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“恵方巻”販売開始から16年、くら寿司の“救世主”となるまで
2月は売り上げが激減? 恵方巻の販売で右肩上がりに成長
一方、くら寿司にとって2月3日は、売り上げが激減する日だった。辻さんによると、2月は1年を通して売り上げが低く、とくに2月3日は、客足が遠のいていたという。「そもそも2月は日数が少ない。また気温が下がることで、家で鍋をする方が多いのだと思う。さらに節分の日は、家で恵方巻を召し上がる方が多いため、売り上げは減少していました」(辻さん)
そこでくら寿司は2003年、持ち帰り限定で恵方巻の予約販売を開始。『上福巻』と『えびマヨ巻』の2種類を販売したところ、予想以上に好評だったため、翌年からも販売を継続した。「恵方巻は、寿司として被ってしまう存在ですが…。恵方巻のニーズがあるなら、寿司屋としてきちんと販売していこうと。おかげさまで売れ行きが良かったので、恵方巻の販売はやめられなくなりました(笑)」(辻さん)
さらに2014年以降、変わり種として、カニやとんかつを使ったものを発売するなど、恵方巻を5〜7種類にまで増やして展開。出店数の増加とともに恵方巻の販売数も増え、現在まで毎年右肩上がりで、2月3日の売り上げが伸びているという。まさにくら寿司にとっては、恵方巻が“救世主”となったかたちだ。
ちなみに、1年を通して売り上げが高いのは8月だと、辻さんは話す。「夏休みは家族連れや、学生の方が平日に利用してくださる機会が増える。また夏だからか、さっぱりしたものが食べたいと思ったときに、選んでいただけているのかもしれません」(辻さん)
余剰分も活かす工夫で、廃棄ロス削減
そもそもくら寿司のように、1皿100円というリーズナブルな価格で寿司を提供する店にとって、廃棄ロスを減らすことは常日頃から課題だ。恵方巻に限らず、食材を使い切ったり、扱っている食材の中で新しいメニューを考えることは、運営のコンセプトでもある。「お店では、コンピューターでお客様の入店時間や人数、滞在時間による消費量も予測して提供をしています。数値化での管理と、素早く提供できるシステムの確立で、ラーメンなど寿司以外のサイドメニューの拡充にも成功できました」(辻さん)
インパクト大の『まるごといわし巻』、おもちゃ付きの『なんだこれは!?巻』も
そもそもイワシは、節分にちなんだ魚だという。「節分には、恵方巻や豆まきの他に、イワシを焼いてその煙で鬼を退治する風習もあります。イワシを食べたり、イワシの頭を柊の枝にさして玄関に飾り、鬼除けするといった文化もあることから考えた商品です」(辻さん)
大ぶりのイワシを用意し、中骨を抜くなどの下処理が必要で手間はかかるが、消費者からの声に応え、今年も数量限定で販売する。
また今年のくら寿司の恵方巻は、香りとパリパリした食感を楽しんでもらうため、のりをフィルムに巻いた形で提供される。家で楽しんで巻くという、エンターテインメント性も加わったかたちだ。「くら寿司の恵方巻は、ハロウィーンやクリスマスよりもずっと前から販売しているイベント商品なんです。恵方巻をきっかけに、くら寿司のファンになっていただけたらうれしいですね」(辻さん)