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昭和ブームは”巡礼”に発展? 懐かしのスポットを巡る著者が見た、デジタル世代が求める”リアル昭和”体験
コロナ禍で巡礼に行けない今、心配も…「あのお店、持ちこたえてくれるかな」
平山雄 特別なことをしているつもりもありませんでしたので、もともと本になるなんて思っていなかったんです(笑)。だから、重版もまったく予想外。「そんなに売れるものなのか」と。
――昨今はアニメやドラマの“聖地巡礼”が一般化しましたが、平山さんにとって実際に足を運ばれる理由や意義は何でしょう?
平山雄 それはもう、“体感”したいというだけです。テーマパーク同様、アトラクションに乗って「ああ楽しかった」という刹那的な感覚に過ぎないのです。ただ、これだけ多く現地を訪れていると、その街のどこに昭和の香りがあるか、“嗅覚”は身についてきますね。そうして行き当たりばったりで出会ったスポットもたくさんあります。
――実際に赴くことでの苦労は?
平山雄 楽しんでいるから、苦労とは感じていませんが…。強いて言うなら、和歌山県の昭和な喫茶店など、半日かけて行っているのに、何度行ってもお店が開いてない…というようなことがあることでしょうか(笑)。
平山雄 本でも「キングオブ昭和遺産」と書いていますが、埼玉県の秩父にある『宝登山ロープウェイ』。もう何十回も行って、個人的に思い入れがある場所です。あとはこれも埼玉ですが、『黒山三滝』。そこのお土産屋はすさまじく老朽化しているのですが、今も現役。これも気に入っています。
――こういったスポット巡りは、コロナ禍の現在ではなかなか難しいのではないかと。
平山雄 まずは、僕自身が現地に行けないというのが一番ですね。あとは、「あのお店、コロナで客足が途絶えているだろうけど、持ちこたえてくれるかな」とか、そういう心配は多少なりともあります。
――今後、ブログ、書籍を通して昭和遺産を巡礼する方もいると思います。そういった方に何かアドバイスやメッセージはありますか。
平山雄 人が集まれば、寂れたところに活気が戻り、その場所が長く生きながらえるきっかけにもなるかもしれません。だから訪れるのは問題ないと思いますが、とくにお店などの写真を撮る場合、撮影許可を取ってほしいですね。迷惑になりそうな行為は控えるよう、心がけてほしいと思います。また、ここ最近では再開発の名のもと、古いものがためらいなく壊されていく光景をよく見かけます。原宿や表参道のアパート、渋谷道玄坂の看板郡などもそうですよね。明治や大正の文化は重視されるのに、「なぜ昭和だけ」という想いはあります。世の中の人にもっと昭和への興味や価値を見出していただき、「遺したい」という発想になってもらえば、僕としてはうれしく思います。
(文:衣輪晋一)
『昭和遺産へ、巡礼1703景』
石黒謙吾/編
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