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法改正にコロナ禍で追い打ち…喫煙所が消えて1年、街は本当にクリーンになったのか?
非喫煙者も撤去は歓迎しない? 6割超が「喫煙スペース必要」
先日発表された『喫煙・喫煙スペースに関する意識・実態調査2021』(ネットエイジアリサーチ調べ)によれば、「喫煙スペースは必要だと思う」とした“非”喫煙者は、過半数の64%。喫煙スペースが必要だと思う回答者にその理由を聞いたところ、「受動喫煙を避けることができるから」がもっとも高く63.7%だった。
前出の須田氏が実際に取材した際にも、「意外に思われるかもしれませんが、『喫煙所がなくなって良かった』とする非喫煙者はごくわずか。むしろ、『きちんと喫煙所を整備すべき。そうしないと、自分たち非喫煙者の権利が脅かされる』とする意見の方が圧倒的に多いのです。もちろんその背景には、『路上喫煙者が増えて迷惑』という意識があることは明白」、とのこと。一方で喫煙者側の思いとしては、「『タバコは合法であるにもかかわらず、それを吸うところがないのはどう考えても不合理』とする意見が圧倒的に多い。加えて、『あれだけ高率のタバコ税を取っているのだから、それなりに喫煙所を整備すべき』という意見もかなり多い」ということだ。
「非喫煙者もゴリゴリの喫煙否定論者ばかりではない。むしろそうした強硬派は少数です。多くの非喫煙者は、きちんとした分煙環境が整備されることを望んでいると言っていいでしょう。むしろ、喫煙所を整備することで、望まない受動喫煙を回避できる、と考えているようです」(須田氏)
解決すべき課題とは? 非喫煙者・喫煙者の共存のために望まれるリアルな方策
「本来であれば、時間をかけて段階的に喫煙所を縮減させる必要があった」と語るのは、街づくりと都市の環境問題に詳しい東京都市大学の小林茂雄教授だ。
「喫煙可能な場所が制限されること自体はやむを得ません。ただし、問題は2020年になって行政施設や鉄道施設、飲食店などの喫煙所が一斉に閉鎖されたことにあります。喫煙所が閉鎖されたからといって、急に喫煙行為を止めることは難しい。喫煙所が一斉に廃止された状況では、屋外での路上喫煙はしばらく継続すると思われます」(小林教授)
では、本来の意味で非喫煙者に迷惑にならず、喫煙者も無理なく過ごすために、現実を見据えた方策とはなにか。小林教授は「路上喫煙や禁止された場所での喫煙をなくすために、あるエリアの中で喫煙所を一定数確保しながら徐々に減らしていくようにすることと、喫煙所の情報を共有できることが有効」と述べている。つまり、喫煙者が存在するにもかかわらず喫煙所が近くに見つからないことが問題であり、それを解決しないままでは片手落ちの方策だというのだ。
受動喫煙は、子どもや妊産婦、病気を持った人への影響が特に大きいと言われる。街の環境と街づくり等の観点から現実的な対策を見据えると、「十分な換気設備を持った喫煙所を適所に配置する、喫煙所の場所を周知する(マップ化などによって喫煙所難民を減らす)、特に子どもへの影響が懸念されるエリアでは明確に区分した喫煙所を設ける、喫煙行為を一般の目に触れないようにする(ただし、あまりに隔離された人目につかない喫煙所は犯罪の温床となる危険性もある)、喫煙者も非喫煙者も互いを配慮する(喫煙自体は合法的な行為であり、差別はいけない)、喫煙所を減らす場合は段階的に行う、喫煙マナーを周知することなどが重要」(小林教授)とのこと。
現在、さまざまな問題が勃発している状況を受けて、自治体の喫煙所整備の流れも広がりつつある。東京都足立区の竹ノ塚駅前の公共喫煙所が、空気清浄機を備えたコンテナ式にリニューアル。大阪府は市町村や民間企業等と連携し、5年間で20〜30ヵ所の屋外喫煙所の整備を目指す。前述の調査でも、煙やにおいが漏れないような最新設備の喫煙スペースの多い街へのイメージは、「住みやすい・利用しやすい」と非喫煙者の67%が回答している。
須田氏も「喫煙所を整備することで、喫煙者はもちろんのこと、非喫煙者にとってもハッピーな環境が整備される。官民合わせて、協力して整備していくべき」と語るとおり、全面的に排除するのではなく、非喫煙者と喫煙者、それぞれが快適に過ごせる共存の道をより深く議論することが重要だと言えそうだ。
(文:衣輪晋一)