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累計410号「分冊百科」の人気シリーズ「国産名車コレクション」 “立体の図鑑”を作るアシェットの矜持

「分冊百科」とは、あるテーマに沿った著作物を定期的に刊行し、それを集めて完成させる出版物のこと。海外では「パートワーク」と呼ばれ、さまざまなジャンル(テーマ)の刊行物が発刊されている。なかでも人気が高いのが、精巧にできた模型が付いてくる自動車のシリーズ。日本でもアシェット・コレクションズ・ジャパンが刊行する『国産名車コレクション』がシリーズ累計410号を発刊するロングヒットを記録している。同シリーズは、数ある車のなかでどういった車を選び、どういうこだわりを持って製作し、人気シリーズになっていったのか?同社編集部長の佐藤建氏に話を聞いた。

分冊百科の自動車シリーズは“立体の図鑑”

  • アシェット・コレクションズ・ジャパン 編集部長 佐藤建氏

    アシェット・コレクションズ・ジャパン 編集部長 佐藤建氏

 アシェット・コレクションズ・ジャパンが刊行する『国産名車コレクション』は、2006年から刊行された同社の人気シリーズ。最初に出版された1/43スケールのシリーズは当初60号の予定が、延長に次ぐ延長で2018年まで続き、トータル320号。現在も発刊が続いている1/24スケールのシリーズは90号を数える。そもそもどういう成り立ちで、「分冊百科」の自動車シリーズは始まったのだろうか?
佐藤もともと我々はフランスの出版社、アシェット・リーヴル内で、パートワークを専門に出版する部門の日本支社なんです。90年代に『自動車の世紀』(Un siecle dautomobiles)というタイトルで、フランス車を中心とする世界の名車を、1/43スケールで扱ったんですね。ルノーやシトロエンとかフランスの名車に始まって、メルセデスやジャガーなど海外の車も取り入れ、それが大成功しました。
 一般的に言って、自動車をはじめ動物やミリタリーといったテーマは、パートワークに限らず『本』というかたちでは扱われていたのですが、模型を付けることはしていませんでした。自動車というテーマで出版物に模型を付けて成功して以降、フィギュアだったり、時計だったり、コレクションもののいろいろなものが出ていますが、一番のヒット商品は自動車のシリーズ。それはどこの国でも同じなんです。2003年に日本に支社ができて、06年に満を持してこのシリーズが始まったという感じです。
 さまざまな情報、データが載った本と精巧な模型がセットになった同シリーズ。模型がメインなのでともすると冊子のほうは要らないのでは、などとイジワルな疑問を感じてしまうが、そこには同社の哲学があった。
佐藤パートワーク(分冊百科)というのは、集めて百科事典を作るというのが基本形態。それはいまだに変わらないです。ミニチュアカーを付けていますが、あくまで自動車の百科事典として作っているので、写真で見るだけよりもモデルが付いているほうが面白いんじゃないかという発想なんですね。本だけだとどうしても平面的になってしまいますが、立体にすることによってより分かる、自動車の存在を生き生きとしたものとして感じられる、ということもある。“立体の図鑑”、”実物の図鑑”というのがもともとの発想なんです。
 『国産名車』だったら、『国産車の素晴らしい歴史を振り返りながら、お父さんが乗っていたクルマとか、(記憶のなかの)“ノスタルジック”な物語を呼び起こす』のようなメッセージを込めて制作していますが、本を読んでもらい、その車の個性やスペックなど、ひとことでは言い切れないストーリーを知ってもらい、さらにスケールモデルを見て、触れてその時代の空気や物語を(疑似)体験してもらう。それが自動車のパートワークなんです。

