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「病院嫌いだった」ゲイ精神科医が信じる言葉の力 この20年における精神科クリニックの変化とは

  • 8月にダイヤモンド社から発売された著書『精神科医Tomyが教える 1秒で悩みが吹き飛ぶ言葉』

    8月にダイヤモンド社から発売された著書『精神科医Tomyが教える 1秒で悩みが吹き飛ぶ言葉』

 悩みを抱える人の心にそっと寄り添うようなツイートで注目を集めているアカウントがある。それが、ゲイの精神科医・Tomyだ。毎日つぶやかれる言葉に、「心が軽くなった」「勇気をもらった」という声が殺到。今年はその金言をまとめた書籍を2冊も発売。19万フォロワーが毎日彼の言葉を待ち、救われている。精神科医という職業から発する言葉にどのような影響があるのか聞いた。

医者になるまでに最初にぶつかった致命的な「壁」

  • 悩みを抱える人に寄りそう精神科医のTomy先生

    悩みを抱える人に寄りそう精神科医のTomy先生

 今年ダイヤモンド社から出版した『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』と『精神科医Tomyが教える 1秒で悩みが吹き飛ぶ言葉』。発売後即重版となるほどの影響力があり、それだけ多くの人が“不安”や“悩み”を抱えている。生きていく中で悩みがないという人は少ない。Tomy先生の元にも、日々たくさんの相談が届くそうだ。

「やはり、人間関係で悩んでいる人が多いです。職場やプライベート、ほぼ人間関係にまつわるものじゃないでしょうか。悩みの本質って決まっていて、人間関係か、健康とお金なんです。健康とお金の悩みをアテクシに相談されても答えるのが難しいですが、人間関係については、相性が合わない人がいるとか、こういう人とはどう関わるべきなのか……。そういった相談はすごく多いです」

 そう語るTomy先生自身も、精神科医になるまでには多くの試練を乗り越えてきたんだそう。実家が開業医だったことで医者という道を選んだが、最初にぶつかった壁は意外なものだった。

「研修医になり、病院に通うようになって、『病院という場所が嫌いだ』ということに気づいたんです。医者の子どもだったので、病院に行ったことがなくて病院がどういう場所かわかっていなかったんです。雰囲気がとにかく苦手で…ここに居れないと思いました」

自己防衛の意味も 「精神科医」を選んだ理由

 ――病院が嫌い。医者を目指す者にとって致命的な弱点を研修医時代に発見してしまったTomy先生だが、次にぶつかったのは、自身のもとに日々多く届く“人間関係”についての壁だった。

「研修医をしていたときに先輩ドクターからのパワハラですごく嫌な思いをしました。研修医は何をするにも上司のサインをもらわなくてはいけないのですが、朝からずっと追いかけても忙しいと言ってサインをくれない。サインをもらうだけで1日が過ぎたこともあったんです」

 先輩ドクターからのパワハラの日々。研修医を続ける自信をなくしてしまったTomy先生は、医者になることを辞めてしまおうかと悩み、1週間の休みを取る。医者を辞めるか、続けるかで悩んだ末、「医者になろう」と結論を出す。

 しかし、病院という場所があまり好きではないこと、自分自身も精神が弱っていたことを考慮して、「人との距離の取り方や考え方を身につけたい」という思いから『精神科』に進むことを決意する。

クリニックは20年で約3倍増 精神科を受診するハードルも低く

  • 神ツイートが満載の『』

    神ツイートが満載の『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)

 Tomy先生が精神科医になったのは今から17年前。「当時は、精神科医は変わり者がなるというイメージがあった」という。確かに「メンタルクリニック」や「心療内科」といったものは少なかった時代だ。今では、よく耳にする鬱や適応障害という精神疾患もまだまだ世間的には認知されていなかった。しかし、そんな精神科を取り巻く環境も、近年で大きく変化しているという。

