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猫を見つめて22年 猫雑誌が警鐘を鳴らすペットショップ“抱っこ商法”「猫好き自身が負のループに加担してしまう」
SNSの人気猫も元は保護猫、「懐かない、汚い、病気…」マイナスイメージを変えたい
「もともと『猫びより』は、動物愛護に関する企画も取り上げていて、硬派な猫雑誌として猫好きさんたちの信頼を得ていたんです。でも雑誌なので、どんなに良い記事があっても一時ですぐに流れていってしまうため、あらためて本にまとめました。2022年2月22日は“スーパー猫の日”なので、この機会に『こんなに素敵な保護猫ちゃんたちがいるんだよ』ということを知っていただきたいと思っています」
――『猫“が”ひろわれた話』ではなく、『猫“に”ひろわれた話』なんですね。
「『猫を保護したけど、自分のほうが幸せにしてもらった』という意見を聞くことが本当に多くて。そういった想いをそのままタイトルにしています。『たしかに、私もひろわれていた!』といった共感の声が寄せられていて、ホッとしていますね(笑)。私自身、猫に生かされていると思っています」
――SNSなどで有名な猫も、もともとは保護猫だったのだとこの本で知りました。
「最近では“保護猫”という言葉もメジャーになってきましたが、“捨て猫”“野良猫”というと、汚い、病気を持っている…みたいなマイナスのイメージが先行している部分が未だにあります。『野良猫出身の猫や大人の猫は懐かないから、ペットショップで子猫を買おう』という考えの方も多いです」
――まだそういった考えは根深くあるのですね。
「でもそんなことはなくて、“つしま”くんなどSNSで人気の猫たちも、大人になってから保護されて、人間の世界に馴染んでいったんです。だから、そういった人気者たちの手も借りて、保護猫は暗くなんかないし、明るく楽しく一緒に暮らせるということを伝えていきたいのです」
「猫と暮らせばすぐにハッピー」でなく、お互いに関係を作り上げることが大事
「“くまお”くんの話ですね。くまおくんはもともと、里山で暮らしていた生粋の野良猫。すごく人見知りで臆病だったのですが、飼い主さんが無理をさせずにゆっくりと関係を築いていって、次第に心を開いていったんです。猫と暮らせばすぐにハッピーになれるということではなく、お互いに関係を作り上げていくこと、人間のペースに無理やり合わせるのではなく、猫に合わせることが必要だというのを強く感じました」
――障害など、ハンディキャップのある猫のエピソードも多いですよね。
「これは雑誌としても挑戦でした。ハンデがあっても幸せに暮らしている猫たちの姿を見せたいという想いの一方で、お世話も簡単、というように軽く伝わってしまうのではないかという葛藤もあり、伝え方にはかなり気をつけました。でも、読者の皆さんからたくさん良い反響をいただけたので、やってよかったなと思っています」
伝えたい「猫を飼うなら保護猫を!」の思い、“抱っこ商法”への危惧も
「雑誌でも殺処分問題に触れることはあったのですが、がっつりと取り扱ったことはありませんでした。ただ、2012年頃からいわゆる猫ブームが始まって、SNSで生の声も聞けるようになっていくなかで、猫好きさん自身が無自覚に負のループに加担してしまっている部分が見えてきました」
――無自覚というのが難しい部分ですね。
「ペットショップで購入することが、一概に悪いわけではありません。ただ、そこから起きる問題も知ってもらいたかった。それで2015年に、初めて動物愛護の特集を組んだんです。こういう重い記事は読まれないのではないかと不安もあったのですが、ものすごく反響が良く、『もっと知りたい』という声を数多くいただきました。それからほぼ毎年、9月の動物愛護週間に合わせて特集を組むようになりました」
――ペットショップでは気軽に手に入るがゆえに、すぐに飼育放棄や遺棄につながる危険もありますよね。
「現在、ペットショップでは対面販売が義務付けられていますが、説明すべき点をきちんと説明していないという部分はあると思います。いわゆる“抱っこ商法”で買わせてしまって、『この種類はこれくらい大きくなる』、『お金がこれだけかかる』、『こういうしつけが必要』といった、大切だけど飼い主が負担に思うようなことを説明していないところが多いという話はよく聞きます」
――売る側はしっかり伝え、買う側も覚悟と責任を持つことが必要ですね。
「そうですね。また、編集部では猫の種類をなるべく書かない、ということも意識しています。スコティッシュ、マンチカン、アメショなど特定の猫種の人気をあおり、人気猫の大量生産を助長してしまう恐れがあるからです。最近では、人気の猫種ランキング、値段ランキングといったものを見かけることは減ってきましたが、より一層気を付けたいですね。ペット産業の裏にある、商品(ペット)の大量遺棄や、悪質なブリーダーやショップの存在も見過ごすことはできません。とにかく言いたいのは、猫はどんな猫でも可愛いし、『猫を飼うなら保護猫を!』ということです」