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自虐宣伝で好感度アップ?“没メニュー”企画が企業バラエティの進化形に
脅威の影響力、復活した“没メニュー”が通常の約3倍の売上に
なかでも、くら寿司はすでに二度出演。昨年、同コーナーで“復活”を果たした「茶碗蒸しリゾット」(180円)は200万食、3億6千万円の売上を記録。来店者の要望により販売期間が延長され、“没”だったはずが半年間も販売される大ヒット商品に。また、番組に出演した常務取締役の久宗裕行さんは、元警察官というユニークな肩書と警察用語を引用したコメントが受け、スタジオを爆笑の渦に包んだ。先日7月10日放送に登場した際には、10年間も没にされ続けてきた「きつねうどん風にぎり」が執念の復活。同商品は7月11日から16日まで数量限定で販売され、6日間で20万食を売り上げたという。
6日間で20万食というのは、どれほどのことなのか。久宗さんによると、「2000万円の売上になりました。一概には言えませんが、6日という期間で考えるとAクラスの売れ行きで、1ヶ月あれば100万食を超える計算に。例えばサイドメニューなどの新商品は、3ヶ月で100万食の目標設定が多いことを考えると、約3倍と言えるのではないでしょうか」とのこと。「面白おかしく紹介していただいたことで、かなり付加価値が乗ったこともあるでしょう。やはり『ダレトク!?』さんの影響は大きく、呼んでいただいて本当にありがたかった」と感謝を語った。
かつての企業見学モノは“美点”を紹介、一方“没メニュー”のメリットとは?
翻って『ダレトク!?』だ。『没メニューレストラン』は、本来なら企業が表に出さない“没メニュー”をあえて見せる企画。決して“美点”ではない事柄がメインに取り上げられており、その開発者の顔はもちろん、“没”の理由までさらされる。さらに、それを出演陣が容赦なくツッコみ、笑いのネタにされてしまうのだ。企業にとってあまりメリットがないように感じるが、同社の商品開発担当マネージャー・松島由剛さんは、「週に60、年間で3000ほどの新商品を企画しているので、基本は没の方が多くなります。このコーナーは“敗者復活”できるチャンスでもあるので、とてもありがたいこと」と、現場ならではの意見を語る。
「普段は知られることのない開発の取り組みを紹介してくださるので、モチベーションアップにもつながっています」と、社内への影響を語るのは久宗さん。「開発者が日々、いかに苦心して開発しているかを客観的に伝えていただけるので、説得力が違います。ユーモアもあるので社内の空気も良いですし、お客様も好意的に受け止めてくださる。それが『没メニューレストラン』に出演する利点であり、特徴であると思います」と話してくれた。
企業の“自虐プロモーション”により、視聴者からの親近感が増す
『没メニューレストラン』には、その“自虐プロモーション”と似たような効果が感じられる。“没メニュー”は有吉らの忌憚ない批評にさらされ、開発者も徹底的にいじられる。だがそれによって視聴者は、普段は見ることのない飲食チェーン開発部の人々の、人間味ある姿を見ることができる。思わず興味や親近感を抱き、「復活したメニューを食べにいこう」という行動に出るも自然な流れであろう。放送や販売が終了した現在でも、「♯没メニューレストラン」で検索すると大量の投稿がヒットする。SNS映えを狙って訪れる人も多いようで、視聴者は放送後の来店まで長く楽しめることになる。
企業との癒着や出来レースではない、ガチな姿勢に評価
『没メニューレストラン』は、変に企業に忖度することもなく、単純に番組としての面白さを追求しているように見える。そのわりに、企業側にとっても出演効果の高い、稀有な番組となっているようだ。これまでの手法とは一味違う、現代にふさわしい企業コラボバラエティの進化形と言えるだろう。
(文・衣輪晋一/メディア研究家)
◆「スーパーフード」メニュー
昨年販売開始し、シリーズ累計800万食を突破した「糖質オフシリーズ」に続く健康志向のメニューとして、「スーパーフード」メニューを販売。栄養価が高く“穀物の母”とも呼ばれる“キヌア”を使用した「キヌアサラダ手巻き ビントロ」ほか、玄米を使った「ベジヌードルサラダ」、チアシードを使った「飲むお酢 カシスチアシード」、アサイーを使った「アサイームースのグラノーラパフェ」などを全7種を展開。
◆健康黒酢のシャリ
くら寿司のすべてのシャリが「健康黒酢のシャリ」に。長期熟成・発酵させた黒酢を寿司酢として使用。黒酢は米酢よりもアミノ酸が多く含まれ、健康維持・美容に役立つと言われる。