「この20年で精神科のクリニックは約3倍に増えています。急速に増えている印象です。昔は、精神科クリニックというのはほとんどなかったし、やっている人も少なかった。医者の中でも『精神科医』というのはメジャーな生き方ではなかったけど、最近は入局してくる時点で、メンタルクリニックを開業するつもりで入ってくる人も増えています」

 その背景には、労務関係鬱や適応障害の発症などが増えたということも挙げられる。ひと昔前は、診断書をもらい休職をするということは一般的ではなく、会社側もレアケースとして対応していたが、昨今は、メンタル系の疾患で休職をする人は少なくなく、企業としての人事労務体制も整ってきた。心のSOSを病院へ伝えるハードルが下がったともいえる。

 多くの人が悩みを抱えながら生きている今、精神科を必要とする人はさらに増えていくのだろうか。
「実は、摂食障害やボーダー(境界性人格障害)の人は減ってきていると感じます。その理由としては、多様化していく時代の流れがあるのではないでしょうか。ガリガリなモデルが減ったり、渡辺直美さんがファッションアイコンとして国内でも注目を集めたり…『こう在らなくてはいけない』という考え方はどんどんなくなってきている。時代の趨勢のようなものはありますね」

 時代は常に変化し続けている。自分の将来や人間関係などに思い悩み、心がふさぎ込んでしまうこともあるだろう。そんな人たちにTomy先生はTwitterの中でこう言葉をかける。

『人生辛い時期もあるわ。でもそれは筋トレみたいなもので、なんとかやり過ごせばアナタの魅力があがる。考え方を変えればボーナスステージでもあるのよ』

 Tomy先生の言葉を聞いていると、つらい状況があっても“ボーナスステージ”と捉え、楽しんで乗り越えられるような気がしてくるから不思議だ。きれいごとではなく、自身も様々な経験をしてきたTomy先生のアドバイスだから、心にスッと溶け込んでいくのかもしれない。

「毎日を大事に生きる」本質は何も変わっていない

 最後に、Tomy先生にコロナ禍において、不安を軽くするために心に留めておくべき言葉はあるのか聞いてみると「生きている以上は死ぬ可能性がありますから」と、少し刺激的な答えが返ってきた。

「もちろん、コロナを機に新患さんは増えてはいますし、共通の悩みは増えています。でも、どのみち人生は何が起こるかわからないんですよ。今当たり前にできていることも急にできなくなる日が突然来るかもしれない。だから、最初からそう思って生きていくしかないし、毎日を大事に生きていくしかない。それは(コロナ以前であっても)何も変わっていないんです。毎日大事なことは家族との会話だったりとか『今日は天気がいいな』と思ったり…そういうことの繰り返しなんです」

 人は何かしら理由をつけたがってしまう。この状況を打破するために、一生懸命にそうなった原因と解決策を考えてしまう。でも、時には頭の中を空っぽにして、その時の流れのままに委ねてみるのも必要なのかもしれない。

「『本当はこうだったのに…』と勝手なストーリーを作っていて、自分の物語の中だけで生きようとするから、不安に思ってしまうんだと思います。そんなものは最初からないんですよ」

 そう思っても、意識を変えることは難しいだろう。辛い状況を1人で抱え込みそうになったら、少し周りを見渡してほしい。今は「ありのままのあなたでいい」と言ってくれる社会ができつつある。手を差し伸べてくれる人や場所もたくさんあるのだ。

(取材・文/上原かほり)
Profile:精神科医 Tomy
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医。現在はクリニックに常勤医として勤務。2019年6月から本格的に投稿を開始したTwitterが話題を呼び、たった半年で13万フォロワーを突破。覆面で雑誌やテレビ、ラジオなど各メディアにも出演。仕事、恋愛、人間関係で悩む人々の救世主。
Twitter「ゲイの精神科医Tomyのつ・ぶ・や・き」@PdoctorTomy(外部サイト)

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