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K-POPの方法論に倣うだけが正しいのか? 日向坂46に見る“純国産アイドル”の覚悟

  • 1stアルバム『ひなたざか』をリリースし、2年連続で紅白にも出場。活躍の場を広げている

    1stアルバム『ひなたざか』をリリースし、2年連続で紅白にも出場。活躍の場を広げている

 『日向坂で会いましょう』(テレビ東京系)で、MCのオードリーを相手にキラリと光るバラエティスキルを発揮している日向坂46。先日、「アンガールズ・田中(卓志)をドッキリでメチャクチャにしよう!」という企画が放送された際、若林正恭からの「目が合ったらぶりっ子する」「必要以上に笑う」といった突然の指示にも瞬発力ある対応を見せて話題に。芸人がMCとなってアイドルを育てる番組は過去にいくつも存在したが、その中でも異質とも言えるほどの気合と覚悟で臨む日向坂46の存在は、いまや日本のアイドルグループにおいて“唯一の希望”と言えるのではないか。

正直ここまでする必要ある? 制作の作り込みと演者の熱量に圧倒

『日向坂で会いましょう』は2019年4月、「けやき坂46」が「日向坂46」へとグループ名が変更されたことにより、前番組『ひらがな推し』から改題されたもので、引き続きオードリーがMCを担当。番組テーマとしては、「日向坂46のグループの特性『ハッピーオーラ』を武器に、見ている人たちを笑顔に変えるハッピー全開のバラエティ番組! 様々なことに挑戦し、苦難を乗り越えトップアイドルへと成長していく姿を追いかけます!!」というものだが、実際に日向坂46のメンバーに課せられる“苦難”は相当なもの。

 そもそも日向坂46は、坂道グループの系譜に則ったビジュアル選抜・ルックス重視のグループ。番組の企画ラインアップを見てみると「なにもそこまでやらなくても…」という体を張ったベタな「身体に電気のビリビリを流すリアクション」企画から、「コント企画」「大喜利企画」などが普通に課せられている。しかし日向坂のメンバーは、それらを芸人以上の“熱量”でこなしていくのだ。

 たとえば番組中に突然、メンバーの富田鈴花が「春日さんが(他のメンバーにコメントを振っているのに)全然、私を指してくれなかった」と悔し泣きをすれば、加藤史帆は「私も指してくれなかったけど。ま、いいんですけど春日さんなら」と一人でノリ・ツッコミをする。それでも「面白いこと思いつかなくなった…」と泣き続ける富田に対して、若林は「どんだけOA乗りたいんだか。フリが少なくて泣いてるの初めて見た」と感心していた。

 また、大喜利的コーナーで上村ひなのは、「人気・実力ともに若林と同格の有名人は?」とのお題に「上沼恵美子さん!」、「若林のテンションが少しだけ上がるひと言を言ってあげてください」には「ヘイ!」と即答。『IPPONNグランプリ』(フジテレビ系)の優勝経験者・若林をして感嘆せしめている。さらに上村は、「大喜利のフリップを出すタイミングが違った」という理由でスタジオの前室で号泣していたり、渡邉美穂も「(アドリブ演技に納得いかず)高校球児並みに号泣していた」と若林を驚かせるなど、アイドルらしからぬ(!?)お笑いに対するプロ意識の高さをたびたび見せているのである。

オードリーの心を開かせ“本気にさせる”、異質な特別感を放つ日向坂46

 バラエティに全力でのぞむ日向坂メンバーの姿勢はオードリーにも高く評価されており、『あちこちオードリー』(テレビ東京系)で共演した際、若林は「最初は上辺だけの関係のつもりだったが、最近はそうじゃなくなってきている」「俺たちは日向坂からすごい学んでる」とまで発言。そもそも“普通”のアイドル番組では、アイドルの世代に合わせたネタ・番組構成になっているものだが、『日向坂で会いましょう』では珍プレー好プレーに出てきそうな野球ネタや、キン肉マン消しゴムネタなど、オードリー世代向けのニッチなネタまでぶっ込んでいる。いわばオードリーの看板番組『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)のリスナー「リトルトゥース」を相手にするかのような番組内容になっているのだ。

 坂道グループの冠番組のなかでも、『日向坂で会いましょう』は異質な存在感を放っている。乃木坂46の『乃木坂工事中』(テレビ東京系)ではメンバーの個人ニュースを発表、櫻坂46の『そこ曲がったら櫻坂?』(テレビ東京系)では2020年を振り返り大清算しようという“年末ならではの企画”で締めくくられている。それに対し日向坂46は“アンガ田中をめちゃくちゃにする”というカロリー高めなバラエティを3度にわたって放送し2020年の放送を終えた。

 このように攻めた番組作りができるのは、MCのオードリーと日向坂メンバーとの間に、図らずも“プロとしての信頼関係”が築かれていることの証。言い換えれば、アイドルのバラエティ能力はMCへの信頼度によって育てられるということだろう。だからこそ、オードリーによって鍛え抜かれた日向坂46は冠番組以外でも瞬発力を発揮し、全方位的に活躍の幅を増やし続けているのだ。

日本のアイドルグループならではの路線を貫くことで得られる“光明”

 一方、アイドル界全体に目を向けると、NiziUブームやTWICE、BTSなどいわゆるK‐POP全盛期に。そのダンスや歌を見てもわかるように、彼らの最大のウリは完成されたパフォーマンスにある。対する日本のアイドルのウリとなるのは、パフォーマンスに加えて独自の「洗練されたバラエティ対応力」と言えるだろう。

 K‐POPがもたらす潮流が、今後日本のアイドル界にとってさらなる影響をもたらす状況は必然的にやってくるだろうが、全てのアイドルグループがK‐POPグループの方法論に倣う必要はないのだ。

 かつてはグループアイドルでいわゆる“スター”になる子はせいぜい1〜2名であり、バラエティ番組にしても得意な子とそうでない子がハッキリと分かれていたが、日向坂ではメンバー全員が貪欲かつ同じマインド・熱量で立ち向かっている印象がある。

 国民的アイドルグループSMAPも、かつては『愛ラブSMAP!』(テレビ東京系)で「バラエティもこなせるアイドルグループ」として成長を遂げた(こうしたグループアイドル番組がほとんどテレビ東京系なのも偶然ではないだろう)。そして今、冠番組『日向坂で会いましょう』によって、日向坂46のメンバーは全員がスターになる可能性を秘めている。今後は“歌って踊れる”パフォーマンス系に留まらず、日本発グループアイドルの新たな(かつ伝統的な)スタイルやステージを提示しながら、さらなる活躍を見せてくれることを期待したい。

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