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物語に爆発的な化学反応を生み出す エンタメコンテンツにおける“3人組”の汎用性
「ヒーロー」「頭脳」「のんびり」 3人組だから成せるキャラクターの絶妙なバランス
かつての3人組のキャラクターには、ある種、お決まりの“型”があったといえる。戦隊ものも今では5人組が主流だが、実は3人組からスタートしている。正義感に溢れ義理人情に厚く、直感で動いて周囲を巻き込んでいく“ヒーロータイプ”。突発的に動き出す主人公(ヒーロータイプ)をサポートし、頼りにされていて揉め事も上手に解決できる“頭脳タイプ”。マイペースの自由人で物語のオチや笑いのポイントを生み出すが、頑張り時にはギャップも見せる“のんびりタイプ”。これがオーソドックスなパターンだ。『ズッコケ3人組』『忍たま乱太郎』『アンパンマン』など、様々な3人組がこのパターンに当てはまるだろう。
また、男・男・女の3人組の場合もある。『ハリーポッター』『進撃の巨人』『銀魂』『NARUTO』などがこれに当たる。ギャグ路線で3人とも恋愛感情を持たないまま進むケースもあるが、ヒロインの奪い合いという“恋愛要素”が描かれるときがある。3人組の関係性自体に肩入れをしている分、男1人が悲しい思いをすることが確定的という結末が透けて見えるため、作品ファンは見ていてつらくなってしまうのも“あるある”ではないだろうか。
ほかにも、『キャッツアイ』のように長女、次女、三女の美人姉妹が活躍するものもあれば、『ヤッターマン』で見られるドロンボーのように、女王様+ゴロつき男性という組み合わせ、『妖怪人間ベム』のように親子のような兄弟のような独特な関係性で描かれるものもある。
物語をより分かりやすく伝えるために練られている3人組の絶妙なバランス。だからこそ、ストーリーにマッチしたキャラクターを描き分けるのは非常に難しく、作者の力量が試される部分だともいえる。
「戦隊モノを見ているよう」という感想も 3人の個性がぶつかり合って広がる物語の“ドラマ性”
炭治郎は正義感や責任感が強く、真面目でやさしい。潜入した遊郭においても、結局はみんなから頼りにされながら働いている。善逸は第1期では敵を前にして「戦いたくない〜」と逃げ腰になることもあったが、守りたいものの前では絶対に逃げず、力を発揮する。また、ぶっ飛んだ側面のある炭治郎・伊之助と比較して常識人に見えるときもあり、3人組のバランスは善逸によって保てていると感じることも多い。イノシシの被り物をしている伊之助は、「猪突猛進」という彼のセリフの通り、常に考えなしに突っ走る。そして、3人のなかでもっとも戦好きなキャラクターだ。
3人それぞれが強烈な個性を持ちながらも、しっかりとバランスが取れている3人組。特に、現在放送されている「遊郭編」では、それぞれが頼もしく動き、「戦隊ものを見ているよう」という反響も寄せられている。そしてそれによって、ワクワク感やおもしろさが倍増しているとも感じられる。
2人組の“対峙”とは異なるアプローチ 互いに支え合う3人組の爆発的な化学反応
3人組が持つ“絆”を描くことで、物語には深みが加わる。『ルパン三世』のTVアニメ第2シリーズも、まさにそういった内容であった。次元と五右衛門はルパンのために命を張って闘い、そしてルパンも、ヒロインや不二子のためではなく、次元と五右衛門のために必死に闘う。3人の友情を基軸に描かれたストーリーで、3人の関係性を守るために、ルパン、次元、五右衛門が死闘をくり返していく。映画の尺ではなかなか描けない3人の関係性にまつわるストーリーは、作品ファンからも愛されている。
エンタメコンテンツのなかで、2人組を描くものは豊富にある。ライバル関係やバディ関係を結んだ2人組のストーリーは、もはや鉄板コンテンツに。1クールのドラマや映画作品など短期的なスパンで描かれる作品との相性は抜群のように思える。一方で、3人組の関係性が生きてくるのは、いくつものシリーズが続くような長編コンテンツ。先述したルパンのように、1つのクール全体を、作品のサイドストーリーとして3人の関係性にフォーカスした形で描くこともできる。
なぜ3人という人数が適しているのか。それは、作品ではそれぞれのキャラクターが均衡して、同じように露出していることが“爆発的な化学反応”を生み出す一つの条件となっているからだ。5人組やそれ以上だと全員が均等に露出できない可能性もあり、人数が多すぎる。バランスを保った描き方も難しくなる。その点でも、3人組は物語に深みを与えるうえで、ちょうどいい人数バランスなのかもしれない。
時に立場を転換し、物語の本筋にさらに肉付けするような深みを与える3人組。その関係性の魅力が生かされることで、物語に大きな化学反応を与えている。キャラクターの描かれ方も、現在はどんどん多様に。いま、もっとも汎用性がある枠組みと言えるのではないか。