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『半沢直樹』、“地上波しばり”でみせたTBSの意地 王道ドラマを貫いたテレビマンの気概

「モノマネ」したくなる中毒性が訴求力へ

  • 『半沢直樹』(C)TBS

    『半沢直樹』(C)TBS

 イベント的楽しさをさらに助長させていったのが、毎話送り出された名台詞、名シーンだ。Twitter上では毎週、祭りのような賑わいとなり、『半沢直樹』ファンは遊びを持たせていじり、どっぷりとその世界観に浸かっている。

 こうした現象が起きたのは「メッセージ性もさることながら、クセのある言い回しや身ぶりが「モノマネ」をしたくなるほど中毒性が強かったことが大きい」と柿谷氏は説明する。この「モノマネ」というひとつの遊びが、ヒットのフックになったというのだ。

 ただし「演者と同じように、上手にまねることが大事じゃなかったはず」と断りを入れる。確かに、半沢と大和田の2人が登場するシーンで見せた「お・し・ま・いDEATH」を使ったものなど、多くのパロディ版が溢れている。

「誰しもが、気軽につい引用して披露してみたくなりましたよね。それによって、作品が視聴者の外へも広がっていった。その生身の人間を通じて大衆へ根が伸びる感じも、半沢ブームの大事なポイントになったと思います」

武道の伝統を現代ドラマで観る愉しみ

 また、歌舞伎を思い起こさせるような独特な演出の数々も、見どころとなった。まるでそれは「舞台を観ているかのようなワクワク感があった」と柿谷氏は力説する。

「敵と対峙する半沢は常に斜めぎみで、剣道の構え。顔を接近させる場面はつばぜり合い。ズームアップとズームアウトを駆使したカメラワークは間合い。勝敗そのものや物理的な衝突ではなくて、武道の持つ独特の緊迫したけん制と攻防の風景を、物語にたっぷり採り入れた面白さがありました」

 バンカーとしてのプライドを守りつつ、「銀翼のイカロス」編では、政界の闇を暴くために奮闘している半沢直樹を描くのにあたって、柿谷氏が言う「日本の伝統」に触れるかのような演出が効を奏したというわけだ。

 最終回ではついに、“政界のドン”と恐れられている箕部幹事長と決着をつけることになるだろう。半沢のセリフにはところどころに、「国とは、政治とは」「世の中の人々のために」といった正義感に溢れた熱い言葉が並ぶ。これに同調するファンは自分ごとのように捉え、「明日もがんばろう」と意欲を燃やす好循環を生み出す力も持たせた。

 平成の時代に続き、令和でもヒットを飛ばしている『半沢直樹』には、多くのファンを惹きつける要素がふんだんに詰まっている。テレビドラマにはまだまだ可能性があることを気づかされた作品にもなった。

「テレビドラマはエンタメ作品であり、同時に大衆芸術でもあります。その観点を忘れちゃいけない。そこに、今の時代にテレビドラマがヒットする何かしらのヒントが隠れているはずです」

『Netflix』など配信ドラマのヒットが続き、手元のスマホ上には、ありとあらゆるエンタメコンテンツが溢れている。この状況は、テレビマンにとって逆境の最中とも言えるが、倍返しのチャンスが決してないわけではない。

 テレビドラマらしさを見失わずにやり通す“意地”が、ひとつの答えとなり、『半沢直樹』の大ヒットがそれを証明するものになっている。
(文/長谷川朋子)

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