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「僕自身が“あの頃”の次元に会いたかった」大役を継承した大塚明夫 危惧する声優界の“落とし穴”とは
ルパンの影で存在する次元大介を演じる難しさ「清志さんに感想を聞くのは恐ろしい」
大塚明夫僕の身の回りの人たちは「素晴らしい」という話をしてくれるのですが、若い人たちの中では「ちょっと違うんじゃないか」という声もあるようです。素晴らしいと言ってくれる方は、PART1から知っているオールドファンだと思うんです。僕もその1人であって、思い出の中で生き生きと元気に動いているルパンや次元が懐かしい。もちろん、若いファン層のために最近のシリーズの次元大介をイメージした方がいいのだろうかと、いろいろ考えました。ですがまず、僕自身が“あの頃”の次元に会いたかった。それが正解だったかは分からない。いまだに悩んでいるというのが実情です。
――1クール目の収録を終えた頃、小林清志さんから金言をたまわったと伺いました。
大塚明夫次元のキーワードを頂きました。「江戸っ子」、「江戸の粋」、そして「ジャズ」であると。1クール目は「清志さんだったらこういう風にやるかな」と手探りで演じていたのですが、そのキーワードがイメージできにくい部分を導いてくれた。それは、あたかもカンダタに垂らされた仏様の蜘蛛の糸のようなものでした。
――では、またパワーアップした次元が2クール目から見られるわけですね。ちなみに小林さんから大塚さんの次元への感想は?
大塚明夫それ以降はお話させていただく機会がなかったのですが、ちょっと聞くのが恐ろしくて(笑)。
――大塚さんほどの方でも恐ろしいんですね。
大塚明夫それはもう、50年かけて清志さんが築いてきた役ですから。
――改めて、「次元大介」という男を演じる難しさは?
大塚明夫“主役になってしまわないこと”です。次元というキャラは、清志さんのように格好良くセリフを決めていってしまうと、どうしても前に出てきてしまう。次元の魅力は、あくまでもルパンの影にいることにあるので、だから渋い。絶妙なところで控えなければいけない。主役のルパンを侵食せず、いかに調整するかが、目下僕のテーマです。