか?
寺岡ジオラマは昭和40年代の国鉄亜幹線駅をモチーフに配線しています。ホームの柱や鉄橋の鉄骨などはフレキシブルレールの破材を半田付けして作成しています。こうすることで強度のアップと材料コストの抑制が実現します。

――こだわりがすごいですね。
寺岡そうですね。特に3点でこだわりました。1つ目は「色」。ジオラマには2020本の木がありますが、これらは特定の季節感で固定しないために、新緑・紅葉・春夏秋冬をわかりやすい形で樹木に表しています。2つ目は、「線路配置」。実際の駅の配線をもとに、徹底的に線路配置をこだわりました。また、フレキシブルレールのカーブ部分にはカント(遠心力に対応する傾き)をつまし、カーブ部分には脱線防止線路を取り付け、本物らしさを追求しました。3つ目は、「空気感の再現」。照明は明るさをコントロールできるようにして朝・昼・夕・夜が楽しめるようにしています。また、スモークマシンの2 基を設置し、朝もやや霧、雲のような表現ができるようにし、現実的で山の匂いがする風景が再現できました。
――本格的なジオラマに違和感なく猫たちが溶け込んでいますね。
寺岡お客様の眼前のジオラマの渓谷に猫3匹が保護色で隠れるように馴染んでたたずんでいた際、「猫ちゃんはどこにいるのですか?」と聞かれたことがあります。あまりの馴染みように、お客様も「あっ」と驚かれてました(笑)。

――SNSでバズったことで、実際に来店されるお客さんにも変化はありましたか?
寺岡そうですね、女性のお客様が多くいらっしゃるようになりました。お話を伺うと、女性の方でもジオラマ(情景模型・ミニチュア)に興味のある方が意外と多いようです。猫とジオラマという非現実的な風景を写真に撮りたいということで、スマホ片手に、ジオラマ+猫+鉄道模型車両をカメラに収めて楽しんでおられます。
 また、今はコロナ下で営業できない日々が続いており、直接ご来店いただける機会が限られておりますが、猫を通じて、ジオラマ・鉄道模型にこれまで興味のなかった方々や猫好きな方などから、メッセージをはじめペットフードなど多くのご支援をいただき感謝するばかりであります。

――瀕死の状態を救われた猫たちがSNSで注目され、コロナ禍で経営が厳しいジオラマ食堂を救いました。まさに“猫の恩返し”ですね。
寺岡情景ジオラマを作るのが好きだった自分が、若くして亡くなった妹の「お兄ちゃんは、子供喜ぶジオラマのお店でもやればいいんだ」という遺言を心に刻み、失敗もしながら、20年かけてこのような形になりました。SNSを通じて、世界中の大人・子供・猫も喜ぶ店になり、天国の妹もきっと喜んでいるのではと思っています。
 もし天意なるものがあるとすれば、何十年もかけた本当によくできたストーリーのように感じます。どん底のなか、野良猫を保護したら、逆に猫に助けられてしまいました。今度は猫に恩返しをする番だと考えています。これから人生の集大成として、このジオラマ食堂と、TNR活動(野良猫に避妊去勢手術を施し元いたところに戻す活動)・保護猫ステーションを行う「保護猫サフランプロジェクト」に取り組みたいと思います。

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