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原作本イベントに応募殺到、関連グッズは即日完売…香港映画『トワイライト・ウォリアーズ』異例ヒットが示す “推し活”ファンの重要度
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8月上旬、”九龍城寨”のTシャツを着用しサイン本を求める”寨民”の行列。
広東語映画史上歴代No.1ヒット、日本でも興行収入5億円を突破したアクション大作
『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』2025年10月3日(金) UHD・Blu-ray・DVD発売&デジタル配信中 (C)2024 Media Asia Film Production Limited Entertaining Power Co. Limited One Cool Film Production Limited Lian Ray Pictures Co., Ltd All Rights Reserved.
2024年に香港で公開されると、広東語映画史上歴代1位となる観客動員を記録。翌2025年4月には「香港のアカデミー賞」と称される『第43回香港電影金像奨』で最優秀作品賞を含む9冠に輝いた。日本でも公開から4ヵ月後に興行収入5億円を突破し、異例の大ヒットとなっている。
『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』 10月3日(金) UHD・Blu-ray・DVD発売&デジタル配信中 (C)2024 Media Asia Film Production Limited Entertaining Power Co. Limited One Cool Film Production Limited Lian Ray Pictures Co., Ltd All Rights Reserved.
早川書房は、話題沸騰の香港映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』の原作小説・余兒(@YUYI_0120)先生の『九龍城寨』3部作の版権を取得しました! 発売時期などの詳細は続報をお待ち下さい! #トワイライト・ウォリアーズ #九龍城寨之圍城 #九龍城砦に集え pic.twitter.com/zHcc7XYXLh
— 早川書房公式 (@Hayakawashobo) February 17, 2025
なぜこの作品は、ここまで熱狂的なファンを生み出すことができたのか――。
「“推される”のは必然」30〜50代女性の心をつかむ『九龍城寨』の魅力
2分でチケットが完売した余兒さんトークイベント。
「“寨民”の中心層は30代〜50代の女性です。8月上旬に開催した余兒さんのトークイベント(定員400名)も、その9割が女性客でした。個性もビジュアルも際立つ男性キャラクターが数多く登場し、さらに友情や絆という普遍的なテーマが重なれば、“推される”のは必然です」(早川書房 編集企画室・山口晶さん)
さらに、“推し活”に欠かせない要素が聖地巡礼だ。作品の舞台である九龍城砦は、かつて香港に存在した巨大スラム街で1994年に取り壊され現在は公園になっている。暗黒都市の象徴として知られる一方、九龍城砦を真正面から描いた小説はほとんどなかったという。
『九龍城寨』執筆のきっかけについて余兒氏は、「幼少期に通っていた映画館の近くに九龍城砦があり、いつも『ここは何だろう』と思っていました。大人になって、アクション作品のシナリオを書くためのリサーチをしていくなかで九龍城砦のことを知るにつれ、『ここはアクションに適した舞台だ!』と思うようになった」と振り返る。また20年前初訪日した際に九龍城砦の資料を探し、リアルな九龍城砦を記録した写真集『九龍城探訪 魔窟で暮らす人々‐City of Darkness』と出会ったことが運命とも語っている。
原作小説『九龍城砦II』の冒頭を特別掲載するミステリマガジン10月号(早川書房)
作中に登場する香港グルメ「叉焼飯」の食べ歩きに広東語教材や関連グッズの購入、聖地巡礼のほか、X上にあふれるファンアートの数々。これら“推し活”ファンの熱量こそが、作品をヒットに押し上げた最大の原動力となった。
「“おすすめ”と“推し”は深度が違うなと感じますね。単なる“おすすめ作品”ではなく、“推し作品”だからこそ、ここまでの盛り上がりが生まれたのだと思います」(早川書房 編集企画室 山口晶さん)
続編映画の公開に先駆けて発売される原作小説 今後は日本独自のコミック・アニメ化も視野
『九龍城砦T 囲城』(余兒(ユーイー)著/早川書房刊)
余兒氏が「(第一作から)10年空いているので考えが変わったり、前作より深みのある書き方ができていると思う」と語る続編は、第一部の前日譚にして、若かりし龍捲風(ロンギュンフォン)の活躍が描かれる。
第一部は、小説にあった主人公・陳洛軍(チャン・ロッグワン)の恋愛シーンが映画版ではカットされ、その結果、映画作品はシンプルで分かりやすい仕上がりとなった。ファンにとっては、今後も映画版と原作を比較しながら楽しむ要素が多いだろう。さらに、“推し活”ファンが増えそうな動きもある。早川書房では、日本独自のコミックス版制作やアニメ化についても視野に入れているという。
ディズニーを筆頭に、『アベンジャーズ』『ハリー・ポッター』『鬼滅の刃』など大ヒット作の多くが、IP化されマルチにビジネス展開される昨今。そのIPビジネスを支えるのが“推し活”であり、その対象はアイドル、映画、アニメ、コンサート/ライブ、舞台など多岐にわたる。つまり、推し活ファンを制する者がエンタメを制す。『トワイライト・ウォリアーズ』の今の熱はどこまで広がるのか、次の一手に期待が高まっている。
(取材・文/榑林史章)

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