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大手出版社参入により電子コミック群雄割拠の時代へ 苛烈するマンガアプリ市場、鍵は「デジタルと紙の“循環”」
『静かなるドン』が1日100万円の売上に 温故知新でマンガ界を豊かに
温故知新といえば、デジタルコミックならではの現象もあった。「最新の流行作品も置いていますが、素晴らしい作品は時代を超えるもの。弊社は新作や流行のもの以外にも目を向けました。例えば『静かなるドン』。非常に面白いのですが、古い作品のため、マンガアプリの流行りの外にいました。今までマーケティング的に誰も取り上げようとしなかったのですが、この作品をピッコマに入れたところ、1日で100万円の売上が出ました。若者ユーザーにも古き良き作品を“新しい出会い”としてリーチできる。それがデジタルコミックの強みでもあるのではないでしょうか」
昨今は「ピッコミックス」というグループ会社で、オリジナルコンテンツの制作も開始している。普通、オリジナル作品はそのアプリ独占で他では読めないというのが売り。だが金社長は「作家さんというのは帰属させられるより、より多くの人に自分の作品を読んでもらいたいもの。ですから弊社ではその垣根を取り払いました」とマンガ家へのリスペクトを語る。
そんな金社長の夢は、韓国や中国で主流となっている、フルカラー・縦スクロールマンガで「SMARTOON」作品が、マンガ大国日本から多く登場すること。「マンガは海外でもMANGAと呼ばれ独自のコンテンツとして人気です。その培われたノウハウをSMARTOONにも活かしていきたい。また、SMARTOONはマンガと一味違う魅力を持ち縦のスクロールでスムーズに読めるよう最適化されています。スマホで見やすいので、普段マンガを読まない人にも入りやすく、このSMARTOONから入った読者が次のマンガ好きに成長し、結果としてマンガ市場が大きくなっている。さらにはピッコマでその作品が気に入ったら“紙”の単行本も買ってくれるはずと考えています。私はその“循環”を重視しながらサービスを行っています。デジタルも、紙も、共存する豊かなマンガ文化を作っていきたいですね」
(取材・文/衣輪晋一)