「“ノスタルジック”な想いに浸ってほしい」が車種を決める条件

 「ユーザーの記憶を呼び起こす」には、出来上がった模型のクオリティーもさることながら、どういう車を取り扱うかという選定も重要な要素。そこにも同社はこだわりを見せる。
佐藤最初に60号で完結する予定でどういう車をピックアップするかを考えます。車種選定は、自動車そのものの魅力+バックグラウンドにあるストーリーのバランスですね。人気のある車だけでなく、ユーザーのノスタルジックな想いを引き出せる、懐かしいと思ってもらうことが重要。
 そういう意味では、2006年に発刊したこのシリーズの創刊号では、「スバル360」を取り上げました。もちろん、人気だけで考えたら、(トヨタ)2000GTとか、ハコスカ、ケンメリ(共に日産スカイラインの愛称)などでもよかったんですけど、お話しした通りユーザーに、“ノスタルジック”な想いに浸ってほしいということが根底にある。そうすると、それらの車よりは、より家庭的で身近な存在であった360なのかなと思ったわけです。それと同様に、1/43スケールで制作した『ダイハツ・ミゼット』はすごく好評で、売り上げもよかったです。高度経済成長期の時代に酒屋さんとかが配達で使っていた、ノスタルジックな光景がふっと思い出されたのかなと思います。
 また、車種選定においても長いシリーズを続けていくなかで、どのタイミングでどういう車種を出していくかという戦略もあるという。
佐藤シリーズを始めるうえで、創刊号は非常に重要ですが、前半は流れを作るために人気車をピックアップすることが多いですね。実際、1/43スケールのときは、スバル360のあとは、ハコスカ、2000GT、ホンダS800、マツダコスモスポーツ、いすゞ117クーペ、日産フェアレディZなどの人気車。ただシリーズが続いていくと、継続して買ってくださる車好きの皆さんを満足させるような、少しコアな車種も混ぜていきます。(他社の)ミニカーやプラモデルで出ていないモデルが、ラインアップにあるのはそういう理由ですね。

“世界一厳しい”日本のお客さんを満足させるために細部にまでこだわり

 「(日本の模型メーカーと)名前が並ぶのもおこがましい」と謙遜するが、付随する模型へのこだわりと精巧さは、それらを生業にする模型メーカーに決して負けていない。自社ではなく、海外の模型製造業者に制作を委託しているというが、多くの人の目を通し、納得したものを商品化しているという。
佐藤海外からエンジニアがきて、実車を計測、撮影、可能であれば3Dスキャンもして、金型を作っていきます。その際、さまざまな方々にご協力いただきます。自動車メーカーの方はもちろん、その車をデザインされた方やその後輩、旧車を取り扱っている販売店の店主さんたちや自動車評論家の方など。旧車って実車が目の前にあったとしても、それが完全なオリジナル仕様かどうかわかる人がいない場合があります。なので、自動車メーカーの方だけでなく、さまざまな識者の方々のお力を借りています。
 ただ、実際のサイズをそのままサイズダウンするだけではありません。あくまで模型化したときに、見栄えがよくなるように多少の修正、デフォルメを入れるんです。実際の縮尺よりもタイヤが少し大きかったり、リベットが大きめになっていたり。その部分に関しては各社独自のメソッドがあると思いますよ。
 精巧に作れば作る分だけ、コストに跳ね返るのが世の常。佐藤氏は笑いながらも「そこが一番大事なポイント」と頭をかかえる。
佐藤細かいディティールは、製造担当者や監修チームで厳しく見ています。製造業者があげてくるプロトタイプのなかで、例えばライトが少しぞんざいにペイントされていたり、ワイパーが張り付いていたり、グリルが適当な形状になっているケースもあります。『これじゃあ日本のお客さんは満足しない』と思うので、細かく修正の指示を出すんです。『ここは別パーツで』とか、『リトラクタブル・ヘッドライトをギミックとして可動式にしたい』とか。そうすると『ここは〇〇セント上がるけど大丈夫?』と聞いてくるわけです。1個当たり数セント上がるだけでも、ロット全体を考えると何千万円アップみたいな世界なので、そこでせめぎあうのですが…。私たちとしてはなんとか利益が出せる範囲で、お客さんに満足していただけるよう最大限に作りにこだわっています。日本のお客さんは世界一厳しいと思います(笑)

 こうしたこだわりが、400号を超える人気シリーズを支えてきたわけだが、今後同社はどのような展望を持っているのだろうか?
佐藤1/24スケールは140号まで続く予定です。そして自動車はパートワークの王様ですので、どんな形になるかわからないですけど、続いていく方向で今後も考えています。もしファンの方から『これを作ってほしい』というリクエストがあれば、声を聴かせていただきたいです。その意見から製品化される可能性もありますので。

提供元: コンフィデンス

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