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(更新: ORICON NEWS

紙製バイクが精密すぎ…ペーパークラフト作家が語る「立体への憧れ」

 モノ作りにおいてもデジタル全盛の昨今だが、あえての“アナログ感”、“手作り感”を感じられる作品もまた、脚光を浴びている。なかでも、様々なものを紙で作り上げるペーパークラフトは、多くの企業がHP上などで自社商品をモデルに展開。SNSでは、一般の人によって創意工夫に満ちた作品が発表され、称賛を集めている。現在の人気ぶりやペーパークラフトの魅力について、約20年前から作品を発表してきた “草分け”的存在、デザイナーの向山信孝氏に聞いた。

展開図のネット配信、自宅での印刷が容易に…ペーパークラフトの流行

『超細密』シリーズ YZR-M1

『モータースポーツワールド』レーシング YZR-M1

  • 東京モーターショーで公開された作品『モータースポーツワールド』

    東京モーターショーで公開された作品『モータースポーツワールド』

 向山氏は、約20年前からヤマハ発動機のサイトで、手掛けたペーパークラフト作品を発表。一般のユーザーも楽しめるよう、展開図なども公開してきた。だが昨年9月、ファンから惜しまれながら同サイトは閉鎖。現在はクラウドファンディングを利用して、新たに個人でサイトを立ち上げるべく準備を進めている。

――現在はペーパークラフトも人気ですが、20年前はどんな状況だったのでしょうか?

「20年前は、すでにペーパークラフトは衰退していたと言っても過言ではないと思います。実際、市販されているペーパークラフトを探すのには苦労しました。玩具店などにはほぼ置いてなく、あっても1〜2点。大きな本屋でも数冊置いてあるのみ、扱いとしては“おまけ”の域を出ていない感が強かった。当時は、わざわざお金を出して購入するモノではない、という印象がありました。インターネット上でも、多少はペーパークラフトコンテンツがありましたが、立体の造形物と呼ぶにはほど遠いものばかり。箱に彩色を施し“電車”や“車”として配布しているものが数点あるのみでした」

――そんななか、ペーパークラフトの盛り上がりを感じた転機とは?

「転機というほど劇的な感じはしませんでしたが、モーターショーのスペシャルサイトで発表したバイクのペーパークラフトは、ユーザーの皆さまに驚きを与えたのだと思います。また、展開図などのデータをネットで配信し、自宅で印刷することが容易になったため、利便性が上がりました。だからこそ、ペーパークラフトの懸念点であるコスト感、失敗の恐怖感を払しょくできたのではないでしょうか。写真のカタログでは満たせない所有欲を刺激し、ペーパークラフトに新たな場所を与えたのだと思います」

バイクやモータースポーツを紙で再現、「ここまでするか?」と評判に

  • アメリカンショートヘア

    アメリカンショートヘア

  • 日本の情景 金魚

    日本の情景 金魚

――向山さんの作品には、バイクから動物、季節モノまで様々なジャンルがありますが、「これをペーパークラフトにしよう」と考える際の決め手は?

「モチーフに物語が感じられるかどうかは気にします。作り手のモチベーションを維持するためには、モチーフに多少の感情移入をしていただいた方が長い製作の励みになると考えています」

――これまでの作品で、とくに反響の大きかったものは?

「やはり、バイクの『超精密』シリーズは毎回評判が良かったように思えます。あと、『モータースポーツワールド』などは、単純に“ここまでするか?”感があったので、良くも悪くも反響はあったのかな?と思います」
  • 人気を博した『超細密』シリーズ MT-01

    人気を博した『超細密』シリーズ MT-01

  • 『超細密』シリーズ MT-10

    『超細密』シリーズ MT-10

「自己責任の量が多いところが、ペーパークラフトの魅力」

  • Chernovan Tank

    Chernovan Tank

  • warhawk

    warhawk

――制作する一般ユーザーにとって、ペーパークラフトの魅力とは?

「立体物が出来上がっていく驚きと高揚感、完成した時の達成感、所有欲を満たすこと…などは言うまでもありませんが、“魅力”の核となっているのは、やはり作り手の技量によって完成が変わるというところが一番大きいと思います。時間をかければ必ず到達するエンディング画面や、お金を出せば手に入るという約束されたものがない。自己責任の量が多いところが、ペーパークラフトの魅力を語るうえでは外せないところだと思います」

――一般の初心者でも挑戦しやすい入り方はありますか?

