ORICON NEWS
救世主となるか?逆風受け開発されたJTの無煙たばこ「“産業”である以上、責任がある」
業界の救世主? 無煙たばこ『スヌース』、本場スウェーデンで開発の苦労
規制という逆風の中にいるJTにとって、救世主となるかもしれない『スヌース』だが、発売に至る道のりは決して平たんなものではなかった。同社の主任技師・古越雅之さんが『スヌース』の開発を始めたのは、2008年。それまでJTでは、嗅ぎたばこというジャンルの研究すら行っていなかったという。「とある海外の会社を買収したとき、一緒にくっついてきたのが嗅ぎたばこ部門だったんです。スウェーデンの小さな会社で、この部門は35名ほどの町工場でした」(古越さん)。
無煙たばこといえば、アメリカなどで有名な嗅ぎたばこ『スナッフ』がある。ほかに、大リーガーがよく噛んでいる『チューイングたばこ』と呼ばれる噛みたばこもあり、マーケットも大きい。世界的に禁煙の流れが加速している近年、もし無煙たばこが主流になったら…。そんな時代を見越して、JTでも開発・研究がスタートすることになった。
「スウェーデンの町工場と共同プロジェクトを行い、2年後にプロット(試作品)が完成。日本人に合う仕様やサイズ、ブレンドなど多くの試行錯誤がありました。ただ、スェーデンでは『ボルボかイケアかスヌース』と言われるくらい、アイデンティティ的な存在。それだけこだわりが強いので、日本向けにするためには現地の人とコミュニケーションを深め、話し合うことが必要でした」(同)
もともとおおらかな気質の彼らの働き方は、古越さんの悩みのタネにもなった。まず、現地で導入した機械がすぐに壊れ、オペレーションにも問題がある。カッチリとスムーズな作業を好む日本人にとって、これはカルチャーショックとなった。古越さんは、彼らが働いている後ろに立ち、応援したり励ましたりしながら、ずっとオペレーションを見守っていたそうだ。
JT社内でも逆風「小さなパイを社内で奪い合うのはどうなのか」、顧客からは「意味がわからん」
そんな中でも、ついに2013年、大阪市内だけで2つのフレーバーの販売が開始。「大阪の方はハッキリ物事をおっしゃるから」と、顧客を集めて『スヌース』を試してもらう場を設けたが、結果は散々だった。「我々は自信満々だったんですが、まず『スヌース』を口に入れてもらうこと自体が難しい。入れてくれても『たばこを吸った気がしない』と言われ、『意味がわからん』『頭おかしい』とことごとく酷評でした(笑)」と古越さん。同社マーケティンググループの黒髪祥さんも、「担当して初めての調査だったんですが、この結果にはビックリしました(笑)。当時はまだそこまで規制もきつくなかった時代だったので、時期が早すぎたんだと思います」と、その様子を語る。
それでも挫けず開発を続けた古越さんだったが、同時期に好調だった低温加熱型の加熱式たばこ『プルーム・テック』に社内のリソースが割かれたこともあり、『スヌース』はますます日陰の存在に。古越さんは「細々と開発は続けていましたが、社内の風当たりは相当きつかった」と明かす。
そんな『スヌース』“冬の時代”、社内にいた数人の理解者の支えもあり、2014年に大阪府内で販売開始、2015年には全国展開にたどり着いた。