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外国人記者が見る『半沢直樹』の魅力 一方で「ここがヘンだよ…」違和感も

  • 『半沢直樹』(C)TBS

    『半沢直樹』(C)TBS

 大ヒットドラマ『半沢直樹』は、銀行を舞台にしながらも、大筋では悪を懲らしめる勧善懲悪のヒーロー物語が描かれている。老若男女、幅広い世代が作品を楽しむ様子がうかがえるが、じつは日本在住の外国人も夢中になっているという。『ジャパンタイムス』にも寄稿する在日アメリカ人のドラマファンに、ドラマから漂う“ザ・日本風味”の魅力や、外国人ならではの視点で感じる“違和感”について、話を聞いた。

“歌舞伎”調の演出に外国人も衝撃

 日本の文化を海外に発信するアメリカ人ライターのフィリップ・ブレイザーさん。日本に住んで30年近くになる。これまで数多くの日本のエンタメコンテンツに触れてきたが、熱狂冷めやらぬ『半沢直樹』シリーズはやはり気になるドラマのひとつである様子だ。日本最古、国内最大級の英字新聞『ジャパンタイムス』にも外国人記者からの視点で評論した記事を寄稿している。フィリップさんが最も関心を寄せたのは“歌舞伎”調の演出だ。

「今シーズンは、より日本らしさを倍増させていますね。日本特有のストーリーだけでなく、演出自体も日本の美学を理解している人には、最高のものになっていると思います。伝統的な日本の歌舞伎特有の様式化された動きや表情、声の出し方を演出に意図的に取り入れて、ドラマチックに誇張させる効果をもたらしています。香川照之、市川猿之助、尾上松也、片岡愛之助という歌舞伎役者がそろって出演していることも興味深いです」(フィリップ・ブレイザーさん、以下同)

 一方で、このショーアップ化した歌舞伎調の演出に「違和感を覚えることも否めない」と指摘する。それには理由がある。

「ハリウッドのドラマは、一般的にストーリーの展開が重視されます。それに慣れていると、『半沢直樹』は歌舞伎調の演出が大袈裟でまるでストーリーの展開を中断させているようにも思えて、意識が散漫になるんです。日本の美学や文化を馴染みがない場合は、ただただ奇妙に見えますよ」

 日本らしさがより増していることで、日本人による、日本人のための“ガラパゴス”的なドラマになっているとも言えそうだ。

 海外からどう見られようと、日本の成功ドラマであることに変わりはない。ただし、これだけヒットしている作品であるだけに、Netflixに象徴されるグローバル展開が当たり前の時代には国外での可能性も探りたいところだ。

世界に広がる“倍返し”フィーバー、日本ドラマの可能性

 2013年のシーズン1は放送終了後、台湾や中国、韓国、アメリカにまで番組販売が拡大。(台湾ではケーブルテレビの日本語チャンネル「緯来日本台」で放送されると、開局以来最高を記録したことが報じられている。テレビ番組の海外発信を見据えて、業界が創設した権威ある賞「東京ドラマアウォード」の2014年作品賞グランプリにも選ばれ、海外展開の可能性にも注目が集まった。

 シーズン2に対する期待値の高まりも国境を越えている。女性誌『ELLE』の台湾版では、「2020年の視聴率王者」特集で『半沢直樹』の第5話が、日本でのリアルタイム視聴率が「令和最高」となる25.5%を記録した盛り上がりまで伝えるほどだ。主演の堺雅人の人気が高いことも大きいようだ。さらにその台湾では、「女性版半沢直樹」ドラマの構想も生まれ、人気女優ジョー・チェン(陳喬恩)の起用が発表されている。

 シーズン2も、今後の海外展開の広がりに期待せざるを得ない。だが、この数年で状況は変わっている。

 Netflixなどを通じてアジア作品全般が世界各地で容易に触れることができるようになった分、例えば、アメリカでも広く人気を得た韓国ドラマ『愛の不時着』などと比較され、厳しい評価も受ける可能性もある。フィリップさんも世界的に人気を広げる韓国作品と『半沢直樹』には大きな違いがあると意見する。

「アカデミー賞受賞作ということだけでなく、『パラサイト』があれだけ多くのアメリカ人も夢中にさせたのは、リアリティのある韓国社会の縮図を見せていることも大きいでしょう。韓国作品は、韓国の文化から社会問題までその伝え方が巧みです。それと比べて『半沢直樹』で描かれる権力闘争は、実際の日本の銀行のなかで起こっている話ではなく、誇張したものになります。現実的な部分とのズレが大きくなると、関心は薄れがちになるでしょうね」

 つまり、日本らしさが肝心のストーリーに投影されていないということだ。無視できない指摘は続く。

「確かにアジアでは『半沢直樹』は人気を集めていると聞いています。ヨーロッパではもしかしたら受け入れられるかもしれません。リメイクも十分考えられるでしょう。個人的に日本のエンタメ作品は好きなのですが、多くのアメリカ人に疑問を抱かせる要素がどうしても多いんですよね…」

 日本のドラマを代表する作品ともなると、厳しい見方が多岐にわたるのは当然のことだ。課せられるハードルも高くなる。だからこそ、世界では劣勢気味の日本のドラマを見直す議論に発展していけば、“倍返し”の可能性も生まれてくると信じたくなる。
(文/長谷川朋子)

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