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K-POPの方法論に倣うだけが正しいのか? 日向坂46に見る“純国産アイドル”の覚悟
正直ここまでする必要ある? 制作の作り込みと演者の熱量に圧倒
そもそも日向坂46は、坂道グループの系譜に則ったビジュアル選抜・ルックス重視のグループ。番組の企画ラインアップを見てみると「なにもそこまでやらなくても…」という体を張ったベタな「身体に電気のビリビリを流すリアクション」企画から、「コント企画」「大喜利企画」などが普通に課せられている。しかし日向坂のメンバーは、それらを芸人以上の“熱量”でこなしていくのだ。
たとえば番組中に突然、メンバーの富田鈴花が「春日さんが(他のメンバーにコメントを振っているのに)全然、私を指してくれなかった」と悔し泣きをすれば、加藤史帆は「私も指してくれなかったけど。ま、いいんですけど春日さんなら」と一人でノリ・ツッコミをする。それでも「面白いこと思いつかなくなった…」と泣き続ける富田に対して、若林は「どんだけOA乗りたいんだか。フリが少なくて泣いてるの初めて見た」と感心していた。
また、大喜利的コーナーで上村ひなのは、「人気・実力ともに若林と同格の有名人は?」とのお題に「上沼恵美子さん!」、「若林のテンションが少しだけ上がるひと言を言ってあげてください」には「ヘイ!」と即答。『IPPONNグランプリ』(フジテレビ系)の優勝経験者・若林をして感嘆せしめている。さらに上村は、「大喜利のフリップを出すタイミングが違った」という理由でスタジオの前室で号泣していたり、渡邉美穂も「(アドリブ演技に納得いかず)高校球児並みに号泣していた」と若林を驚かせるなど、アイドルらしからぬ(!?)お笑いに対するプロ意識の高さをたびたび見せているのである。
オードリーの心を開かせ“本気にさせる”、異質な特別感を放つ日向坂46
坂道グループの冠番組のなかでも、『日向坂で会いましょう』は異質な存在感を放っている。乃木坂46の『乃木坂工事中』(テレビ東京系)ではメンバーの個人ニュースを発表、櫻坂46の『そこ曲がったら櫻坂?』(テレビ東京系)では2020年を振り返り大清算しようという“年末ならではの企画”で締めくくられている。それに対し日向坂46は“アンガ田中をめちゃくちゃにする”というカロリー高めなバラエティを3度にわたって放送し2020年の放送を終えた。
このように攻めた番組作りができるのは、MCのオードリーと日向坂メンバーとの間に、図らずも“プロとしての信頼関係”が築かれていることの証。言い換えれば、アイドルのバラエティ能力はMCへの信頼度によって育てられるということだろう。だからこそ、オードリーによって鍛え抜かれた日向坂46は冠番組以外でも瞬発力を発揮し、全方位的に活躍の幅を増やし続けているのだ。
日本のアイドルグループならではの路線を貫くことで得られる“光明”
K‐POPがもたらす潮流が、今後日本のアイドル界にとってさらなる影響をもたらす状況は必然的にやってくるだろうが、全てのアイドルグループがK‐POPグループの方法論に倣う必要はないのだ。
かつてはグループアイドルでいわゆる“スター”になる子はせいぜい1〜2名であり、バラエティ番組にしても得意な子とそうでない子がハッキリと分かれていたが、日向坂ではメンバー全員が貪欲かつ同じマインド・熱量で立ち向かっている印象がある。
国民的アイドルグループSMAPも、かつては『愛ラブSMAP!』(テレビ東京系)で「バラエティもこなせるアイドルグループ」として成長を遂げた(こうしたグループアイドル番組がほとんどテレビ東京系なのも偶然ではないだろう)。そして今、冠番組『日向坂で会いましょう』によって、日向坂46のメンバーは全員がスターになる可能性を秘めている。今後は“歌って踊れる”パフォーマンス系に留まらず、日本発グループアイドルの新たな(かつ伝統的な)スタイルやステージを提示しながら、さらなる活躍を見せてくれることを期待したい。