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“エロ”ではない性教育に特化したフリー素材サイトを作ったワケ「より正しい性知識を」

  • 『性教育いらすと』を運営する佐藤ちとさん

    『性教育いらすと』を運営する佐藤ちとさん

 イラストレーターの佐藤ちとさんが、昨年12月18日に開設した性教育に特化した無料イラストサイト『性教育いらすと』。生殖や生理、LGBTQ+などの直接的に“性”に関わるイラストだけでなく、学校や病院、DVや家族、人権までも網羅し、批判も恐れず“性教育”について広く伝える気概を感る。微妙なニュアンスもイラストにより性教育に対して理解度が増し、教育現場や行政などでの活用が望まれる。決して“エロ”ではない“性教育”に徹した同サイト開設の背景や思いについて語った。

「正確なものが少ない」と困った経験が多い性教育現場、イラストがあると空気感も伝えられる

――『性教育いらすと』を作ろうと思ったきっかけは?

佐藤ちとさん 学生時代から性にまつわるアクティビストに、イラストやデザイン制作の依頼をいただいていました。いくつか仕事をするなかで、求められるイラストの共通点が多くありました。みんなが求めていることが同じであれば、無料で使えるイラスト素材があってもいいと思いました。

――いつ頃から構想していたのでしょうか?

佐藤ちとさん 昨年2月に思い立ち、12月18日にサイトを公開しました。制作を進めるうちに、個人で捻出できる金額ではなかったので、クラウドファンディングを実施しました。本当にたくさんの方からご支援いただき、最終的には176万2171円を集めることができました。

――実際に性教育にまつわる活動をしている65人にアンケートを実施。どのような場でリサーチしたのでしょうか?

佐藤ちとさん 使用する方は、性にまつわるアクティビストが大半です。現状を知るために、私も所属している性教育コミュニティなどで、アンケートの協力をお願いしました。「ドンピシャなイラストを探すのが大変」「正確なイラストが少ない」など、「困った経験がある」という回答が多く寄せられました。

――個人、法人、商用、非商用問わず無料提供した理由は?

佐藤ちとさん 日本には、まだまだ性にまつわる正しい知識が足りていないと感じています。実際に活動している方は、若い人の割合が多く、有料のイラスト素材を使うことができない人も多くいます。イラストを使って発信することにハードルを感じて欲しくないと思い、無料にしました。テキストベースで説明するよりもイラストがあった方がわかりやすく、空気感も伝えられます。さまざまな方に幅広く使ってもらえると嬉しいです。

――イラストを描く際に、性教育について学んのでしょうか?

佐藤ちとさん 私は、医療従事者でも性教育の専門家でもありません。ほぼ全て独学で、さまざまな医学書で勉強しながら描いています。また、性教育イベントに参加することで、実際の現場ではどのようなイラストが使われているのかわかりました。それでも専門的な知識があるわけではないので、医療監修をお願いしています。

アダルトサイトなどでの利用は、違法性がなく、正しい性知識を広げることが目的なら使用可能




――子どもだけでなく、大人への啓発も必要です。男女問わず“性”について正しい知識を広く伝える上で、どのように考えていますか?

佐藤ちとさん 年齢性別問わず、正しい性知識を得るのは大切なことです。性教育は自分と相手を大切にするためのものなので、知っていて損はありません。イラストを描く上で気を付けていることは、無意識の偏見を出さないようにしています。例えば、男性だから青、女性だからピンク色の服ではなく、男性でもピンクや緑や水色など、何色の服を着てもいい。性別によって特定色の服にしていません。

――ひとつ間違えば、アダルトサイトと勘違いされることもあるかと思います。“エロ”ではない“教育”として捉えてもらうために、どのような工夫をしましたか?

佐藤ちとさん そもそも“エロ”と“性”は別ものですが、混同されることが多く悲しいです。サイトでは、いやらしさを感じさせないように、優しくて温かみのあるタッチでイラストを描くように心がけています。

――“性”に関わるイラストだけでなく、学校や病院といったシチュエーションや、DVや家族、人権、社会問題まで網羅しています。なぜ、これほど多くのジャンルのイラストを用意したのでしょうか?

