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サンリオ、“グリーティングカード”へ寄せる50年の想い「アナログの良さは取って替われることはない」

 サンリオが、新しいブランドサイト「サンリオ グリーティングカード」を、11月12日にオープン。同社は、日本に“グリーティングカード文化を根付かせたい”という思いから、年間約600種類のカードを製作している。新サイトでは発売中の全アイテムを検索し、購入することが可能。海外では手軽に手に入れることができるグリーティングカードだが、日本ではそこまで生活に定着はしておらず、代表的なカード文化である「年賀状」も年々減少傾向に。電子化が進む今、あえてサイトを立ち上げた意図とは? 同社のグリーティング事業本部・安友伸吾氏に聞いた。

ブランド立ち上げから51年 “言葉”を添えてギフトで思いを伝える

「サンリオ グリーティングカード」WEBサイトより

「サンリオ グリーティングカード」WEBサイトより

――まずは、1969年にグリーティングカード事業を立ち上げたきっかけを伺えますか?

【安友伸吾さん(以下、安友)】1960年の創業より、 “Small Gift Big Smile” という企業理念を基本に “心を贈り、心を伝える” ビジネスを発信し続けてきました。創業者で会長の辻信太郎は、「ギフト(物で思いやりの気持ちを伝える)と、それに付けるグリーティングカード(言葉で思いやりの気持ちを伝える)を両軸として発展させるべき」という信念を掲げており、1969年に自社ブランドによるグリーティングカード事業の展開を開始しました。

――事業展開した頃はどのようなカードが主流だったのでしょうか?

【安友】当初は、業務提携していたホールマーク社のカードデザインをそのまま流用し、メッセージも単純に和訳して商品化していました。その後、日本人に合った商品開発を進める上で、徐々に自社によるデザインとメッセージが主流となり、現在にいたっています。

――年間約600種類のカードを製作されているそうですが、この50年で売上の変化はありますか?

【安友】事業開始から30年間は右肩上がりで売り上げを伸ばしましたが、98年がピークとなり、その後は緩やかに減少に転じました。メールの普及などで衰退の一途を辿るのではないかと懸念されましたが、ここ5年はほぼ横ばい状態が続いています。

――減り続けているわけではないんですね。

【安友】「日常使い」のメールやSNSと、「晴れの場」で使うグリーティングカードとのすみ分けが、ある程度できていると認識しています。しかしながら、カードの需要を支えているのは中高年で、生まれた時からSNSツールに慣れ親しんでいる若い世代へ向けたグリーティングカード文化の普及は継続課題となっています。
――キャラクターのカードはもちろん、クリスマスや年賀、暑中見舞いなど様々な用途のカードがラインナップしていますが、どのカテゴリーのカードが人気ですか?

【安友】グリーティングカードは大きく2つのカテゴリーに分けることができます。通年使えるエブリデーカードと、季節やイベントを扱ったシーズンカードです。エブリデーカードの中では、「誕生日祝い」が最大のシェアを占めています。

――シーズンカードは、どういったジャンルが人気なのでしょうか?

【安友】シーズンカードが扱う季節は春・初夏・夏・秋があり、イベントではバレンタインデーやひな祭り、入園入学、端午の節句、クリスマスなどがあります。その中でも「クリスマス」は最も多くの種類が発売され、大きな市場を形成しています。

メールやSNSの普及進んでも“紙カード”を展開する理由

――11月12日に新しく「サンリオ グリーティングカード」がオープンしました。電子化が進むなか、サイトをローンチさせた意図を伺えますか?

【安友】デジタルコンテンツの存在は常に脅威ではありますが、アナログのカードの良さはそれらに取って替わられることはないと確信しています。紙の質感や手書きのメッセージ、リアルなポップアップのサプライズなど、どれもアナログならではの魅力です。そういった魅力のつまったカードを数多く商品化していますが、店舗にすべてを並べて販売するのは物理的に不可能なんです。

――なるほど、それでサイトで販売しようと。

【安友】そうですね。「カードを使いたいけれど、どんなカードがあるのか分からない」という人のために、あるいはカードを贈り慣れていない“カード初心者”に贈る楽しさを知ってもらうためにも、グリーティングカードに特化した公式サイトをオープンしました。コロナ禍ということもあり、対面で会えない人達へのコミュニケーションツールの一つの選択肢になればという思いもありました。

――まだスタートしたばかりですが、反響はいかがですか?

