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いつの時代も女児を虜にする『セボンスター』、低迷期を救ったのは“かつての女児”?
“ゆめかわいい”デザインを作っているのは…おじさん社員?
女児向けだけに、女性やママ社員がデザインを担当しているのかと思いきや、「おじさんです(笑)」と話をしてくれたのは、カバヤ食品の玩具菓子事業を統括する清水隆秀さん。
「もちろんセボンスターには女性も携わっていますが、むしろ女性の流行に詳しすぎない人間がいることで、セボンスター=普遍的な可愛さといった世界観が守られているのかなとも思います」(清水さん/以下同)
セボンスターの発売開始は1979年。それ以前よりカバヤ食品では、現在の食玩(玩具が主役)の原点として知られる、男児向け玩具菓子『ビッグワンガム』を展開していた。しかし、実は同社が手がける玩具菓子は、女児向けのほうが先だったという。
「1975年から弊社で発売した『チコちゃんガム』が、市場で初めての女児向け玩具菓子とされています。当時のお菓子売り場には、オマケつき菓子も並んでいましたが、男の子向けがほとんどで、女の子に喜ばれるものがなかったのが開発の経緯でした」
商品の入れ替わりが激しい“激戦区”のお菓子売り場…低迷期を救ったのは、“かつての女児”たち
「特に厳しかったのは90年代後半から2000年代初頭です。その頃から玩具菓子市場をアニメやキャラクターのライセンス商品が席巻し始め、キャラクターの人気が玩具菓子の売れ行きを左右するように。オリジナルにこだわってきた当社には、なかなか太刀打ちできなくなりました」
お菓子売り場の面積は限られている。毎月新商品が多数発売される玩具菓子は、売れ筋でないと置いてもらえないシビアな世界だ。
「一時はパッケージを六角形から直方体に変えたこともあったのですが、むしろ逆効果でした(苦笑)。やはりセボンスター=六角形の箱という認知が強かったようです」
ターニングポイントは10年ほど前のこと。Yahoo!ニュースのトップに「セボンスター、まだ売ってます」といった記事が掲載されたことをきっかけに、大人の女性たち(=かつての女児)が目を輝かせてお菓子売り場にやってきたのだという。
「記者さんもおそらく"かつての女児"の方だったと思われます。昔よりは売れなくなっていたものの、根強いファンがいたことを記事で実感しました。宝島社さんから『セボンスターの35周年アニバーサリーブックを作りたい』というご依頼があったのも、ちょうどこの頃のことでした」
売上が回復する一方で、気になる“転売”や“買占め行動”…カバヤ食品はどう見る?
「実は、セボンスターはあまり世間のトレンドを追っていないんです。というのも商品企画から金型を起こし、商品ができるまで1年ほどかかるため、店頭に並んだ時点で古くなっている可能性があるからです。カフェメニューや新しいスイーツといった、長く続きそうな流行をモチーフにしたこともありますが、基本的にセボンスターが追求してきたのは普遍的な可愛さです」
セボンスターのペンダントは全20種類、色違いを含めると全85種類が年2〜3回入れ替わる。
「普遍的に可愛いデザインは、(買い与える側の)親御さんにも評判がいいようです。どの年代にも伝わるキラキラとした素材とデザインのわかりやすさは、“可愛い”という共感性が親子をつなぐものにもなっているのはないでしょうか」
売上が回復した一方で、近年は大人の買い占めや転売なども起こるようになった。カバヤ食品ではどう見ているのか。
「正直、そこまで価値のある商品になったのかと驚いています。どうしても欲しいペンダントがあって、手に入れたい気持ちは本当にありがたく思います。とはいえ、やはり開封のワクワクも含めて楽しんでいただきたいですね。セボンスターは全85種類。好みはあると思いますが、『狙っていたものじゃないけど、これはこれで可愛いよね』と受け止めていただけたらうれしいです」
きっかけは“熱烈なファン”、ついに誕生した『大人のセボンスター』
「かねてから社内では『本物の宝石で作ってみては?』という声が上がっていました。ただ少し前に、他社が発売した300円ほどのジュエリーがヒットしていたのにヒントを得て、通常よりも少しだけ素材のグレードを上げた日常使いができるセボンスターを発売したことがあったのですが、あまり売れなかった。やはりセボンスターはどこかチープなところが魅力なのでは? という葛藤もあり、なかなか踏み切れないでいたんです」
そうした清水さんの懸念を打ち砕いたのも、セボンスターの熱烈なファンの1人だったという。
「45周年企画で何をやろうかと考えていたところ、KARATZさんの担当者が『ぜひうちでコラボさせてください』とお声がけしてくださったんです」
セボンスター×KARATZコラボの宝石のカットは、ユーザーアンケートで最も要望の多かったハートシェイプに決定。シルバーモデル(税込 29,800円)・プレシャスモデル(税込 98,000円)で展開され、親子で“お揃い”もできるようなデザインに仕上がっている。
「KARATZの担当者の方いわく、デザインはセボンスターの持つときめきを表現したクラシカル調。45周年ロゴを基調としたリボンで可愛さを共存させたとのことです。またセボンスターのチョコレートのモチーフをしたアジャスターモチーフも作ってくれるなど、セボンスター愛をふんだんに盛り込んでくれました」
ついに本物のジュエリーとなったセボンスター。しかし清水さんは「メインターゲットは子どもたち。これはずっと変わらない」と断言する。
「セボンスターを好きでいてくれる大人の方々も、出会ったのは子どもの頃だったはず。その年代が楽しめる商品を、これからも作っていきたいです。またセボンスターはある一定の年齢になると卒業されてしまう商品なのですが、できればずっと卒業しないでいただけたらという願いもあります。今は、いくつになっても可愛いものを好きでい続けてもいい時代ですし、セボンスターもペンダント以外のアクセサリーやコレクションする楽しさといった、幅広い用途を提案していきたいですね」
(取材・文/児玉澄子)