佐藤ちとさん 「性教育」は、どの範囲まで含まれるのか、境界線は人によってさまざまです。『性教育いらすと』では、境界線については特に言及せず、可能な限りのイラストを取り揃えたいと考えています。実際には、描けていないものも多くあるので、今後は何年もかけていろいろな種類のイラストを揃えていきたいと思います。

――際どい内容のことも描かれています。“性教育”の一貫であるにもかかわらず、“エロ”と勘違いし、批判する人もいるかもしれません。批判も恐れず“性教育”について広く伝えるという気概を感じます。

佐藤ちとさん 確かに批判する声も目にすることが増えました。先日、批判コメントに対して、別の方が性教育について説明するコメントをしていました。そこにコミュニケーションが生まれていることに驚きました。私たちが何かせずとも意見の違う人同士が対話する場が生まれている、それは素晴らしいことだと思いました。そして、大いに意味のあることだと感じています。

――アダルトサイトなどで意図しない目的で使用されることもあるかと思います。

佐藤ちとさん たしかにアダルトコンテンツでの利用について、質問をいただくことがあります。素材のイメージを著しく損なうような利用は禁止していますが、アダルトコンテンツでの利用を全て禁止しているわけではありません。

――どのような場合が利用可能なのでしょうか?

佐藤ちとさん 例えば、コンドームの付け方や正しいセックスの方法といった、正しい性知識を広げることが目的でしたら使用可能です。そして第一前提として法律に基づいていること。イラスト自体を性的消費することが目的であったり、エロ画としての使用、違法ポルノサイトでの利用は禁止しています。また、公序良俗に反する目的、反社会的勢力や違法行為での利用、素材のイメージを著しく損なうような攻撃的・差別的・過激・R18に関しても使用禁止しています。

性にまつわる知識で選択肢の幅が変わる、性教育の大切さを広めたい

――勝手に合成される可能性もあります。本来の使用目的とは異なる活用は、フリー素材の宿命でもあります。

佐藤ちとさん 合成については素材のイメージを著しく損なわなければ、加工しても構いません。例えば、ダメな事例のイラストの上にバツマークを合成するといった用途であれば問題ありません。

――性教育の普及に関してどのように考えていますか?


佐藤ちとさん 日本では、全てを義務教育で知ることは難しい。そのため、何も知らずに大人になる人や、実際に起こったことにどのような対応をしていいのかわからない人もいると思います。性にまつわる正しい知識にふれる場をもっと増やしていきたいです。私自身は、専門家ではないので発信することが難しい部分もありますが、自分にできる「イラストを描く」ことで、少しでも発信者の手助けができたらと思っています。

――『性教育いらすと』を作る上で、大切にしていることはありますか?

佐藤ちとさん 私は、専門知識がないので自分で発信することにハードルがあります。だからこそ、実際に性にまつわる知識を発信している方を尊敬しています。『性教育いらすと』とは、イラストを描ける人と発信できる人がお互いに求め合い、「日本の性教育を広げる」という目標に向かっています。イラストを描く人、使う人、お互いに尊敬し合えるような関係性が大切だと感じています。

――ご自身の経験を通して伝えたいことはありますか?

佐藤ちとさん 性にまつわる知識があるかないかで選択肢の幅が変わると思います。私は、月経随伴症状が重く、痛み止めを飲むことしかできず、我慢しなければならないものだと思っていました。しかし、性教育を学び始めてから定期的に婦人科に通うようになりました。そこで低用量ピルを処方され、諸症状が緩和されました。もし私に知識がなければ、ずっと痛みに苦しんでいたと思います。知識があったおかげで、以前とは全然違う生活を送ることができました。自分の身体を大切にするにも知識が必要です。もっと多くの人に性教育の大切さが広まってほしいと願っています。
◆「性教育いらすと」公式サイト(外部サイト)
◆「性教育いらすと」利用について(外部サイト)

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