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「逃げる=悪」なのか? ブラック企業や社畜描くWEB漫画家が提案、つらい仕事との向き合い方
“逃げる=悪”なのか? 日本社会の風潮に疑問
「もともとブラック企業や社畜のネタをよく漫画にしていたので、そこに切り込んだ本を書きたいと思ったのが最初ですね。Twitterでは基本ふざけてるんですけど(笑)、たまにマジメなことも発信しているので、DMで相談されることもあるんですよ。『仕事で困ってるんですけど、やしろさんならどうしますか?』とか。一つ一つ答えるのは無理なので、自分の考えや意見をまとめておきたいという気持ちもありました。“逃げる”をテーマにしたのは、日本の社会のなかには“逃げる=悪”という雰囲気があって、それは良くないなと思っていたからです」
――“逃げずにがんばることが美徳”という。
「そうです。実際に逃げるかどうかは別にして、“逃げるコマンド”を持っておくのは大事だと思うんですよね。逃げるという選択肢を持たないまま突っ走った末に、病んでしまったり、過労死することだってあり得る。つらいときや追いつめられときに、頭のなかに“逃げるコマンド”を表示するだけでも、一つのきっかけになるはずなので。僕自身、最初はゲーム会社に就職しましたが、やりたくないことから逃げ続けて、結果的に好きなことが仕事になったんです。母親も『部活とか、イヤだったらやめていい』という考えだったので、逃げることにネガティブな感情は持ってなかったんですが、社会に出たら全然そうじゃなくて。それを少しでも変えられたらいいなと思ってます」
判断するのは自分自身、押しつけはしたくないから「オンラインサロンも嫌い(笑)」
「いちばん良くないのは、やはりその人のなかで“逃げるコマンド”が存在しないということでしょうね。『ここで逃げたらどうなる?』と想像するだけでも可能性が広がるし、逃げ道が見つかるかもしれないと思うんです。そのうえで及び腰になってる人には、『あとはご自由に』としか言えないです(笑)。その人の環境だったり、どういう家族がいて、どういう上司がいるかもわからないので、一概にアドバイスはできない。最終的に判断するのは自分自身だし、僕は意見の押しつけはしないので。この本を読んでくれた人に対する責任は一切持ちたくないです(笑)」
――そこまでハッキリ言い切れるのも、やしろさんの強さですよね。
「お金をいただいて人生相談しているのであれば別ですが、そうじゃないですからね。僕はただただ自分の考えを発信してるだけで、それを真に受けて『失敗した。どうしてくれるんだ』と言われても、『うるさい』としか思わない(笑)。それは正常な反応だと思うし、そもそも『こうすれば間違いない』『自分の考えが絶対に正義』とは言わないし、意見を押し付けるつもりもなくて。なので、絶対的なリーダーが存在するオンラインサロンも嫌いなんですよ(笑)。“逃げコマ”を読んでくれた方にも『こういう考え方もあるのか』と話半分くらいで捉えてもらって、それぞれの状況に応用してもらえたらいいなと思います」