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山寺宏一、声優業界の変化「怖い」 60歳で“若手の活躍に嫉妬”する自分に驚き
「中学1年でアニメを卒業しようとしていた」その後の人生変えた『ヤマト』との出会い
山寺宏一これだけいろいろなカタチで関わっている方は原作を除くとあまりいないでしょうから、本当にありがたいことだなと思っています。『ヤマト』のテレビシリーズが始まった頃、僕は中学1年生くらいで、そろそろアニメを卒業しようと思った時期でした。当時は大人向けのアニメというものは少なく、子どもが観るものだという風潮だったので、アニメを観ていたら子どもっぽいと言われるかなと思っていたら「なんだ、これは!」と。『ヤマト』と『ルパン』に関しては、背伸びして観るアニメだという認識がありました。中学生で多感な時期で、毎週ドキドキして観ていた『ヤマト』のファンである僕が、古代とデスラーを演じるっていう。今振り返ると驚きでしかないです。
――1970年代に起こった第一期アニメブームの中心だった『宇宙戦艦ヤマト』ですが、50年近く続く同シリーズに、声優としてどのような想いがありますでしょうか。
山寺宏一社会現象とまで言われましたよね。まだ続いていることに驚きを感じています。尊敬する富山敬さんの後を、小さい頃に観ていたというイメージでやらせていただいて、『復活篇』の話が来た時もびっくりしました。でも、歴史のある作品だけにいろいろな意見が出てきてしまうので、コアなファンの方を意識しすぎてもいけないし、だからと言って全然違うものにもできない。非常に難しいと思います。時代が変わったからこそ描けるものがあり、変わらないものもある。ヤマト愛を持って、みなさんで受け継いでいるのだなという感じがずっとしています。『2199』が成功していなければリメイクシリーズも続いていないわけで、すごいことだと思います。
――本作は、ヤマトクルーたちの新たなる旅立ちを描きながらも、デスラーがとても印象的に描かれています。
山寺宏一『2202』シリーズでデスラーの過去が明かされて、「そんなことがあったのか!」と僕もびっくりしたのですが、デスラーは生まれながらに冷徹で、手段を選ばないような男だったわけではないことが明らかになり、すべてはガミラス存続のために心を鬼にしてやっていたことがわかりました。ですので、本作では若い頃から大きなものを背負っているということをずっと感じながら演じています。
今回は特に、前のシリーズでランハルト(クラウス・キーマン)という自分の甥っ子の思いも背負うということになり、彼との約束があるわけです。それをずっと胸に秘めているので、背負うものがさらに大きくなったかなと感じがしますね。
――原作シリーズでは、伊武雅刀さんがデスラー役を演じられていましたが、リメイク作品で役を引き継ぐことに関してはどう感じていたのでしょうか。
山寺宏一『ヤマト』は長年続く人気作ですから、ずっと応援している人と、新たに観てくれる人が両方いらっしゃいます。最初、伊武さんが演じていたデスラーを聞いていた人はどう思うかを意識してしまって、そのことばっかり考えていました。僕自身が伊武さんじゃなきゃって思っていましたから。顔もストーリーも変わるので、やらせていただきますと言いましたが、伊武さんと比べられるとずっと思っていましたからね。プレッシャーはあったけれど、始まってしまえば目の前の作品に向き合い、その役をどう演じるかなんです。与えられたものをどれだけクオリティー高いものに仕上げるか、ということですから、あまり周りのことは気にしなくなりました。プレッシャーは相変わらずですけど。
――今では、山寺さんのデスラー役は広く受け入れられています。
山寺宏一声優は作品との出会いがすべてなんですよね。そこで力を発揮できるかどうか。まず出会えるか、次に力を発揮できるか。本当にやりがいのある、心震えるようなセリフを言えるっていうのは、本当に喜びですね。だから、そういう作品に出会えたことはよかったです。伊武さんのデスラーでしょって、ビビッてお断りしなくてよかった。