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マンガは“読み捨て”の時代? 「武器は豊富な人生経験」レディコミ作家の気概

 恋愛や不倫、社会の闇を描く内容まで、幅広い作風で人気のレディコミ漫画家、はやしだちひろさん。レディコミバブル期に“エロ系”アシスタントからスタートし、現在は第一線で活躍を続けている。ウェブコミックの浸透で、マンガは多くの読者が手に取りやすくなった。しかし一方で、作品の無料化や単価は安くなり、漫画家はますます厳しい状況に置かれるようにもなったという。「マンガは読み捨ての時代」と語るはやしださんに、配信時代の漫画家の苦境について話を聞いた。

少女漫画家を目指すも、「まずは乳首のトーン貼りから」

――不倫夫への逆襲を描いた最新作『ダウト 私が夫を愛するほど夫は私を愛してない』は、読後のスッキリ感がたまりません。漫画家を目指したきっかけは?

はやしだちひろさんもともと絵を描くのが好きで、小学校の文集では将来の夢は漫画家と書いていました。高校卒業と同時に漫画家を志して専門学校へ進みました。漫画家志望のきっかけは、ある漫画の「このあとは読者のご想像におまかせします」というラストに納得いかなかったことです。「私なら絶対にそんなことしない!」と(笑)。いまでも漫画を描くポリシーなんですが、ハッピーにしろアンハッピーにしろ、結論を出して読者にスッキリしてもらいたい。私ならこう描いてやると思ったんです。

――どのようにレディコミと出会ったのですか?

はやしださん専門学校を卒業して、東京のレディコミ漫画家先生のもとでアシスタントをはじめました。私が目指していたのは少女漫画家だったのですが、当時はレディコミバブル。そのころはまだレディコミというとエロ系が多くて、乳首にトーンを貼るところからスタート(笑)。でも楽しくて、ずっとレディコミを描いています。

――『ストーリーな女たち』シリーズ(ぶんか社)では、投稿誌の読者体験談から選んだテーマに基づいたマンガも描いています。そのおもしろさや難しさは?

はやしださんいまはSNSと日常生活に切っても切れないつながりがあります。そこから、こういうことをされたら怖い、こういうことに巻き込まれたら嫌だという話が自然にできあがっていきます。気をつけているのは、繰り返し編集部から依頼のあったテーマを読み込んで、ぶれないこと。エピソードを描いていくと、あれもこれも付け加えたくなるんですが、そうなると芯がぶれるんです。詰め込み過ぎて結局なにが伝えたいのかわからない、とならないように意識しています。

「人生経験が豊富なほうが描ける幅が広がる」進化を続けるレディコミ

――漫画家としての“こだわり”を教えてください。

はやしださん「まあ、いいか」です(笑)。こだわり過ぎるとキリがないので、どこかで妥協しなければいけない。時間は無制限ではなく、必ず締切がありますからね。才能があっても、こだわりが強すぎるがために辞めていった漫画家もいました。決して手抜きをしているわけではなく、商業誌で描いている限り、プロとして大事なことだと思います。あと、どんな話でもどこかに救いがあってほしい。私が漫画家になった基本です。

――ではレディコミのおもしろさはどんなところですか?

はやしださん多様性ですね。多くの方に“エロ系”のイメージがあるかもしれませんが、昔より作品性が広がっていて、いまもジャンル自体が進化を続けています。テーマが多岐にわたるので、多くの人にひっかかるポイントがたくさんあります。漫画家は、その引き出しを準備しておかないといけない。漫画って年齢によって描けるものがまったく違って、経験の差が現れます。人生経験が豊富なほうが描ける幅が広がりますからね。レディコミというジャンルがあるおかげで、私たちのような歳を重ねた漫画家の息が伸びている気がします(笑)。

“漫画家使い捨て”の時代、描く場所はあるが便利に使われて終わる

――いま漫画作品は単行本だけではなく、ウェブコミックでも読者が手に取りやすくなっています。

はやしださんたしかに描く場所は増えました。実際にSNSを通して新しい会社から声をかけていただくことも増えています。ただ漫画家にとっては、単純に描く場所が増えればいいというわけではなく、問題も生じています。

――漫画家の問題とは?

はやしださん漫画家が便利に使われて終わることが増えている気がします。ウェブコミックは誌面と違って、ページ数に限りがありません。多くの漫画家にオファーして、ダメだったら次の作家に声をかけよう、という時代です。そこで生き残るには、より一層スキルアップが必要。日々勉強していかないといけないという危機感を抱いています。

――仕事自体は増えても、それが漫画家の実力や人気の指標にはなっていない?

はやしださんたしかに作品を配信して読んでもらえる場は増えましたが、それを「人気がある」と錯覚しては危険だと思うんです。お仕事の依頼をくださる企業のなかには、ダメもとで当たればいいと思っているところもあります。バブル期に誌面でバズった方々は、本当に実力があって生き残ってきた方だと思いますが、今は違うと思います。描く場所はありますが、当たらなければ使い捨ての時代。勘違いしないように、気を引き締めています。

時代がガラリと変化した10年、漫画家としての覚悟

――昔より競争が厳しくなっている、というのとは様相が違うんですね。

はやしださん違いますね。昔のほうが、限られた誌面を争う競争が激しかった。企画を通すのも大変で、今よりはるかに過酷でした。でも、それとはまた違った意味での“読み捨ての時代”に入っているんです。読者も何かをしながら読む、無料じゃないと読まない、YouTube配信じゃないと読まない。この10年で時代がまったく変わっています。

――コンテンツが無料でないと読まれない状況については?

はやしださんまずは漫画人口を広げないといけないから、無料で出すことも必要です。それがきっかけで作品を知って、そこから有料で読んでくださる読者も多いですから。そこで生きていくのは大変ですが、漫画家は今、みんなその覚悟を持っています。

――厳しい時代を生き抜くなか、目標にしていることはありますか?

はやしださんなかなか難しいんですけど、アンテナを張って時代の流れを読んでいくこと。読みすぎて振り回されてもダメですけどね。あと、自分のスキルをこれまで以上に磨かないといけない。やらないと取り残されてしまう。本音は40歳を過ぎていまさら勉強したくないですし、褒められて甘やかされたい年頃なんですけどね(笑)。
『ダウト 私が夫を愛するほど夫は私を愛してない』はやしだちひろ著
高野晴香は、4歳の娘・茜とイケメンの年下夫・拓海と人も羨む仲良し家族を築いていた。義父母との関係も良好、趣味のビーズ細工を生かして自宅で教室が開けるよう、準備する充実の日々を送っていた。しかし、晴香は茜の出産時、生死をさまよった恐怖から二人目を出産することには躊躇していた。出産後、命を落として何者かが「母の座・妻の座」に入ろうとする悪夢を見た晴香に、現実の災難が降りかかろうとしていた──。恵まれすぎた理想の夫婦に待ち構える落とし穴とは?
●ぶんか社のスマホ専用サイト『マンガよもんが』(外部サイト)にて配信中

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