【安友】想定した以上の数のユーザーさまがサイトを訪問されていて、うれしい限りです。弊社のオンラインショップを始めとする他3つのECサイトへの遷移をはかっており、カードを「選んで」「購入する」ところまでのお手伝いをしていますが、それと合わせて全国の主な取り扱い店舗情報も掲載しているため、サイトを見たお客さまからお店にカード購入のお問い合せなどが多数入っています。

――サイト内の特集やコラムも充実していますよね。

【安友】制作スタッフの生の声に触れることのできる「制作者コメント」や、「制作スタッフのつぶやきコラム」を楽しんで読まれる方が多いようです。また、社内の評判も良く、手軽な商品カタログとして、営業メンバーからも重宝されています。

――メール等で送る電子版グリーティングカードも昨今登場していますが、紙のカードを展開する理由やこだわりがあれば教えてください。

【安友】電子版グリーティングカードの存在を否定するつもりは全くありません。気持ちやこころを送るという観点からは、同じ方向を向いていると思います。しかしながら、「実体」のあるグリーティングカードは、「想いを形に残す事が出来る」コミュニケーションツールです。早さや便利さ以外の部分に価値を見出し、紙製のカードを愛用されるお客さまが多くいらっしゃるのもまた事実なので、我々はそうした方々に寄り添って今後も魅力ある商品を多く作っていきたいと考えています。

――確かに、紙ならではの良さもたくさんありますよね。

【安友】誰かを思ってカードを選び、言葉を紡いでメッセージを書き上げて、手渡ししたり、郵送したり…。一連の流れで費やす多くの時間に価値があると信じていることこそが、我々が紙のカードを展開する理由です。

海外にはない「季節のお便り」に需要 日本式の“グリーティングカードの在り方”

――日本でグリーティングカード文化が大きく広がらない原因は、どこにあると思いますか?

【安友】「習慣」は一朝一夕で作り上げられるものではないので、歴史ある外国の風習がそのまま日本に根付くのは難しいかもしれないですね。しかしながら、日本ならではの季節のお便りの使用習慣などと合体させることで、「日本式」のグリーティングカードのあり方が存在すると思っています。現に「春カード」「秋カード」などは売上を年々伸ばしており、海外では決して見られない傾向があります。

――グリーティングカードを作り続けている原動力は、どんなところにありますか?

【安友】今更の話ですが、グリーティングカードは自分買いの商品ではありません。思いを伝えたい相手がいて初めて成り立つ、とても特殊な商品です。例えば「大好きです」と書かれたカードが1枚売れたら、そこには誰かに「大好き」を伝えたい、もしくは伝えた人が一人いたことになります。「カードを使ってもらった数だけ、伝えたい人の気持ちがある」、それが作り続ける原動力になっています。
――カード文化を「失っていく伝統」と感じる人もいるかもしれませんが、グリーティングカードを日本の中でどんな存在にしたいですか?

【安友】時代の流れの中で消えゆくものがあるのは必然だと思っています。それはグリーティングカードに限ったことではありません。ただ、どのような時代においても「大切な人への思いを言葉にのせて伝えたい」と願うことはごく自然な行為であり、それを単純にデジタルで行うか、アナログで行うかの違いだけだと考えます。グリーティングカードがそうしたアナログ的手段の筆頭であり続けてもらいたいと願っています。

――最後になりますが、「サンリオ グリーティングカード」をきっかけに、グリーティングカード事業を今後どのように展開していきたいですか?

【安友】普段カードに馴染みがない方を含め、より多くの方にカードの魅力をお伝えできればと思っています。SNS経由でも多くのユーザーさまがサイトに訪れ、カードをご覧いただいていますし、コロナ禍でお店に直接買いに行くことを躊躇されている方の新たな購買の選択肢になっているようです。実店舗の成長と同じように公式サイトもじっくり育てていきたいですし、デジタルの強みを活かして常に新しい情報を発信していく予定です。
「サンリオ グリーティングカード」WEBサイト https://greetingcards.sanrio.co.jp/(外部サイト)
「サンリオ グリーティングカード」Instagram @sanrio_greetingcard_official(外部サイト)

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