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「僕自身が“あの頃”の次元に会いたかった」大役を継承した大塚明夫 危惧する声優界の“落とし穴”とは
昔の声優たちは俳優の延長線上「自己主張の強い“塊”のような存在だった」
大塚明夫バリトンの持ち主というところもあるとは思うのですが、清志さんと作品中で触れ合っていた時期があるか否かというところで考えると、僕ぐらいの世代が最後だからかもしれないです。あと、今は芝居が変わってきていますから。
――どう変わったのでしょうか?
大塚明夫全体的に、とっても上手なんです。今の若い人たちは。昔の先輩方は、もう少しゴツゴツしていて、塊感があって。第1世代の方々というのは、元々みんな俳優さんで、声を当てる仕事もしていただけ。本質的に自己主張が強いんだと思うんです。それぞれが主張するので、猥雑なパワーになって、それがある意味達成感につながっていたというか。
大塚明夫僕が新人の頃、日々スタジオに入ると、同じスタジオに清志さんや納谷悟朗さん(以前の銭形警部)、大平透さん(『笑ゥせぇるすまん』喪黒福造)、山田康雄さん(初代・ルパン三世)など、第1世代の先輩が4、5人もいるわけです。僕はやはり、そのゴロンとした塊を持つ人たちに憧れたのと、ちょうど若い人たちの間の層でもあって、そのジョイント部分になり得るんじゃないかなとは思います。いくら時代が流れたからと言って、清志さんからいきなり若い人たちに振ってしまうのも乱暴かもしれないですし。
――確かに、今の若手声優の方々に第1世代のような塊感は薄いかもしれません。ですが非常に器用といいますか、うまく個性を抑えて役を創り上げたり、同時にバラエティ出演、イベントで歌って踊ったりも。活躍の場は広がっているように感じます。
大塚明夫すごいですよね。これこそ時代の変化だろうと思います。僕なんかバラエティで話せるのかと言ったら無理ですし、そういうフレキシブルなところは失ってはいけないんじゃないかと僕も思うんです。年下の声優たちを見てもそれぞれちゃんと育っているという感じがして、僕は意外と、この先の声優業界も安心な気がしています。