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キメハラに代表される「なんでもハラスメント時代」、問題提起の一方で弊害も

不快レベルから法的に正されるべきものまで、入り混じってしまう可能性も

 ほかに、ここ最近流行った“○○ハラ”としては、“リモートハラスメント”がある。これは、コロナ禍により増加したリモートワーク中に受けるハラスメントのこと。異性の上司が部下に室内の様子を映すことを求めることなどのセクハラ行為や、1対1でのオンライン飲み会をしつこく求めたり、その場で私生活について指導するなどのパワハラ的な行為のことを指す。メディアの発信によるところもあるが、一般にもSNSなどを通じて即座に普及した。

 このように“〇〇ハラ”と名前を付け、ハラスメントを表面化することは大事なことでもあるが、一方で、何をするにも“○○ハラと指摘することも問題視されている。“ハラスメントハラスメント”という言葉まで生まれているが、この風潮についてはどう見るか。

 「嫌だと思うこと自体は当然自由です。ですが、ハラスメントと名付けられたものがすべて違法になるということはできません。最近では、正論を振りかざして相手を追い詰めていく“ロジハラ(ロジカルハラスメント)”という言葉も取り沙汰されましたが、これについても、“正論”を言うこと自体が直ちに違法だと断定することはできません。ロジハラがパワーハラスメントにあたるかどうか考えるに当たっては、例えば、発言の状況など様々な事情を総合的に見て判断していくことになります」

 「ロジハラやリモハラによって深く傷ついたという話もネット上には散見されます。中には心や体に傷を負わせるようなセクハラやパワハラともいえる重大な問題につながるものもあるでしょうし、発言をするにあたってもその発言をする必要があるのか、この場で言うことが相当と言えるのか、自分の価値観だけではなく、世の中の情勢も考えていくことは必要なことです」

 「一方で、“○○ハラ”と指摘することですが、ハラスメントと名付けられたものはすべてが違法であり、損害賠償が認められるものになるというのは確かに違います。そういう意味では、法的に責任が認められるレベルのハラスメントから、そこまでにはならないハラスメントというように、濃淡があると思います。ハラスメント自体は、嫌なことという意味合いですから、それ自体を嫌だということ自体はハラスメントという言葉の意味からしても当然のことです。ただ、法的な責任があるかということとは分けて考えることが必要だと思います。」

 「ただ、あまりにも”○○ハラ”という言葉ばかりが増えていってしまうと、不快というレベルから損害賠償なども認められるような法的にも正されるべきハラスメントまでが、かなり入り混じってしまう可能性もあり、重大なハラスメントが見過ごされてしまう危険性はあると思います。ハラスメントだという指摘にとどまらず、なぜそれが人を傷つけることになるのかよくよく考え、発信していくことも必要なのではないでしょうか」

 「新たな流行、ツールやコミュニケーションが生まれるたびに、“○○ハラ”という言葉が出てくる印象がある」と、舟橋弁護士は語る。そうなると、“〇〇ハラ”はますます増加し、“○○ハラ”はどうなのかといった話題が上るようになるかもしれない。もちろん、人が嫌がることをすべきではない。ただ、リモハラ含めパワーハラスメントやセクシャルハラスメントの一例のように整理できるものなども見受けられる。ハラスメントだと指摘するだけでなく、なぜ相手を深く傷つけたりするものではないか、適切な距離感を保ちながら、今後も生まれてくる”○○ハラ”について考えていきたいところだ。

(文=衣輪晋一/メディア研究家)
舟橋和宏弁護士
レイ法律事務所所属。アニメ・映像コンテンツの権利保護に力を入れており、知的財産保護(特に、著作権・商標権保護)に精力的に取り組んでいる。自他ともに認めるアニメオタク。近年の推し漫画は主にグルメ系。

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