「“簡単そうだから”とパーツ数の少ないものから手をつけるのではなく、“欲しい”と思うもの作っていく課程で、そのモチーフの世界観に没入できるものを選ぶこと。また、無理なスケジュールで完成の期日を設定しないことも大事です。“飽きたり雑になってきたら一度やめて、1時間でも1ヶ月でも手を止めてもいいんだ!”という意識で望むほうが、挑戦へのハードルは下がると思います」

――ユーザーへ向けて、展開図を作る、解説する際に心がけていることは?

「作る人の没入感を邪魔しないよう、なるべく展開図を見たときに完成の形を想像しやすくすること。筒や箱形など定形のあるものは、寸法をなるべく同じにするよう心がけています。また、説明書で気をつけていることは、文章で説明しすぎず、わかりにくい場所は分割して説明するようにしています」

「ヤマハ発動機始まりのバイク、『YA-1』を制作することになったのも何かの運命」

ヤマハの原点といえるバイク『YA-1』

ヤマハの原点といえるバイク『YA-1』

  • ヤマハ『VMAX』

    ヤマハ『VMAX』

――昨年9月末で、約20年続けてきたサイト『ヤマハ発動機 ペーパークラフト』が閉鎖されましたが。

「今まで、比較的自由に制作させていただいたことは、本当にありがたく思っています。20年も一つの企画を担当することは、一人のモノ作りをする人間としてかなり賭に出た行為で、継続こそ力と思い続けてきました。ただ時流により、今までの制作条件の維持が難しくなってしまった。制作者として、ユーザーに恥ずかしくないモノを提供する責任を考えた時、提示された条件では継続は難しいという判断をせざるを得ませんでした。以前より新天地を求める気持ちがなかったわけではないので、20年という節目、偶然ですがヤマハ発動機様の始まりのバイク『YA-1』を制作することになったのも何かの運命と感じ、ここで一区切りをつけることにしました」

――現在、クラウドファンディングで、個人のサイト『向山空間』リニューアルの資金を募っています。今後、新たにやっていきたいことは?

「おかげさまで、今までは名前のある企業様のもとで制作、作品を発表させていただいてきました。本当に喜ばしいことなのですが、ただ、それは自分自身の力が100%ではないことも感じていて。自分の良いと思うモノを発表し、ユーザーのジャッジを受けたい気持ちが常にあったんです。それは、名車と言われるバイクの制作や、伊藤若冲や横山大観の絵を立体化した新作の制作、旧作のバイクを大きさや紙質、表現を変えて発表。製鉄工場や石油プラットフォームなども私の目には魅力的に映っているので、伝えたいメッセージと表現が固まれば制作したいと考えています。また、販売や個展など、おおよそ作家を名乗る人間ならやってきているであろうことも、今後はやっていきたいです」

――クラウドファンディングを活用したのは?

「それも、やってみたかったことの一つでした。『向山空間』をリニューアルし、本当の意味で私のライフワークのプラットフォームにしたいと思っていて、皆さまにもご支援、ご協力をいただきたく、クラウドファンデングを始めました。今後立ち上げ予定の『向山空間』では、説明動画なども掲載していきたいと思っています。そうすることで、ペーパークラフトの難解さを排除していきたいですね」
ペーパークラフトデザイナー
向山 信孝 Mukouyama Nobutaka

■ホームページ 「向山空間」(外部サイト)
■facebook「向山空間」(外部サイト)
■Twitter「Nobutaka Mukouyama」(外部サイト)

1975年7月30日東京都生まれ
1997年八王子工学院専門学校芸術学部産業デザイン学科卒業、デザイン制作会社勤務を経て2001年に独立、フリーのペーパークラフトデザイナーとして雑誌や企業ノベルティーグッズ、イベントなどに作品を提供、現在に至る。1997年の東京モーターショースペシャルサイトにて精密ペーパークラフト第1弾『VMAX』の制作を担当、その後ヤマハ発動機サイトで公開されているすべてのペーパークラフトの制作および企画を担う。

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